ナタリー PowerPush - mihimaru GT

未来を照らす光になりたい 刺激的6thアルバム「mihimalight」

今年、初めてのソロ活動に挑戦したhiroko(Vo)とmiyake(MC)の2人が、mihimaru GTとして約1年半ぶりとなるニューアルバムを完成させた。3月の東日本大震災を受け、“音楽”についてこれまで以上にじっくり向き合って制作されたアルバム「mihimalight」は、彼らのメンタル面の成長や音楽面でのスケールアップ、そして真摯に音楽に接する姿勢が余すことなく感じられる仕上がりとなっている。今回ナタリーでは、2人が悩んだ末に見つけ出した答えを探るべく、“mihimaru GTとしての意思”に迫るインタビューを行った。

取材・文 / 川倉由起子

音楽が未来を照らす光にならなきゃいけない

──2人のソロ活動後、初となるオリジナルアルバムが完成しましたね。

hiroko 「やっとできた」って感じです。

miyake 今回の「mihimalight」というタイトルは、light=光ということで。影があるからこその光という部分にこだわったんですが、楽曲も影の部分やネガティブな要素を包み隠さず、はっきりしたコントラストを保って作ることを突き通せたかなと思います。

──では、今作のコンセプトは“光”?

hiroko タイトルは最終的に私が付けさせてもらったんですが、「アルバムを全部聴き終わったあとに、ホッとした気持ちが光のように心にともる作品にしたい」と思ったんです。

──そう思ったのは何かきっかけがあって?

hiroko やっぱり震災があったのが大きいですね。私たちにできることって、無力ではあるんですけど、やっぱり歌を届けていくことだと思ったので。

──前回のインタビュー(2011年5月)のときも「震災を受けて、自分たちはどんな曲を届けられるのかすごく悩んだ」っておっしゃってましたよね。

miyake 今までのmihimaru GTは恋愛、友情、夢……といった日常を切り取った歌が多かったんですけど、震災後、みんなが暗くなるようなニュースとかがあって、このアルバムの制作中は“曲を作る意味”をものすごく考えたんです。そのあたりも「mihimalight」というタイトルにつながるんですが、やっぱり音楽が未来を照らす光にならなきゃいけないなって。さっきhirokoも言いましたが「自分がこう思ってる」って主張を歌にすることで、励まされる人や、明日からまたがんばろうって思う人もいるかもしれないし。

──なるほど。あと今回はもうひとつ、震災以外にも2人のソロ活動を経てのアルバムというところで、今までと違った手応えはありましたか?

miyake 新鮮でしたね。ソロをやるまではシングルを数枚作ってアルバムを出して、その流れでツアーに突入して……っていうのがわりとローテーションな感じになってて。でも、そのサイクルとは違う不規則なものが挟まったことで、以前と同じローテーションでもまた新しく感じたというか。作る喜び、達成感はもちろん、お互いソロで苦労して、改めて1曲を作る責任の重さを味わった分、1曲に込める思いは少し変わった気がします。

hiroko 今回よく2人で言ってたのが「決断力がついたね」ってこと。ソロを経て、制作をどこで終わりにするかっていうのを自分で迷いながら決めて、その筋肉が鍛えられたというか。決断するのも早くなったし、一つひとつの作品に集中できて、歌詞の物語や背景も細かく書けるようになったと思います。

自分が正しいと思うことを勇気を持って歌にしたい

──前作アルバム「mihimalogy」はバラードが多かったのに対し、今作はアップチューンやポジティブな歌詞が多い印象を受けました。

miyake そうですね。いろいろなアプローチの曲が入ってます。ちょっとコアでヒップホップライクなのもあったり。

──中でもKEN THE 390さんをフィーチャーした「Neo Generator feat. KEN THE 390」は、すごく振り切れた作品ですね。歌詞には今の日本に訴えかけるようなメッセージが込められていて。

miyake 僕たちがラッパーとして尊敬するKEN THE 390さんと、まず歌詞について3人で打ち合わせしたんですよ。そのときにやっぱり「リアルなものを伝えたい」って話になって。今の混乱してる世の中で、そういうことを言わないのもどこか逃げてるようで嫌ですし、ここはひとつ自分たちの意思を表現しようと、包み隠さず言いたいことを言わせてもらたったんです。

──ただ、かなり刺激的な部分も……。

miyake はい(笑)。ただ、この曲の真意は「この場所から僕たちは離れない。ここを捨てない。ここでずっと生きていく」っていう主張で。確かに今は大変な世の中だけど、誰もがいつかは死んでいく人生で、大事なのはどれだけ一生が楽しかったかってことじゃないかと思って。ストレスを抱えながら生きるより自分たちは楽しむことを選びたい。家族や友達や仲間がいる、お世話になった人たちとこの場所で一生貫き通すんだっていうことを曲を通して伝えたかったんです。

