大阪・難波のライブハウス、Yogibo META VALLEYが10月に開業1周年を迎えた。
Yogibo META VALLEYは、難波ロケッツの跡地に誕生した新たなカルチャースペース。2つのライブハウスに加え本格的なフードを楽しめるカフェ・パブスペースやアートスペースも有しており、日々ジャンルレスな表現の発信が行われている。
Yogibo META VALLEYでは、オープン1周年を記念して10月26日から12月1日まで「Namba Culture Terminal 2024 -1st Anniversary-」と題したイベントを開催中。音楽ナタリーではこのイベントの初日公演となった、10月26日のReolとCö shu Nieのツーマンライブの模様をレポート。2組のアーティストのコメントと合わせてMETA VALLEYの魅力、1周年記念施策の数々を紹介する。
取材・文 / 三橋あずみ
Cö shu Nie
満員の観衆が開演を待ち望むYogibo META VALLEY。先攻を取ったCö shu Nieは、最新アルバム「7 Deadly Guilt」の収録曲「Where I Belong」でライブの幕を開けた。複雑な変拍子を鮮やかに乗りこなす中村未来(Vo, G, Key, Programming)の圧倒的なボーカルと、重たくうねる松本駿介(B)のベース。オリジナリティあふれるサウンドを叩き付けるCö shu Nieのプレイにオーディエンスは即座にクラップで反応し、フロアは一瞬にして熱を帯びていく。中村が「Cö shu Nieです、よろしく!」と名乗りを上げた「絶体絶命」では、松本のアグレッシブなベースプレイに歓声が。曲を終えると、中村は「素晴らしいイベントがあるということでReolが私たちを指名してくれて、こうして大阪に戻ってきました」と来場者に伝えた。
ライブスタート早々から渦巻く熱気に中村がファージャケットを脱ぎ去ると、バンドは「undress me」「Artificial Vampire」を続けてフロアをよりディープな世界へと誘っていく。「水槽のフール」では、ハンドマイクを手にした中村が舞台の前方ギリギリまで歩みを進めてしゃがみ込み、挑発するような艶やかな仕草でオーディエンスを魅了。ステージとの距離が近いYogibo META VALLEYの特長を生かすような親密なパフォーマンスを見せて、フロアとの“距離感”を縮めていった。スタンドに置いたギターをかき鳴らすテクニカルなギターソロでも歓声を誘った中村は、曲を終えるなり「大阪めっちゃ元気やな!」と笑顔を見せた。
「この曲を書いたことによって得たカタルシスを受け取ってくれますか?」。そんな中村のひと言から始まった「asphyxia」を皮切りに、ギアをさらに引き上げたCö shu Nieは、アグレッシブな演奏でオーディエンスを圧倒。疾走感あふれる「bullet」では息の合ったバンドアンサンブルをもって聴き手の高揚を誘う轟音を放ち、「まだまだ盛り上がれますか!? 大阪愛してるよ!」という呼びかけで歓声を響かせる。勢いのまま「永遠のトルテ」へと展開すると、背面弾きで魅せた松本を筆頭に、激しいビートに身を委ね、一心不乱に楽器をかき鳴らすメンバーのパフォーマンスがカオス的な熱狂を生んだ。
そしてライブ終盤、中村が「Reolが『好き』って言ってくれる曲」と言って届けたのは「Burn The Fire」。重低音響くパワフルなサウンドに誰もが拳を突き上げて盛り上がったこの曲を終えると、ライブハウスの上を走る南海電鉄の「ガタンゴトン」という通過音がタイミングよく鳴り、中村は「心地いいですね」と静かに笑った。繊細なファルセットがオーディエンスの心を打ったドラマチックな「give it back」を歌い終えると、中村は「私は自分のすべてを音楽に込めてきたので、こうやって共有できることが極上の幸せです。またこうしてお会いできたら」と思いを告げ「青春にして已む」の美しいアンサンブルでみずみずしくもノスタルジックな世界観へと聴衆を誘う。カオティックで美しい、Cö shu Nieのアイデンティティをライブハウスに充満させたパフォーマンスはエモーショナルなミドルチューン「消えちゃう前に」で締めくくられ、中村は「またここで会えますように」という言葉を残してReolへとバトンをつないだ。
セットリスト
- Where I Belong
- Deal With the Monster
- 絶体絶命
- undress me
- Artificial Vampire
- 水槽のフール
- asphyxia
- bullet
- 永遠のトルテ
- Burn The Fire
- give it back
- 青春にして已む
- 消えちゃう前に
Reol
