クラブシーンからメジャーフィールドへ イギリスでの「約束」を実現させたデビュー曲
今年6月、インディーズアルバム「MiChi MadNesS」のリリースで、驚異的な注目度を見せつけたアーティスト・MiChiが、いよいよ10月22日にシングル「PROMiSE」でメジャーデビューする。
イギリス人の父と日本人の母を持つ、1985年生まれのバイリンガルシンガー。ステージで歌うことを夢見ていた彼女は、その夢の実現のために18歳でイギリスから東京に移り、クラブシーンを中心に人気を獲得してきた。今回のメジャーデビューシングル「PROMiSE」は全曲英語詞だった前作とは違い、日本語のフレーズもミックスされている。アッパーなダンスロックに込められた、より明確になったMiChiのメッセージは、ダンスミュージックファンだけではなく、同世代の女性たちからも圧倒的な支持を集めることになりそうだ。
取材・文/杉山敦(TUK TUK CAFE)
1位になったことよりも、長くチャートインしていたことがうれしかった
それにしても驚異的なスタートだった。今年6月、インディーズアルバム「MiChi MadNesS」の発売に先駆けて楽曲の配信が始まると、その翌日にはiTunes Storeのダンスチャートで収録曲「ReaL」が1位を獲得。アルバムもダンスチャートで首位に。さらにこれまでにダンスチャート1位~3位を2回にわたって独占。
ここで肝心なのは、東京のクラブシーン以外ではほとんど無名な存在だったはずのMiChiの楽曲が、インターネットを介してこれほど多くの人たちの心をつかんだということだ。
「周りの人のほうが驚いてたぐらいで、MiChiは冷静だったんですよ。そうは言っても、毎日チャートをチェックしてましたけど(笑)。1位になったことよりも、長くチャートインしていたことがうれしかった。今もまた上位にランクインしたりして。たぶんみんなも不思議だと思う。「MiChiって誰だろう?」って(笑)。みんなからのコメントもすごくうれしかった。MiChiのことぜんぜん知らなかったけどフリーダウンロードで一瞬で好きになってアルバムを買いました、とか。そういうのってすごくナイスな聴かれ方だよね」
MiChiがエントリーされているのはダンスチャートだが、エレクトロ、ヒップホップ、ロック、ポップスなど、さまざまな要素がカラフルにはじける彼女の音楽は、クラブピープルだけを対象にした音楽ではない。そこがMiChiのさらなる可能性を感じさせる部分だ。
「しかも、ずっとチャートインしていた曲が「You Gotta Be」(Des'reeのカバー)という、いちばんダンスっぽくない曲だったから(笑)。どこかのカテゴリーに入れられちゃうのはしょうがないけど、そんなことに関係なくオープンに聴いてほしいし、そういうふうに聴かれてる今の状況はとてもうれしい」
シンガーを夢見てやってきたことが、ちょっとずつ形になって見えてきた
3カ月前のインタビューでは身近な目標のひとつとして、「ライブを続けて、もっといいライブがしたい」と言っていたMiChi。彼女はクラブミュージック最大のアウトドアフェス「渚・春」の出演以降もこの夏、クラブやフェスなどさまざまな場所でパフォーマンスを行っている。特に印象的だったライブは?
「8月に東京の国立競技場であった『SOULMATE MUSIC FESTIVAL』というオールナイトのフェス。それはステージも大きくて、バックにスクリーンがあったり、いろんなジャンルの音楽ファンがたくさんいて、自分の中ではベストのライブができたと思う」
先日原宿で行われたライブでは、音楽関係者だけでも300人以上が来場。メジャーデビューが間近のMiChiへの高い注目度が伺われた。DJ+エレクトリックギター+MiChiという編成でのステージ。そこには輝くオーラを放ちながら、歌い、跳ね、時には拡声器でフロアを煽る姿があった。「Are You Ready To Rock?」とフロアに何度も問いかけ、最初は恥ずかしがっていたフロアを突然の関西弁でなごませ、大きなレスポンスを引き出す。子どもの頃から憧れてきた場所に立ち、まもなくメジャーデビューを迎える、今の心境はどんなものなのだろうか。
「やっと始まってきた、という実感はあります。いろんなプロジェクトが進んでいてエキサイティングですね。シンガーを夢見てやってきたことが、ちょっとずつ形になって見えてきたし、これからもっとすごいチャレンジの時期がやってくると思う。デビューは自分が想像してる以上に大きなことかもしれない。この前も初めてPVを撮ったり、シングルジャケットの撮影をしたり、何をやっても楽しい!」
プロフィール
MiChi(みち)
1985年、イギリス生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。2歳から10歳までを神戸で過ごす。
1995年、阪神・淡路大震災の後、再びイギリスに移住。10歳から18歳までの最も多感な時期をイギリス・バーミンガム近郊で暮らし、シンガーを夢見る。
18歳で再来日。中島美嘉、加藤ミリヤ、SOULHEAD、CHEMISTRY等のトラックで知られるプロデューサー・松澤友和と出会い、東京で本格的な音楽活動をスタート。東京・西麻布の伝説的クラブ「YELLOW」(2008年春に閉店)が輩出した最後のシンガー。
2008年6月にインディーズ・アルバム「MiChi MadNesS」をリリース。iTunes Storeダンスアルバムチャートで1位(総合アルバムチャート最高位2位)、ダンスチャートの1位~3位を2回独占。
2008年10月22日、メジャーデビューシングル「PROMiSE」をリリース。オリジナル曲の歌詞はすべてMiChiによるもの。
シーフード・ベジタリアン。趣味はアート、写真、旅、散歩、ヨガ。