音楽ナタリー Power Push - METAFIVE

完成度の高い過渡期アルバム

デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」みたいなギター

──椅子取りゲームが苦手な人の歌詞とは思えないですね(笑)。最後の「Submarine」は、幸宏さんとゴンドウさんがアイデアを出した曲ですね。

高橋 まずゴンちゃんのデモがあったんだよね。

ゴンドウ メロディとコードだけ。最初はわりとゆるいテンポだったんですけど。

高橋 僕が「テンポ上げてみようか」って言って。それで今度は、僕がある程度メロディを弾いて、ゴンちゃんが「そこのところ、いいですね」とか「今のところ、こっちでだめですか?」「あ、それもいいね」みたいな感じでやりとりしながら簡単なスケッチを作ったんです。歌詞に関しては、最初にゴンちゃんが「『CUE』みたいな曲にしたい」って言うから、きっと前向きな、ポジティブな曲なんだろうなと思って。「とにかくまっすぐ進むような内容にしたい」ってLEOくんに言ったら、そのままな歌詞を書いてくれた。2番で海に潜り始めちゃったけど(笑)。

──言われてみれば「CUE」っぽいですね。

高橋 ツーコードにすると、どうしてもああいう展開になるんですよね。だから、もう1つ何か加えようってことで、「『ヒーローズ』みたいなギターを入れてくれない?」って、小山田くんに入れてもらったんです。

2016年1月21日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催されたワンマンライブ「METALIVE 2016」の様子。(撮影:山内聡美)

──「ヒーローズ」ってデヴィッド・ボウイのですか?

高橋 そうそう。まるっきり同じギターを入れて(笑)。

砂原 その頃、ちょうど亡くなったんですよね。

高橋 亡くなって3、4カ月経ってたかもしれない。

──じゃあ、トリビュート的な思いも?

高橋 いや、そこまでいかないですけど。たまたま車でラジオを聴いてたら「ヒーローズ」がかかったんですよ。それで「あ、この曲もツーコードだな」って。「このギターのフレーズ、『Submarine』に合うんじゃないかな」と思って小山田くんに言って、弾いてもらいました。

──砂原さんは、この曲に手を加えた箇所を憶えています?

砂原 何やったっけ? ベースかなんかをちょっとだけ入れたかもしれないですね。

高橋 まりんから2回くらい手直しがあったな。最初に作ったベーシックトラックが「グルーヴ感がこっちの方がしっくりくるような……」って、確か1回テンポを落としたんだと思うけど、それをもう1回上げて、「こっちのほうがよくないですか?」っていうやりとりをまりんとした覚えがある。

砂原 なんかありましたね。でも最終的にゴンちゃんが何本かあったベースを1本にして。

ゴンドウ うん。

高橋 両方のいいところが出てよかったね、ってことになった。

逆に今、曲順が重要になってきた

──曲順に関してはすんなり決まりました?

高橋 それはけっこう揉めました。2つの派閥があって。

──というと?

高橋 TEIくんとかは「Egochin」1曲目派だったと思う。「アルバム『META』とイメージがガラッと変わるからいいんじゃないか」って。リード曲って2曲目にくることが多いから、意外な曲で始まって次に「Musical Chairs」っていうのも僕もわかるんですよね。でも、スタッフ側は「Musical Chairs」からスタートするのがいいって。それでみんなでいろいろ考えて、「やっぱり勢いがあるほうがいい」っていうことになって、まず「『Musical Chairs』『Chemical』『Peach Pie』という順番はどうだ?」っていう案が出た。そうすると「『Egochin』と『Submarine』が並ぶのはイメージとちょっと違う」っていう意見もあって。それで僕がこの曲順を提案したら、最終的にそうなりました。折衷案ですけど。

砂原 「Submarine」が最後っていうのは最初から一致してましたよね。

──何を頭に持ってくるかが難しかったと。

高橋 勢いのある曲ばかり、バッと続けちゃうっていう手もあったんだけど、5曲入りなんでね。そうじゃないほうがいいと思って。

──確かに5曲でメリハリを付けるのは難しいかもしれないですね。

2016年1月21日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催されたワンマンライブ「METALIVE 2016」の様子。右はゲストボーカルの水原佑果。(撮影:山内聡美)

