音楽ナタリー Power Push - METAFIVE
日本が誇る6つの才能が奏でるバンドサウンド
フィジカルなサウンドとメッセージ
──今の国内外のアーティストたちとの違いなどは考えますか?
テイ 昨日話してたときにまりんが言ってたけど、もうトレンドとか関係ない音楽が面白いんじゃないかって。
砂原 今流行っている音というのがいつの時代もなんとなくあって、マーケティングしながら音楽を作っている人もいっぱいいると思うんですけど、このバンドではそれがまったく切れてしまっているのがいいんですよね。
高橋 その時代その時代のトレンドはあるみたいですけど、細野(晴臣)さん曰く、あんだけ長くやっていると、どれを聴いても新しくないんですって。大昔、特別に新しい音楽ってなんだろうって教授(坂本龍一)たちと考えたんですけど、それは2つしかなくて。1つはコンピュータが作った音楽、もう1つは第三者をまったく意識しない音楽。コンピュータが作る音楽は今のところ実質どうしても人の意思が介在するから、それがまったくない音楽ができたら新しいかもしれないけど、それ以外は結局何かの影響を受けていますから。まあ、あまり意味がないですね。
──今おっしゃったような話は、1曲目「Don't Move」の歌詞にも反映されているのかと思いますが。「動くな トレンドに乗っちゃだめだ 奴らが何を売ろうとしてようが関係ない」という言葉は辛辣にも感じます。
LEO ……和訳で読むとちょっとカッコ悪いですよね(笑)。
砂原 (LEOを差して)顔赤くない?
テイ もちろんメッセージは込められてますけど、日本語で言うのとはニュアンスがちょっと違うと思いますよ。やっぱ英語のほうが音楽的というか、いい意味で聴き流せるから。
──そうですね。僕は英語がわからないので、ただ聴いているぶんには異常に気持ちいい音に身を委ねるだけだったので、改めて対訳に目を通したらこういうことを歌っていたのかと。外部に対して敵意を向ける攻撃的な方々ではないでしょうし。
高橋 全然違いますね。こういうメッセージはたぶんLEOくんが言ってくれないと、誰も言わないと思うんですよ。ほかのメンバーはもっとひねくれてるから、裏のほうでちょこちょこと出すけど、直接的に言ってくれる人がいるからものすごく助かっているところはありますね。わかりやすくきれいに伝えてくれているというか。このメッセージがフィジカルなダンスミュージックになって出てくると「このバンド、思っていたものと全然違う」という印象を感じてもらえるみたいで、それはこのバンドをやる上で大成功だと思います。
──「Don't Move」に限らず、METAFIVEではLEOさんがボーカルや作詞を担う部分が大きいですが、LEOさんはやはり「METAFIVEならではの歌詞」というものを意識していますか?
LEO 共通したコンセプトは特になくて、曲ごとに考えていく感じですね。「Don't Move」は最初に小山田さんが作ったトラックの構成が複雑で、すごく動き回ってたから「Don't Move」というタイトルが先に浮かんだんです。逆説的で面白いかなって。そこからどんどん内容が付いていった感じで。今指摘してもらった素敵な歌詞(笑)、あれはテイさんがあとで作ったメロディに乗っけて、自分を持ってどっしり構えるという内容になっていきましたね。まあ、メッセージというよりはテーマみたいな。
テイ そうだね。僕個人は3.11以降、変になってきた世の中に対して少し言いたいことは増えてきましたけど、ポエトリーリーディングじゃないから、音楽は気持ちよければいいんじゃないかなと思うんですよね。
METAFIVEのダンスミュージックとポーチ系DJ
LEO まあ「Don't Move」はアルバムの中でも攻撃的な曲で、歌詞の内容だけじゃなくトラックにも狂気がありますよね。
テイ 最終的にみんなが気に入るリード曲になるとは思わなかったけどね(笑)。そのつもりで作ってた?
小山田 いや、なんも考えてなかった(笑)。最初にこのメンバーで「Split Spirit」を作ったとき、みんなでデモを回して僕がまとめたんだけど、けっこうみんな音を入れてくるから最終的に間引いたりしなきゃいけなくて。それがあったんで、「Don't Move」のときはわりと薄めなオケで回したんです。もともと僕が入れていたメロディもあったんだけど、抜いてから投げてみたんですよ。そうすると自分が思ってもいなかった方向にどんどん転がって、最終的にみんなの持ち味がバランスよく入る曲になったので、よかったなと。
──最初に回した音源はどの程度まで作り込んでいたんですか?
小山田 リズムトラックとギターぐらい。ライブをやって「このバンドにはダンスミュージックが合うだろうな」と思っていたから、なんとなくそんなイメージでリズムを組んで。
テイ まあ、小山田くんが作るダンスミュージックだから、ウエストポーチからUSBを取り出してDJするようなさ、キャバクラみたいなダンスミュージックにはならないですから。
高橋 ちょっと待って、何それ(笑)。
小山田 キャバ嬢みたいなDJがいるんですか?
ゴンドウ 意味がわかんない。
砂原 僕はわかりますよ(笑)。今はもうレコードやCDじゃなくUSBだけでDJできるから、こうやってポーチからUSBを出してね。
テイ あとはヘッドフォンだけ持ってくればいい。キラキラしたやつ。
砂原 自分でデコったやつ(笑)。
テイ 話がすごい逸れちゃったけど(笑)、そういう人がかけるダンスミュージックとは全然違うものになるって言いたかったんですよ。
砂原 でもね、ポーチ系のDJもかけるんだったらぜひかけてほしい。
高橋 もっとそっち寄りのバージョンを作ってあげたらいいんじゃない?
砂原 EDMバージョンを。でもちょっと欲しいなと思うこともあるんだよなあ。
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収録曲
- Don't Move
- Luv U Tokio
- Maisie's Avenue
- Albore
- Gravetrippin'
- Anodyne
- Disaster Baby
- Radio(META Version)
- W.G.S.F.
- Split Spirit(META Version)
- Whiteout
- Threads
- METAFIVE "pre-METALIVE 2016 ~「META」 RELEASE party"
- 2016年1月14日(木)東京都 LIQUIDROOM
OPEN 19:00 / START 20:00 - 出演者METAFIVE / Young Juvenile Youth(オープニングアクト)
- 料 金前売5800円(ドリンク代別)
- METAFIVE "METALIVE 2016"
- 2016年1月21日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI
OPEN 18:30 / START 19:30 - 料 金 7800円(ドリンク代別)
METAFIVE(メタファイブ)
高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という個々に活躍する6人のアーティストからなるバンド。2014年1月に行われたコンサート「GO LIVE VOL.1 高橋幸宏 with 小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井」をきっかけに集結し、その後も「高橋幸宏 & METAFIVE(小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井)」としていくつかの音楽フェスなどに出演し高評を集める。2014年9月には小山田が音楽を手がける劇場版アニメ「攻殻機動隊ARISE」シリーズ第4弾「攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone」の主題歌としてオリジナル楽曲「Split Spirit」を発表。2015年にはバンド名をMETAFIVEと改め、高橋が主催する音楽フェス「WORLD HAPPINESS 2015」をはじめとする複数のイベントに出演した。2016年1月には1stオリジナルアルバム「META」をリリース。