ナタリー PowerPush - MERRY

試練を超え“ZERO”から再始動

フロントマンのガラ(Vo)の腰椎椎間板ヘルニア手術による活動休止を経て、8月10日の日比谷野外大音楽堂ライブで劇的な復活を果たしたMERRY。彼らからニューシングル「ZERO -ゼロ-」が届けられた。ガラが復帰したあとも、テツ(B)がライブ中に怪我を負うなど、さまざまなアクシデントに見舞われている彼らだが、そういった逆境にも屈することなく、活動を続けている。その姿勢は、“ゼロからスタートして、さらに高い場所へ行くんだ”という意思が込められた新曲にも強く表れている。

今回ナタリーではガラとネロ(Dr)にインタビュー。野音ライブ以降のMERRYの状況、「ZERO -ゼロ-」の制作過程、さらに今月からスタートする対バンツアーなどについてじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

「大丈夫だ、今日はイケる」

MERRY(撮影:中島たくみ)

──まずは8月の野音ライブのことから聞かせてください。ガラさんの復活の舞台となったわけですが、今振り返ってみて、MERRYにとってはどんな意味を持つライブだったと思いますか?

ガラ 思った以上に回復が早かったし、復活の舞台として野音の話が出たときも「ここしかねえな」って思ったんですよね。最初は悩んだし、「(ステージで)動けるかな」っていう不安もあったんですけど、ライブをやるって決めてからは「その日にできる最善を尽くそう」と思って。自分としては“復活の場所”という位置付けだったんですが、ステージに立って歌えたこと自体がうれしかったんです。ステージに立ちたくても立てない時期があったわけだから、そのぶん、思いも強かったし……。ライブのできで言えば、たぶんツッコミどころもあるんだと思うんですけど、あの日は素晴らしい1日でしたね。

──ステージに対する不安も払拭できた?

ガラ そうですね。リハーサルの段階では全然動いてなかったし、棒立ちで歌ってる感じだったんです。自分の中でストッパーがかかってたというか、怖くて動けないところもあって。でも、1曲目の「梟」が始まった瞬間、机(※MERRYのステージには学習机が置かれている)の上からジャンプしてる自分がいて。そのとき「大丈夫だ、今日はイケる」って。

ネロ 活動休止していた半年間にも、いろんなことがありましたからね。残されたメンバー4人で何ができるか?ということを考えて、楽曲制作だったり、ファンクラブ会員向けに4人だけでライブをやったり。あと、MERRYとして出演する予定だったイベントの方から「DJとかできませんか?」という問い合わせがあって。人生の中で2回くらいしかやったことがなかったですけど、「MERRYのネロとして活動できるのであれば、ぜひやらせてください」って出演したり。野音のときもいろんな思いが自分の中で飛び交ってたから、「ここは落ち着いて、地に足を付けてステージに立たなくちゃいけないなと思ってました。メンバーの中でも「ガラの復活というのが第一。その上で、MERRYのど真ん中を提示したい」ということを話し合って。

MERRYという名前を刻むために

ガラ(Vo)(撮影:中島たくみ)

──“MERRYらしさ”を問い直す時期だったのかもしれないですね。

ガラ そうですね、客観的にバンドを見るきっかけにもなったので。メンバーから野音の曲順が出てきたとき、最初は新曲の「ZERO -ゼロ-」も入ってたんですよ。でも、自分としては「それは違うんじゃねえ?」っていうのがあって。メンバーは「新しいMERRYを見せたい」という気持ちがあったんだけど、俺は「野音は“ガラの復活”でしょ」って。そこを埋めるところから始めた感じですね。僕らってよくも悪くも、そのときに持っているものを全部出しちゃうバンドなんですよ。サービス精神というか、「面白いと思ってること、やりたいことを全部出し切りたい」っていう。今は「次につながるような出し切り方を考えよう」というふうに変わってきてるんですよね。

──バンドの活動方針を改めて考えるタイミングなのかも。最近もテツさんがライブ中に怪我をするアクシデントもあったし……。(※MERRY×linch.presents「Freaks Addict Tour beyond」の岡山・CRAZYMAMA KINGDOM公演において、客席フロアにて接触事故が起きテツが負傷。ツアーは残りのメンバー4人で続行中)

ネロ 最近、会う人会う人に「お祓いに行ってくれば?」って言われますね。ただ、攻撃態勢であることには変わりないし、テツさんがいつ戻ってきても大丈夫なようにしておきたいとは思っていて。こういう状況になった以上、「あの出来事があったから、前に進めた」というところに持っていかないと。止まっていてもしょうがないというか、ピンチはチャンスって考えないといけないと思うし。

──メンバー内のコミュニケーションも増えてる?

ネロ イヤでも増えますね(笑)。

ガラ うん。それぞれがいい意味でバラバラなんですよ、MERRYは。俺みたいな人が5人いたら、10年以上も続いてなかっただろうなと思うし、そういう意味ではバランスが取れるんだろうなって。今回のシングルに関しても、個々のレベルアップだったり、バンドとして何を見せたいか?ということをすごく考えて……。そこを考えないと、この先も生き延びていけないだろうな、というシビアな目で見てるんですよね。音楽業界がどうこうではなくて、MERRYという名前を刻むためにはどうしたらいいか?っていう。

ニューシングル「ZERO -ゼロ-」 / 2013年11月6日発売 / FIREWALL DIV.
初回限定盤A [CD+DVD] 1890円 / SFCD-123~4
初回限定盤B [CD+DVD] 1890円 / SFCD-125~6
通常盤 [CD] 1260円 / SFCD-127
CD収録曲
  1. ZERO -ゼロ-
  2. ワルツ
  3. 絶望 feat.NOBUYA & N∀OKI from ROTTENGRAFFTY(※通常盤のみ)
初回限定盤A DVD収録内容
  1. ZERO -ゼロ- (MUSIC VIDEO)
  2. MAKING OF 「ZERO -ゼロ-」
初回限定盤B DVD収録内容
  • 復活ドキュメント 20130213-20130810
MERRY(めりー)

2001年にガラ(Vo)を中心に結成された5人組バンド。全国のインディーズショップへのデモMDばら撒きやシークレットライブを繰り返し活発に活動していくとともに、激しさと憂いの両方を内包したサウンドで頭角を現していく。2003年には東京・日本青年館で初のホールライブを行い、清春のレーベル「FULLFACE RECORDS」から1stアルバム「現代ストイック」を発表するなど、個性的な活動を展開。2005年9月にアルバム「nuケミカルレトリック」でメジャーデビューを果たし、2006年からはドイツやフランスをはじめとする海外公演やCDリリースなど、ワールドワイドな活動を行う。2009年にDIR EN GREYらが所属するFIREWALL DIV.に移籍し、コンスタントに新作のリリースやライブを重ねる。2013年2月よりガラの椎間板ヘルニア悪化に伴い一時活動休止するも、同年8月より活動を再開した。