音楽ナタリー Power Push - みきとP

自分の声とボーカロイド それぞれに感じる可能性

自信のボカロ曲を投下するチャンス

──今回のアルバムはみきとさんの多様な音楽性を集約した作品だと思いますが、日頃どういうふうに音楽をチェックしているのですか?

それこそ音楽ナタリーさんとかを見ていて気になったバンドはYouTubeでチェックしますね。それでもっと気になったらiTunes Storeで買って。さらに気に入ったらショップに行ってCDを買うって感じです。

──最近特に気になった曲はなんですか?

みきとP

最近はパチンコのサントラを買いましたね。音楽がカッコよかったんで。アラビアンな曲なんですけど、BPMを速くした感じのラップがよくて。たまたまCMか何かでカッコいい曲だなと思って調べたらそのCDに行き着いたんです。その曲だけじゃなくて、5秒くらいのSEとかもけっこう凝られてるんですよ。

──パチンコの演出で流れる効果音のようなものですよね。

そうそう。音楽としてこういう音がサッと作れたらいいなって思って。やっぱり大きな企業が抱えている作家さんたちの技術たるやすごいものがあるんですよね。勉強になりました。それとNHKの番組「いないいないばあっ!」の「いないいないばあっ! わ~お!」というCDがめっちゃカッコいいんです!

──「いないいないばあっ!」って児童向けの番組ですよね?

そうそう。歌は子供とおどけた感じのおじさんが一緒に歌ってるんですけど、スタジオミュージシャンがガチで録音してるのがわかる。スネアの音1つ取ってもハンパなくいいんですよ。

──まさかみきとさんからパチンコや「いないいないばあっ!」の音楽の話が出てくるとは思っていませんでした(笑)。

ちょっと視野を広げれば、すごい音楽が世の中にあふれてるんです。CMで流れてる曲もすごいし。みんなはなんの気なしに聴いて終わっちゃってるかもしれないけど、それを作れと言われたらかなり難しい。尊敬する人ばっかりですよ。

──ニコニコ動画で公開されたボカロ曲をチェックしたりは?

うーん……。実は最近観ていないんですよね。あんまり惹かれる曲がないというか。以前は世界を知るっていう意味でチェックしてたけど、最近はちょっとランキングを確認する程度です。

──みきとさんは昨今のニコニコ動画でのボカロ曲の状況をどう考えているんですか?

VOCALOIDって「衰退論」とか出てきたり伸び悩んでいるっていうイメージがあるみたいなんですけど、そういうのを聞くと僕は逆に「今がチャンスかもな」って思うタイプなんですよね(笑)。こういう状況だからこそ、自信作を投下したらどういう反応があるのか、試してみたいんですよね。だから早くボカロ曲を公開したいなって思っているんです。

──音楽ナタリーで2013年に実施したインタビュー(参照:みきとP「僕は初音ミクとキスをした」インタビュー)でみきとさんは「ボカロの世界に両足を突っ込んだ」とおっしゃっていました。2年の月日が経って、状況も変わって、今のみきとさんにとってVOCALOIDってどういう存在ですか?

みきとP

今は初音ミクがすごく遊び心をくすぐられる存在になってますね。「早く初音ミクと遊びたいな」って思うんです。やっぱりいろんな遊びができるものだと思うので。それと最近、自宅に初音ミクのフィギュアとか置き始めたんですよ。

──もともとは置いてなかったんですか?

うん。置いてなかった。最初は知らない世界に飛び込んだ感じだったから、初音ミクを楽しめる相手として、キャラクターとして見れてなかったのかもしれない。でも今はVOCALOIDとともに歩んできた時期を経て、VOCALOIDの世界でいろんな曲を作るという自由さ、楽しさを知っている。だから初音ミクに対して単純にワクワクしてるんですよね。何か楽しいことが待っていそうな雰囲気があって、キャラクターとしての初音ミクを好きになってる。

──先ほど「シンガーになったわけじゃなくて、いろいろやっていきたい」と話していましたが、今後もボカロ曲は公開していくということですよね?

もちろんです。むしろボカロ曲を公開できていないことに焦りを感じているんですよ。今がちょっと穴場みたいになってるから、誰かがいいものを出す前になんとかしようと思っています。

──昨年から今年にかけてボカロPとして活動していた方々が活動の幅を広げて、いろいろな分野に進出しています。昨今の流れをみきとさんはどう感じていますか?

みんなが何か新しいことしようとしてるのは感じますね。もちろん僕もその中の1人に入るかもしれませんが。2014年の夏頃かな。各々が居場所を探し出して、見つけた人、留まる人、いろいろいたんですよ。

──作り手たちが新たな手法を求めている今、ニコニコ動画をはじめとするVOCALOIDを使った楽曲の発表の場はこれからどうなっていくと思いますか?

