ミドリのサウンドは「顔」で決まる!?
——なるほど。徐々に今の4人のミドリになっていったと。でも今回はバンドの芯の部分が揺ぎ無いものになっていて、今まで伝えきれてなかったことまで伝えられているような、そんな作品に感じます。
小銭「今回も頑張って作ったな、っていうぐらいですけどね」
後藤「伝えられなかったことも伝えられたとかはよくわかってなくて。1個1個、そのときそのときの自分たちの一生懸命をやってきとるからそれはわからへんけど。前は一生懸命って言っても原田さんはサポートやったっていうのもあるし、4人になったことで一生懸命が一人分増えたっていうのはあるかも」
——この4人でずっとやって行こう、っていう覚悟とか?
後藤「それはあんまり(笑)。楽しいし好きやからな、みんな今。続けばいいなとは思うけど。そんなのいつどうなるかはわからんから」
小銭「それは確かにそう」
ハジメ「同じ編成で続いたことがあんま無いバンドなんで、わからないんですよね。でも今はいい状態だと思います」
——4人になって、どんな変化を感じてますか。
ハジメ「岩見さんはベーシストとしての意見をちゃんと言う人なので、それが今回のアルバムにも反映されてると思うし」
後藤「うん、面白い。ジャズの人やから。即興も上手で、引っ張ってってくれるし」
小銭「わしらが知らんもんをボンボン出してくれるからな」
——でもジャズ的な要素ももともとミドリにはありましたよね?
ハジメ「あの、それはあったように言われてただけで(笑)。雑誌媒体とかいろんな人が上手いこと評価してくれてるなって感じで。僕のピアノはジャズじゃないし、ジャズをやってる人からすると怒られると思うんで」
後藤「みんな物真似が得意やねんな。ドラムも顔で叩くねん」
小銭「こうやってな(と、顔を作る)」
後藤「これはジャズの顔。これやるとほんまにジャズっぽくなるねん。楽しいリズムのときは楽しい顔するしな」
——へえ(笑)。いつもそんな感じでアレンジとかレコーディングしてるんですか。
小銭「そう。何かちゃうな、あ、顔が違ったんや!って。顔で音が変わるなあ」
後藤「サンタナとかもチョーキングの顔するやんか、あれは大事。必死すぎてもあかんしな。みんながドツボにはまってしまう」
——ミドリって実は色んな音楽要素が絡み合ってる、単なるパンクバンドじゃないじゃないですか。でも凄くスタイリッシュだとも思うんですけど。それぞれ、このバンドで音を出すときはこうありたい!みたいなことって何かあるんですか。
小銭「一人一人やりたいことやっとる。たぶんみんな考えとることバラバラやし」
後藤「ミドリとしてこうありたいとか思いながら曲作るのって、ちょっと気持ちが悪くて苦手かも。考えたくない」
ハジメ「そんな中でもまとまって曲になってるのは不思議なんですけどね」
——ギリギリのバランスでこうして作品が生まれてるってことですか。
小銭「そうですね」
ハジメ「うん。みんな自己主張してると思うんで。それが上手いことまとまってるのかな?」
——それでまとまらなければ終わり、ぐらいの覚悟で音を出してるってことなんでしょうね。
後藤「そら、もし次の練習で『めっちゃオモロない!』とか思ったら辞めることも考える。それはみんな一緒やでな」
小銭「うん、それはとっつあんも言うとった」
後藤「しがみつくんが、一番かっこ悪い」
——でも、それって怖いことでもありますよね。
後藤「うん、怖いと思う。だって『もう後藤さん抜きでお願いします』ってなるかもしれんしな。怖いなあ、明日は我が身やな(笑)」
ハジメ「まあ、ほんとそうですね(笑)」
2008年5月14日発売 / 2500円(税込)
AICL-1919 / ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ
CD収録曲
- スキ
- ゆきこさん
- かなしい日々。
- お猿
- 根性無しあたし、あほぼけかす
- ちはるの恋
- ひみつの2人
- 5拍子
- ハウリング地獄
- 無欲の無力
プロフィール
ミドリ
2003年7月に後藤まりこ(Vo,G)と小銭喜剛(Dr)を中心に、大阪で結成されたロックバンド。ジャズ的な要素を盛り込んだサウンドと、紅一点の後藤による観る者を釘付けにする強烈なパフォーマンスが、アンダーグラウンドシーンで話題となる。幾度かのメンバーチェンジを経て、2004年にハジメ(Piano)が加入し、2005年に1stアルバム「ミドリ ファースト」をインディーズレーベルからリリース。2007年にはメジャーレーベルに移籍し、ミニアルバム&ライブDVDの2枚組作品「清水」を発表して注目を集める。2008年に新ベーシスト、岩見のとっつぁんが加入し、正式に4人編成となる。なお、後藤まりこのステージ衣装はセーラー服。