──なるほど。

miyake 震災のニュースで被災者の方が「私はずっとここにいます」って言ってるのを見て、何が一番大事なのかなって考えさせられたんですよね。その人にとってそこが愛する土地だっていう、そういう意思がはっきりあるのはすごいカッコいいことだと思った。自分が自分らしくいられる場所を常に求めるってことは大事だなと思うんです。以前、THE BLUE HEARTSがチェルノブイリの歌を発表したり、RCサクセションが原発について歌ってたりしましたよね? 僕たちの歌はそこまでのものじゃないかもしれないけど、音楽のメッセージっていうものを考えたときに、そういうものを避けてちゃダメなんじゃないかと思ったんです。

──デビューから明るくポップな“ヒップポップ”を掲げてきたmihimaru GTが、こういうヒップホップ然としたディープな曲を歌うのかという驚きはありました。

miyake ええ。かなりデリケートなんで、こうやってインタビューでしゃべるときも気を遣いながら(笑)。

──あははは(笑)。

hiroko 何か物議を醸すことになったらどうしよう?とかね。でも、デモが上がった時点で確認してもらったら、スタッフさんが「大丈夫です」と。まあ、どうにかなったらなったで全部私たちの責任ですし、それよりも身近なスタッフが曲に賛同してくれたのはすごくうれしかったです。聴いてくれる人にも、自分が正しいと思うことはどんどん言ってほしいと思うし、単純にそういう勇気を受け取ってもらえたら本望です。

もっと肉食系男子に変化してほしい

──アルバム全体を見ると、いつものmihimaru GTらしい明るくファンキーな曲もありますね。個人的には「今夜もCinderella」が良かったです。

hiroko おお! 今回は意外と(人気曲の)票が分かれてるんですが、この曲はインタビュアーさんから評判がいいんですよ。

──恋の駆け引きを男女ボーカルでコミカルに歌い上げていて、これぞmihimaru GTの王道チューンというか。

miyake そうですね。まあ最終的にこれは「ずっと奥手でいいの?」って男性に言いたい楽曲なんですけど(笑)。終電が12時くらいだから、それをシンデレラに例えて恋の駆け引きを描いてます。

hiroko で、女の子は完全に小悪魔系女子。レコーディングもそんな感じで歌わせてもらったんですが「(男の子に)もっとグイグイ来ていいのに!」っていう気持ちも入れつつ(笑)、もっと肉食系男子に変化してほしいっていう願望が入ってます。

miyake 世の中に草食系男子が増えてるんじゃないかというところで、行けるときに行ける男子になってほしいという僕らなりのメッセージですね。

──ほかにも恋愛系の曲だと少し切ないナンバーもあり。

miyake 加藤健さんという方に作詞をしていただいて。

hiroko プロットは私たちから出させてもらったんですが、長く付き合ってた男女が別れて、片方が風の知らせで相手の結婚を聞いて。実はまだ思いがあるけど受け入れなきゃいけないっていう状況の歌です。

──やっぱり他の方に書いてもらった歌詞は違いますか?

hiroko 私は最後の「しあわせに」ってフレーズにビックリして。「ありがとう」は言えても「しあわせに」なんて言えるかなと思って、この展開には驚きました。自分からは絶対出てこない表現だなと。

miyake あと、僕らのラップの曲は文字数が多いんですが、単純に字数が少ない中でこれだけのドラマとシナリオを作るのはすごいなって。見てて一字一句が勉強になりました。プロの仕事です!

──ちなみに2人はこういった経験は?

miyake 僕、全く同じ経験したことありますよ。昔付き合ってた子が結婚するっていう。そのときはちょっと不思議な心境でしたね。未練があるわけじゃないけど、もしかしたら僕が結婚してたのかな?とか。

──hirokoちゃんはそんな状況になったらどう?

hiroko 自分のそのときの状態にもよりますよね。もしフリーだったらちょっと切ないかなあ……。結婚して子供も生まれてたら、ノリノリで「お幸せにー♪」って感じなんでしょうけど(笑)。

ニューアルバム「mihimalight」9月7日発売 / UNIVERSAL J

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CD収録曲
  1. Theme of mihimaLIVE 4
  2. エボ★レボリューション
  3. Thank U 4 Today
  4. Neo Generator feat. KEN THE 390
  5. 今夜もCinderella
  6. Di-lemma
  7. 1/2のしあわせ
  8. マスターピース
  9. 880~EiEiO!!!!!!!!~ feat.古坂大魔王
  10. カッ・チャ・イナ
  11. オメデトウ
  12. ラジマルGT 傑作トーク集part.3 with 古坂大魔王
mihimaru GT(みひまるじーてぃー)

2003年1月、ボーカリストを目指して活動していたhirokoと、数々の有名アーティストへ楽曲提供していたクリエイターmiyakeが出会いユニット結成。クラブやストリートでライブ活動を続け、7月にシングル「約束」でメジャーデビュー。2006年5月発売の9thシングル「気分上々↑↑」が日本レコード大賞金賞を受賞し、その年の「NHK紅白歌合戦」にも出場。2008年には日本武道館、2010年には横浜アリーナでのライブを成功させるなど、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。2011年にはmiCKun(miyake)とHIROKO(hiroko)がそれぞれソロアルバムを発表し、同年9月にはmihimaru GTとして1年半ぶりのオリジナルアルバム「mihimalight」をリリース。ヒップホップとJ-POPを融合させた「ヒップポップ」をキーワードに精力的な活動を続けている。