これからはもともとVOCALOIDが好きで、ボカロ曲を書いたり聴いたりするのがずっと好きでいた人たちが居続ける状態になっていくのかなって思うんです。外から入ってくる人も、離れていく人もあんまりいない状態。でも今ここでみんながボカロ曲をバンバン公開し始めたらその流れも変わる気がします。だから僕も早くボカロの曲を作りたいんですよね。

ハグをして実体を確かめたい

──12月27日には東京・下北沢GARDENでワンマンライブを実施することが決定しています。みきとさんがワンマンを開催するはひさしぶりですよね。

みきとP

2年ぶりぐらいですね。このワンマン、僕自身がすごく楽しみにしているんです。例えば「みきとPの曲のどういうところが好き?」って質問したとして、「ギターの音が好き」「打ち込みの感じが好き」「声が好き」とか、皆さんいろんな好きを持っていると思うんですけど、それらに全部応えるようなライブにしたいなと思っています。

──ものすごく気合いが入ってますね。

自分で言うのも変かもしれませんが、観ないと損すると思います。単純に見逃さないほうがいい気がするというか。これを逃したら、次いつワンマンライブが開催できるかもわからないですから。今回のワンマンは今までライブでやったことのない曲もやるつもりなので、何より僕がかなり楽しみです。

──終演後の打ち上げは、ファンを招待して行われるとアナウンスされています(参照:みきとP、ワンマン後の打ち上げ参加者募集中)、どんな打ち上げにしたいですか?

どうしようかな。フォークダンスとかやる感じというか、みんなで手とかつなぎたいですね。和気あいあいとした感じというか、触れ合いたいんです。

──ニコ生やTwitterなどでユーザーと交流はしていますが、実際に会って交流する機会ってこれまでそんなになかったわけですよね。

そうなんですよ。だから今回はハグとかしたいですね。なんて言うか、実体を確かめたいんですよ。それで直接「ありがとう」って伝えて、一緒に飲めたら最高ですね。

ニューアルバム「MIKIROKU」 / 2015年11月18日発売 / EXIT TUNES
限定盤 [CD+DVD] 3024円 / QWCE-00526
通常盤 [CD] 2484円 / QWCE-00527
CD収録曲
  1. きゅりあす
  2. 夕立のりぼん
  3. 刹那プラス~Woody Arrange~
  4. あのこサーティースリー
  5. バレリーコ
  6. クノイチでも恋がしたい / with みきと会
  7. Telephone Juice / with バグってるひと
  8. おもふといふ
  9. 京都ダ菓子屋センソー
  10. 夏の半券
  11. いーあるふぁんくらぶ ~ぼっち多重録音Ver.~
  12. Hanabi
  13. 走馬灯
  14. ぼっち幸福論
  15. サブトラの最終定理 / みきもじゃ(みきとP×大柴広己[もじゃ])※通常盤のみ
DVD(限定盤のみ)
  • きゅりあす MV
  • バレリーコ MV
  • ぼっち幸福論 MV
  • おもふといふ MV
  • 刹那プラス~Woody Arrange~ MV
  • 京都ダ菓子屋センソー MV
  • メイキングofぼっち幸福論
  • おまけ映像
みきとP「『MIKIROKU』発売記念LIVE "MIKIROCK BYPASS"」

2015年12月27日(日)東京都 下北沢GARDEN
OPEN 16:15 / START 17:00

コラボグッズ販売情報
ヴィレッジヴァンガードFREAKS渋谷パルコ×みきたまごとゆかいな仲間たち

販売期間:2015年11月17日(火)~12月27日(日)
販売場所:東京都 ヴィレッジヴァンガードFREAKS渋谷パルコ

みきとP(みきとぴー)
みきとP

VOCALOIDを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP、シンガー。「小夜子」のような心を揺さぶるシリアスなギターロックから「いーあるふぁんくらぶ」をはじめとするアッパーなディスコポップまで、幅広いタイプの作品を発表している。2013年4月に初音ミクをフィーチャーした初のオリジナルアルバム「僕は初音ミクとキスをした」をリリースした。2015年7月にはみきとP自身が歌唱する楽曲「きゅりあす」をシングルとして発表。11月に本人歌唱曲のみで構成されたアルバム「MIKIROKU」をリリースする。また12月には東京・下北沢GARDENにてワンマンライブ「『MIKIROKU』発売記念LIVE "MIKIROCK BYPASS"」の開催が決定している。