高橋 アナログだったら「B面がないA面」ですね、これ(笑)。一時、CDの曲順を全然気にしない時期があったんです。出だしと最後だけ決まってればいいかなって。後はどうせ好きに飛ばすでしょ、みたいな。

砂原 シャッフルする人もいますからね。

高橋 でも今は配信が主流になって、逆にパッケージって貴重になってきたから、曲がどう並んでるかはすごい重要になった気がして。今回アナログ盤も出すし。そういえばアナログ盤のジャケット、すごくいいものになると思うんですよね。

──今回のジャケは両面を使ってメンバー6人がそろうデザインですね。砂原さんが手に持っているオブジェみたいなものはなんですか?

砂原 これはアクリルでできてて、「META」っていう文字になっているんですよ。撮影のとき、TEIさんが「何か小道具がほしい」って言って作ってもらったんだと思うんですけど、縁を触ると手が切れそうな危険な仕上げになってて(笑)。

──影のリーダーの証かも(笑)。

砂原 まあ、そういうことですね。このオブジェを持ってる者が権力を握ってる。歯向かうヤツは、これで制裁を加えて。TEIさんが腕を押さえているのは、これで殴られてケガしたのを止血してるんです(笑)。

「こんなバンド、解散だ!」

──では、最後にツアーのことを伺いたいのですが、11月から4都市を回る初めてのワンマンツアーが行われますね。やはり「METAHALF」からは全曲やる予定ですか?

高橋 やらないとマズいでしょうね。

砂原 曲が増えたんで、曲順のバリエーションも増えた。それを考えるのが楽しいですね。

──会場によって変えたり。

ゴンドウ 今回、2日やるところもありますからね。

高橋 札幌ね。「衣装だけ変えるんじゃダメ?」ってスタッフに聞いたんだけど(笑)。

──札幌は衣装も曲順も変わる?

高橋 そういうことになってます。

──「胸キュン」みたいなサプライズは?

高橋 そういうのはいらないんじゃないですか。ワンマンだし。

ゴンドウ たぶん、まりんが北海道で何かしてくれる。

──あ、そういえば故郷ですもんね。

高橋 そうだよ。北海道は何かやらなきゃマズいんじゃない?

砂原 客に水をぶっかけるとか? 「なんで実家に帰ってまで、こんなことやんなきゃなんないんだ!? こんなバンド、解散だ!」って。

高橋 急にキレるんだ(笑)。

砂原 まあ、考えときますよ。言いたいことはいろいろありますから。

──北海道では砂原さんが暴れるかもしれないと。

砂原 いや、たぶんないと思いますけど(笑)。

高橋 99.9%ないと思います。それより、メシを食いに行くところ、考えといてね(笑)。

METAFIVE "WINTER LIVE 2016"
  • 2016年11月30日(水)
    広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2016年12月1日(木)
    大阪府 なんばHatch
  • 2016年12月3日(土)
    東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2016年12月5日(月)
    北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2016年12月6日(火)
    北海道 札幌PENNY LANE24
METAFIVE(メタファイブ)

高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という個々に活躍する6人のアーティストからなるバンド。2014年1月に行われたコンサート「GO LIVE VOL.1 高橋幸宏 with 小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井」をきっかけに集結し、その後も「高橋幸宏 & METAFIVE(小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井)」としていくつかの音楽フェスなどに出演し高評を集める。2014年9月には小山田が音楽を手がける劇場版アニメ「攻殻機動隊ARISE」シリーズ第4弾「攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone」の主題歌としてオリジナル楽曲「Split Spirit」を発表。2015年にはバンド名をMETAFIVEと改め、高橋が主催する音楽フェス「WORLD HAPPINESS 2015」をはじめとする複数のイベントに出演した。2016年1月に初のオリジナルアルバム「META」をリリースし、この作品がロングセラーに。同年11月にはミニアルバム「METAHALF」を発表した。