Reolのライブは「-nil-」から展開する「極彩色」で開幕した。開いた幕の向こう側、ダイヤ型のステージに立っていた彼女の手には扇子。性急なビートとスラップベースが暴れるサウンドを鮮やかに乗りこなし、突き抜ける歌声で興奮のムードを扇動していくReolは、続く「感情御中」で「What's up, 大阪! いけんの!?」と思い切り叫んだ。流れるようなフロウのラップで軽やかかつポップに舞った「Nd60」を終えると「熱いね!」とオーディエンスに語りかけたReol。今回のツーマンでCö shu Nieに声をかけたその理由を「単純に好きな人とやりたいなと思って」と明かすと「Reolの曲でも楽しんでほしいわけ! 今日はよろしく!」と挨拶した。
楽曲冒頭から放たれるハイトーンが聴く者の心を揺さぶる「切っ先」では、ステージの壁面を成す巨大なLEDビジョンに映し出されるグラフィックが演奏と連動。美しいメロディラインが印象的なバラード「さよならのすゝめ、今日のつづき」でも幻想的なVTRが楽曲のストーリー性を増幅させ、Reolの情感豊かな歌唱をドラマチックに彩った。舞台セットを巧みに駆使してオーディエンスのイマジネーションをかき立てたかと思えば、続く「MONSTER」ではシンプルな照明演出のみで力強いバンドアンサンブルと自らのボーカルのパワーをまっすぐに提示する。アグレッシブなミクスチャーサウンドで疾走する「SCORPION」では、さらに勢いを増していく彼女のパフォーマンスを明滅するライトがまばゆく照らした。流れるように展開した「煩悩遊戯」では、Reolがオーディエンスにクラップを要求。盛り上がる聴衆は即座に反応して大きなクラップ音を響かせ、さらにはキメのタイミングで息を合わせた大ジャンプでひとつになって、文字通りにフロアを揺らした。
「煽げや尊し」では満員のオーディエンスから威勢のいいコールが飛び、これを受けたReolは変幻自在で晴れ晴れとしたボーカルで歌い上げ、ライブハウスに渦巻く祝祭感を加速させていく。誰も彼もが歌い踊り、文字通りのお祭り騒ぎが繰り広げられたひとときを終えると、ここでMCの時間を設けたReol。「飛ばしすぎたー!」と笑った彼女は「素晴らしい盛り上がりをありがとうございます。圧倒されています」と改めてファンに感謝を伝え、「音楽って、いろんな人との縁をつなげてくれるなって」としみじみ語った。
「喉を使い切って帰ります」という力強い宣言とともに「真空オールドローズ」が鳴り響くとライブも佳境。グルーヴィなサウンドに身を任せながらもテクニカルな歌唱でしっかりと聴かせたReolは、続く「白夜」でも圧倒的なボーカル力をもって“白と黒”のコントラストを鮮やかに描き出す。思わず息を呑むような迫真のパフォーマンスを見せ、オーディエンスを魅了する彼女がクライマックスにドロップしたのはキラーチューンの「第六感」。「ラスト2曲、出し切ってくれますか?」というReolの呼びかけに、フロアが熱い歓声とコールで応えたこの曲ではラストのサビでシンガロングも巻き起こり、会場の大きな一体感を形成した。心を燃やす全身全霊のパフォーマンスで60分のステージを駆け抜けたReol。ラストナンバーの「No title」でフロアに発生したハンドウェーブの一体感を受け取った彼女はオーディエンスの心に深い余韻を残すような優しい歌で自身のステージを締めくくり、笑顔でステージをあとにした。
セットリスト
- -nil- ~ 極彩色
- 感情御中
- Nd60
- 切っ先
- さよならのすゝめ、今日のつづき
- MONSTER
- SCORPION
- 煩悩遊戯
- 煽げや尊し
- 真空オールドローズ
- 白夜
- RE RESCUE
- 第六感
- No title
Cö shu Nie
ライブの感想
中村未来 盛り上がりましたね。大阪で長く活動していたので、こういう空気を感じるとやっぱり「帰ってきたな」という感じがします。もともと難波ROCKETSで私たちはライブをやらせてもらっていたので。そういう場所でまたライブができたこともうれしかったです。
松本駿介 あと今日は対バンということで、普段Cö shu Nieを目当てに来てくれる人もそうでない人もいたと思うんですけど、みんなすごく楽しんでくれたし、一緒に空気を作れた感じがして、めっちゃ楽しかったですね。対バンでもかなりアットホームな雰囲気になるのは関西らしさなのかなとも思うし。ReolのライブでCö shu Nieのお客さんが手を挙げて盛り上がっていたり、いいイベントになったなと思います。
Yogibo META VALLEYの印象
中村 ROCKETSの懐かしさも感じますし、あと私、オーナーさんと地元が近くて。めちゃくちゃ地元トークで盛り上がりました。もうちょっとゆっくり話さなアカンなって(笑)。
松本 あとは、きれいですよね。オープンして1年ということで、訳わからんラクガキもないですし。トイレに何も書かれてないのは新鮮やなと(笑)。ホントに大阪のライブハウスなのかな?と思ってしまうほどで。楽屋にはYogiboまで置いてあるし、演者を楽屋から出さへん気かな?と。懐かしさと初めましての感じが入り混じっていて、またすぐに来たいなと思わされますね。
今後について
中村 11月28日と30日に、アルバムのリリースツアーのアンコール公演があるので、まずはそこに向けてという感じですね。
公演情報
Cö shu Nie Album Release Tour 2024“Wage of Guilt” - Encor
