音楽ナタリー Power Push - METAFIVE
日本が誇る6つの才能が奏でるバンドサウンド
スナックとオリンピックと「Luv U Tokio」
テイ 「Luv U Tokio」は普通にスナックとかでかかってほしいんですよ。
砂原 スナックではかかんないよ(笑)。
テイ 最近よく1人でスナックに行って餃子食べたりするんですよ。焼きうどんとセロリ餃子とハイボールとか。まあまあおいしいんです。
小山田 まあまあおいしい(笑)。
ゴンドウ なんてお店?
テイ そこはどうでもいいんだけど(笑)、そのスナックでは誰かが歌うわけじゃなくオケだけ流れてるんです。マイクも置いてなくて。口ずさんでる人もいるけど、基本BGMとしてカラオケがかかってる。そうするとみんなテロップの歌詞を見るんですよ。サイレント映画みたいな感じで。そういうところで流れるのもいいなあって。
──「Luv U Tokio」はテイさんと砂原さんのサウンドの特色がモロに出てますけど、純粋な歌モノとしても楽しめる曲になっていますよね。
高橋 今のポップスでこんだけ細切れのメロディはないですけど(笑)。
──サウンド的には砂原さんのインスト作品とも変わらないと思うんですけど……。
砂原 そうですね。部品は同じです。
──それを歌モノとして作る上で何か大きな違いはあるのでしょうか。
砂原 外仕事で歌モノとかリミックスの仕事もちょくちょくやってるから、自分なりのやり方みたいなのはあるんだけど、このバンドだとさっき話してたように、投げるとなんかくっ付いて戻ってくるんで。だから1人でうんうん悩むことはなかったですね。ただ、どのタイミングで投げるかはけっこう悩んだかな。「ここで放流しちゃっていいのかな」「ちょっと作り込みすぎたかな」って。
テイ この曲はタイトルもけっこう悩んだんですよ。最初は「Tokio」とか「Tokio 2000」だったんだけど、ちょうどオリンピックが泥舟だって話になって。
砂原 その前に1回「ラブユー東京」ってタイトルが挙がったんですよ。ギャグとして。最終的に「Luv U Tokio」というスペルになったことでしっくりきた。
アイデアの重なり合いから生まれたもの
──「W.G.S.F.」はゴンドウさんが歌詞も含めて書いていますが。
高橋 これがゴンちゃんが最初にデモで持ってきた曲ですね。
ゴンドウ これもオリンピック絡みのニュースが多いとき、皮肉って書いたんですよ。
砂原 そうなんだ!
ゴンドウ そう思って聴けばそう取れると思う。「Don't Move」の成功例を考えると、これはちょっと1人で作り込みすぎたなという反省点があって。
──余白を残しつつ、それぞれの得意技が乗ってくるのを待つ感じでしょうか。
高橋 それもあるけど、誰がどんなことしてくるかわからない、想像がつかないところも面白いんですよ。
──音を重ねることで段階を追って完成型に近付けていくという作業だと思うのですが、最終段階で大きくひっくり返したような曲もありますか?
