ナタリー PowerPush - mihimaru GT
高速ラップで限界に挑戦!? 充実ソロを経てアッパーに復活
2010年末から約半年間にわたるソロ活動を行っていたmihimaru GTが、ユニット活動の再開を告げるシングル「マスターピース」をリリースした。今作は、1年2カ月ぶりのシングルにして“高速ラップ”という超強力なエッセンスが光るアッパーチューン。作詞にはモダーン今夜の永山マキを迎え、また新たなmihimaru GTの世界観に触れられる作品となっている。
デビュー8年目にして初めてmihimaru GTを離れた2人は、何を思い、どんな景色を見てここに戻ってきたのか? 各々のソロ活動の手応えと、新曲の制作秘話を訊いた。
取材・文/川倉由起子
ソロ活動はmihimaru GTというホームを離れた武者修行
──まずは、それぞれのソロ活動について感想を聞かせてください。
hiroko(Vo) 私はもう、完全にソロをナメてましたね!(笑)
──おお、いきなり(笑)。どんなところが?
hiroko 最初はもちろん「自分のやりたい音楽を楽しもう」って気持ちで始めたんですけど、とにかく何をするにも決断力がなくて。「あれもいい! これもやりたい!」ってなって、曲の終わらせどころを含め、いろいろなことを決めていく作業が常に自分との戦いでした。あと今まではmihimaru GTという箱の中で泳いでたんですけど、ソロはその箱作りからしていかなきゃいけない。それがどれだけ大変かをしみじみ感じました。
──でも、そのぶん達成感も大きかったのでは?
hiroko そうですね。イチから作っていく楽しさを味わえました。本当にやってみなきゃわからないっていうか、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」っていう言葉をズシンと体感したし、精神的にもたくましくなったんじゃないかと思います。
──作品としても、mihimaru GTとはまた違った世界観でしたよね。
hiroko はい。ソロ活動は「ゴージャス」「セクシー」「アート」っていうキーワードを掲げてて、mihimaru GTとはちょっと違うゴージャスな感じや、少し洋楽っぽい曲にも挑戦したんです。いろいろな作家さんと制作していく中で、自分の引き出しをすごくたくさん開けていただいたし、作詞に関しても自分からこんな言葉やニュアンスが出てくるんやーっていう発見がありましたね。
──miyakeさんはどうでしたか?
miyake(MC) 今回のソロ活動は、ホームがmihimaru GTだとしたら、そこから武者修行に出るっていう感じだったんです。ずっとmihimaru GTをやってきて、いい意味でも悪い意味でも慣れてしまってる部分が多いなと思ってたんで。
──なるほど。
miyake いつもはhirokoが歌う前提で曲を書いてるけど、もしほかの人が歌ったら……っていう好奇心もあったし、歌詞も「これはmihimaru GTじゃシュールすぎるね」っていう内容のものをソロでやらせてもらったりしました。
最初は「(ソロは)絶対イヤ!」って逃げてました(笑)
──話が前後しますが、そもそもなぜソロをやることになったんでしょう?
miyake 今こうしてmihimaru GTを続けられてるのはすごく幸せなことなんですけど、それを当たり前に感じちゃダメだなってだんだん思うようになってたんです。灯台下暗しじゃないけど、ホームを離れて、一度遠くから客観的に見たほうがいいと思ったんですよね。あそこの屋根を直したほうがいいとか、窓割れてるよとか、そういうことに気付かなきゃいけない時期でもあるのかなって。
──そう感じたきっかけは?
miyake やっぱり制作を続けていく中で、自分たちのやり方がいい意味では板についてきてるんですが、悪い意味では「そこから新しいものが生まれるの?」っていう疑問も生まれて。また新たな刺激というか、音楽の本来の達成感や喜び、満足感を他で習得してきたほうがいいんじゃないかと思ったんです。
hiroko それで、みっくん(miiyake)は2~3年前から「そろそろソロを……」って私に言ってたんですけど、当時の私はソロなんて考えられなかったから「絶対イヤ!」って逃げてて(笑)。でも、5枚目のアルバム「mihimalogy」を出して、そのあと横浜アリーナでライブをやらせてもらった節目あたりで、「次はお互いいろんなものを吸収する旅に出ようか?」っていう話になったんです。
──どのくらいソロをやったら戻ろうとか、期間は決めてましたか?
miyake それは最初から決めてましたね。各々がアルバムを1枚出したところを終着点にしようと。
──ソロ期間中は、前半がmiyakeさんで後半がhirokoさんという感じでしたよね。
miyake 僕はhirokoがソロをやっている後半に、裏でミヒマルの次の作品を作らなきゃいけなかったんです(笑)。
──miyakeさんはその際、制作に対して以前と違う思いを抱いたりしました?
miyake やっぱりソロでかなり好き勝手にやらせてもらってたので、ある意味、吹っ切れたというか。「こういうのもmihimaru GTでいけんじゃね?」っていうジャンルが発見できたりしてたんで、単純に楽しかったですね。そこまで迷いもなく、自分の目標とするものに明確に向かうことができました。
──おふたりとも、かなり収穫の大きいソロ活動だったんですね。
hiroko 実りの多い旅でした。
──東京を出発点とすると、どの辺まで行った気分?
hiroko うーんと……小笠原諸島くらい?
miyake 結構近いね(笑)。
hiroko わりとすぐ戻ってこれるっていう(笑)。でも一回外の空気を吸ってみると、戻ってきたときにまた新鮮な風が吹いていて。やっぱり旅はいいですよねー。
CD収録曲
- マスターピース
- 始まりの一歩
- マスターピース (Instrumental)
- 始まりの一歩 (Instrumental)
DVD収録曲
- マスターピース -Music Clip-
- マスターピース -Making-
mihimaru GT(みひまるじーてぃー)
2003年1月、ボーカリストを目指して活動していたhirokoと、BoAやSMAPなどに楽曲提供していたクリエイターmiyakeが出会いユニットを結成。クラブやストリートでライブ活動を続け、7月にシングル「約束」でメジャーデビューを果たす。2006年5月発売の9thシングル「気分上々↑↑」が「日本レコード大賞」金賞を受賞し、その年の「NHK紅白歌合戦」にも出場。2008年には日本武道館ライブを成功させるなど、ヒップホップとJ-POPを融合させた「ヒップポップ」をキーワードにフレキシブルな活動を続けている。