ナタリー PowerPush - MiChi
ポジティブな愛を歌う「LOVE is.」e.p.
MiChiが約半年ぶりとなるニューシングル「LOVE is.」e.pをリリース。自身にとって原点回帰ともいえるアッパーなサウンドと、“愛”についての彼女らしい哲学が込められた、爽快かつパワフルな1曲だ。
しかし彼女は1stアルバム「UP TO YOU」のリリース後、今作が生まれるまでに、深い孤独を感じたり、メンタルバランスが崩れてしまった時期もあったという。今回のインタビューでは、そんな日々のことも赤裸々に吐露。この曲に込められた彼女のさまざまな思いを受け取ってほしい。
取材・文/川倉由起子
1stアルバムを出してから、心が空っぽになった
──インタビューの前にまずはお礼を。「LOVE is.」の「愛が欲しいなら 愛をまず誰かにあげよう」というフレーズは、つい忘れがちな大切なことを思い出させてくれました。
あははは!(笑)
──今回の曲はまさにそのフレーズがメッセージの軸になっているわけですが。このテーマはどんなところから浮かんだんですか?
実は今までは“愛”をテーマに書くことがあまりなかったし、書こうとも思わなくて。でも1stアルバム「UP TO YOU」を出したあとにいろいろ考えるようになったんです。本当の愛ってなんだろうとか、自分が思う愛って何?とか。
──それは、どういう心境の変化から?
やっぱり1stアルバムを出すまではすごく忙しくて。ちょっと立ち止まって考える時間もなかったんですよ。だから、アルバムを出してアウトプットをしきったら一旦空っぽになったというか。そこで、じゃあ次は……ってなったときに“愛”について考えたんです。というか、考える余裕ができたって言うほうが正しいかな。
──で、そこから“愛は与えるもの”っていうキーワードが浮かんだ? それとも、それはずっとMiChiさんの胸にある思いだった?
普段から人間愛っていうのものはどこかしら頭に置いてると思うの。でも、今回のような“与える”っていうところはなかなか出ないテーマじゃないですか。もちろん大事なのはわかるんですけど、忘れがちだし。
──本当にそうですよね。
だけど、私が歌ってることも、もちろんそうだし、音楽をやろうと思ったのも、“何かを与えたい”とか“気づいてほしい”っていう気持ちから。ひとつの愛の形として“与えたい”ってことなんですよ。本当はそれが一番自分がハッピーになれることなんだって気付けたところから、今回の歌詞ができたという感じです。
「そんなに欲しいなら、まずは自分があげることでしょ」って
──話は前後しますが、先程おっしゃった「1stアルバムを出したあと心が空っぽになった」というのは、どういう状態だったんですか?
すごく孤独を感じてました。仕事のために日本に来て、1stアルバムを出してひとつの目標をクリアしたときに「あれあれ?」みたいな。……なんだろう、それまで愛っていうものをずっと無視してたというか、拒否してたんですよね。日本でシンガーになるってことだけが一番の目標だったから、それを邪魔するのものは全部シャットアウトしてて。でも、迷いもあるし、次はどういう方向に行こうかなっていうエンプティな気持ちだったり、寂しさを抱えたりもしてて。
──そういうときの精神バランスは?
もう完全に崩れてました。超不安定! もともと結構不安定な人なんだけど(笑)。
──そこから、どのようにモチベーションを回復したんですか?
やっぱり、そのときにすごく求めたんですよね。支えてくれる人、愛をくれる人、自分をわかってくれる人っていうのを求めてしまって。
──心が空っぽのときに、とりあえず何かで埋めたくなってしまうというか。
そうなの。だから一番は自分が求めてたってことかな。孤独で、本当は愛が欲しくてしょうがなかったんだって。繰り返しになるけど、そこで気付いたことが「そんなに欲しいなら、まずは自分があげることでしょ」って。
──でも、そんなふうに考えをすぐ転換できましたか?
もともとみんなそうだと思うけど、やっぱり自分が何かすることによって誰かが喜ぶとすごく幸せっていうのがわかってるから。またそれに気付く余裕ができたってだけかな。自分が精神的に落ちたり、ハッピーじゃない時期だったからこそ、忘れていたことに気付けたって感じかな。
MiChi(みち)
1985年、イギリス生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。2歳から10歳までを神戸で過ごし、1995年、阪神・淡路大震災の後、再びイギリスに移住。10歳から18歳までの最も多感な時期をイギリス・バーミンガム近郊で暮らし、シンガーを夢見る。 18歳で再来日。プロデューサー松澤友和と出会い、東京で本格的な音楽活動をスタート。2008年10月「PROMiSE」でメジャーデビュー。2009年2月にリリースした2ndシングル「ChaNge the WoRLd」はドラマ「キイナ ~不可能犯罪捜査官~」主題歌に抜擢。ユニクロの世界キャンペーンキャラクターとしてCMに出演するなど幅広い活躍を見せる。2009年9月に待望の1stフルアルバム「UP TO YOU」をリリース。2010年にはスキャットマン・ジョンのサンプリングで話題を集めた「All about the Girls ~いいじゃんか Party People~/Together again」、the telephonesとのコラボによる「WoNdeR WomaN」といったシングルを発表している。