テイ アレンジがガラッと変わった曲はないかな。
LEO 僕がデモを作った「Disaster Baby」は、いやらしいスタジアムロックみたいなものを漠然とイメージしてたんですけど、砂原さんが1980年代後期のDepeche Modeみたいなカチッとしたドラムトラックを作ってくれて。構成の大枠は変わってないんですけど、ドラムが入った時点でジャンルが覆されたというか。
──確かに「Disaster Baby」はある意味METAFIVEらしくないというか、アメリカンロック的な匂いを感じる曲だなと思ったんですよ。でもサウンド的には全然アメリカンじゃない感じが面白いなって。
LEO そうですね。これはそういうアイデアの重なり合いから生まれたもので。
砂原 最初は生(ドラム)でやっちゃおうかという案もあったんですよね。でもライブは生でやってもいいと思う。結局僕らがやるとスタジアムロックにはならないから。
METAFIVEは集会所
──そろそろまとめなきゃいけない時間なんですけど……話を聞いていく中でより細かい部分が知りたくなってしまいました。
高橋 話が相当とっ散らかっちゃったね。まさかキャバ嬢DJの話まで出てくるとは(笑)。
小山田 セロリ餃子がまあまあうまいとか(笑)。
高橋 そこが今日のハイライトだからね。このインタビューの要。
──METAFIVEのその感じも見たかったのでよかったです(笑)。こうやってオリジナルアルバムが1枚完成したことで、先ほど高橋さんもおっしゃっていましたが、やっぱり気になるのはこの先のことですよね。アルバムを作ったからこそ、このバンドでやれることがさらに明確になったんじゃないかと。
高橋 うん。「だったらこういうアルバムも作れるかもな」みたいなことは考えてしまいますね。
──皆さんMETAFIVEは継続するバンドという認識でしょうか。
高橋 どういう形でも続けられると思うんですよ。パーマネントな形でアルバムを作ってツアーを組んで、みたいなのはテイくんも嫌いみたいだし……。
テイ 嫌いっていうか……まあ、嫌いですね(笑)。
高橋 そんなにかっちりとやらなくても、今みたいなやり方ならいくらでもできると思うので。可能性はまだまだあると思います。細野さんとSKETCH SHOWの頃よく言ってたけど、バンドってのは4枚ぐらいアルバムを作って、2枚目3枚目あたりがベストなものになるんですよ。それでいいと言われてしょうがないからもう1枚作って、最悪なやつができて「あんなの作んなきゃよかった」って思う(笑)。
──あははは(笑)。まあケンカになるような年齢や間柄でもないかもしれませんけど、そういうバンド的な醍醐味をちゃんと楽しもうとしているということでしょうか。いわゆる期間限定ユニットみたいな他人行儀な感じよりも。
テイ そうですね。でも小山田くんはそろそろCorneliusも出したほうがいいんじゃない?
小山田 ああ……うん。
砂原 ははははは(笑)。
小山田 あの、別に並行してやってもいいかなと思うので。
砂原 6人ですから、1人分の負担は少ないんですよ。
高橋 自分のことやりながらでも全然できますよ。自分のことやってて「あれ、これはMETAのほうが合うかな」ということもあるだろうし。
テイ 語弊があるかもしれないけど、別宅っつうか、別荘ができたような感じですよ。
砂原 集会所っぽいよね(笑)。
テイ そうそうそう、寄合所みたいな。あと僕は最近、温泉のことを「外スタ」って呼んでるんだけど(笑)、そうやってタッチポイントが増えるのは楽しいし、1/6の責任感でいられるのはソロと違って気楽でいいよね。
収録曲
- Don't Move
- Luv U Tokio
- Maisie's Avenue
- Albore
- Gravetrippin'
- Anodyne
- Disaster Baby
- Radio(META Version)
- W.G.S.F.
- Split Spirit(META Version)
- Whiteout
- Threads
- METAFIVE "pre-METALIVE 2016 ~「META」 RELEASE party"
- 2016年1月14日(木)東京都 LIQUIDROOM
OPEN 19:00 / START 20:00 - 出演者METAFIVE / Young Juvenile Youth(オープニングアクト)
- 料 金前売5800円(ドリンク代別)
- METAFIVE "METALIVE 2016"
- 2016年1月21日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI
OPEN 18:30 / START 19:30 - 料 金 7800円(ドリンク代別)
METAFIVE(メタファイブ)
高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という個々に活躍する6人のアーティストからなるバンド。2014年1月に行われたコンサート「GO LIVE VOL.1 高橋幸宏 with 小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井」をきっかけに集結し、その後も「高橋幸宏 & METAFIVE(小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井)」としていくつかの音楽フェスなどに出演し高評を集める。2014年9月には小山田が音楽を手がける劇場版アニメ「攻殻機動隊ARISE」シリーズ第4弾「攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone」の主題歌としてオリジナル楽曲「Split Spirit」を発表。2015年にはバンド名をMETAFIVEと改め、高橋が主催する音楽フェス「WORLD HAPPINESS 2015」をはじめとする複数のイベントに出演した。2016年1月には1stオリジナルアルバム「META」をリリース。