- 2024年11月28日(木)東京都 WWWX
- 2024年11月30日(土)石川県 REDSUN
プロフィール
Cö shu Nie(コシュニエ)
中村未来(Vo, G, Key, Programming)、松本駿介(B)からなるバンド。2018年6月にテレビアニメ「東京喰種トーキョーグール:re」のオープニングテーマ「asphyxia」でメジャーデビューを果たす。2019年11月にテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」のエンディングテーマ「bullet」をシングルリリースし、12月には初のフルアルバム「PURE」を発売した。2020年1月公開の映画「シライサン」で初の映画主題歌を担当。同年5月にはインディーズ時代に会場限定で販売されたミニアルバム「OVERKILL」のリマスタリング盤を配信リリースし、11月にミニアルバム「LITMUS」をリリースした。2021年3月には、テレビアニメ「呪術廻戦」第2クールのエンディングテーマ「give it back」を表題曲とするシングルをリリース。ストリーミング再生も1600万回を突破するなどヒットを記録する。2024年9月にアルバム「7 Deadly Guilt」を発表した。
Cö shu Nie / コシュニエ (@co_shu_nie) | X
Reol
ライブを終えて
お客さんとの距離が近かったですね。フロアの奥までたくさんの方が来てくれたので、ライブが進むにつれ一体感が高まっていく感覚があって。「やっぱりライブっていいな」と思える時間になりました。
Yogibo META VALLEYの印象
初めて使わせてもらったのですが、ステージに対して横に広い感じ……ワイドな感じがありつつ、でもギュッとしている。全員が近く感じる、ステージを見やすいライブハウスだと思いました。こちら側からも、3秒あれば見渡せるくらい近いです(笑)。また、今日の公演が1stアニバーサリーの1発目の公演ということで。お話をいただいたときは「私でいいんですか?」という感じだったんですけど、「どうやって時間を使っていただいてもかまわないです」とライブハウスの方から言っていただきまして。ここ数年、対バンライブをコンスタントにできていることもあって「ツーマンライブにしたいな」と思い、Cö shu Nieをお誘いしました。
今後について
コロナ禍という時代が“海を渡ること”を許さない部分があったり、声出しもなかなか叶わない状況だったのが、2023年頃から徐々にブレイクスルーされてきて……今の自分的には「まだ行ったことのないところへ行きたい」というムードがあります。それはもちろん、今応援してくださっている皆さんも連れていけたらという意味で。まず、自分にとっての“次の宛先”は来年の横浜アリーナなんですが、個人のムードとしてはまだ見ぬ人たち、まだ見ぬ“私を知る人たち”に会いたいなという思いですね。
公演情報
Reol Oneman Live 2025 カルチュア・カリキュラム
- 2025年1月19日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2025年1月24日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2025年2月2日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
Reol ワンマンライブ(タイトル未定)
- 2025年11月9日(日)神奈川県 横浜アリーナ
プロフィール
Reol(レヲル)
シンガーソングライター。2012年より動画共有サイトにて歌唱動画や自身が作詞を手がけた楽曲を投稿し始める。2015年7月、れをる名義でソロアルバム「極彩色」をリリース。2016年3月にはサウンドクリエイターのギガ、映像クリエイターのお菊とともにユニット・REOLとしての活動をスタートさせ、同年10月にはアルバム「Σ」をリリースした。2017年8月にユニット・REOLの“発展的解散”を発表。同年10月に行われたラストライブ「REOL LAST LIVE『終楽章』」をもって、ユニットとしての活動に終止符を打った。2018年1月にはReol名義で“再起動”することがアナウンスされ、活動を再開。同年10月に1stアルバム「事実上」、2020年1月に2ndアルバム「金字塔」、2022年11月にはシングル「COLORED DISC」を発表。2023年10月には3年9カ月ぶりとなるフルアルバム「BLACK BOX」をリリース。2024年8月に初の東京・日本武道館ワンマンライブを行った。同年11月にテレビアニメ「青の祓魔師 雪ノ果篇」のオープニングテーマ「RE RESCUE」を収録したEP「秘色録」を発表。2025年11月9日に神奈川・横浜アリーナで単独公演を開催する。
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会場紹介・1周年イベント情報