mei eharaの2ndアルバム「Ampersands」が5月13日にCDと12inchアナログでリリースされた。
学生時代に自主映画のBGMを制作するために宅録を始め、2017年11月に辻村豪文(キセル)プロデュースによる1stアルバム「Sway」でデビューを果たしたmei ehara。約2年半ぶりのニューアルバムとなる「Ampersands」は自ら声をかけて集めたバンドメンバーと作り上げたセルフプロデュース作品で、鳥居真道(G / トリプルファイヤー)、Coff(B / ex. どついたるねん)、浜公氣(Dr / どついたるねん)、沼澤成毅(Key / ODOLA)が参加している。また今作には7inchアナログで先行リリースされたリードトラック「昼間から夜」や、自ら全編ミュージックビデオの制作を手がけた「群れになって」などバンドサウンドをメインにした10曲が収録されている。
音楽ナタリー初登場となる今回は、彼女にアルバムの制作背景やバンドメンバーとの関係性、アルバムタイトルに込めた思いなどについてインタビュー。特集後半では自身がアルバムを制作するうえで影響を受けたという4つのモノについて紹介してもらった。
取材・文 / 松永良平
フィーリングで「好きだな」と思った人
──カクバリズムからの最初のアルバムだった「Sway」(2017年11月発売)から約2年半。前作はキセルの辻村豪文プロデュースによる宅録的な音響で、その後は長岡智顕(B / 思い出野郎Aチーム)、池田俊彦(Dr / T.V.not january、Hei Tanaka)との3人編成で音数を絞ったバンドサウンドに移行しましたよね(その編成での唯一のリリースは2018年12月のシングル「最初の日は / 午後には残って」)。そして今回の「Ampersands」は新たなメンバーでのニューアルバムとなります。この変遷は自分の中ではどういう流れだったんですか?
3人編成のバンドは、「Sway」をリリースしたあとにそのライブをするために集まったんです。3人という編成も、私にリーダーとしてバンドを率いることでいろいろ経験してほしいというカクバリズム側からの意見からでした。しばらく私は1人で活動していたし、リズム隊と私の3人でやることで、自分のギターのスキルも磨きながらやっていこうというところもあったんです。その3人で1年くらいやりましたね。「FUJI ROCK FESTIVAL'18」に出たり、週1でしっかりリハもやったり、どういうところが自分に足りてないか、どこを伸ばすべきか、みたいなことが見えてきました。ただ、3人の仲がよすぎる感じになって、メリハリがなくなってしまったというか(笑)。3人が軸になるということが頭にこびりついてしまって自分で想像しうる曲のアレンジが単調になってしまったという部分もあったかな。
──とはいえ、バンドの楽しさを経験する大事な時間でもあったと言えますね。
そうですね。でも、新しいアルバムに向かうにあたっては、誰かを追加するよりは、メンバーを一新してやろうということになりました。メンバーの交代は、そういう経緯です。
──新しいメンバーはmeiさんの主導で?
私を担当してくれているカクバリズムのタツ(仲原達彦)くんとも相談しながらですけど、基本的には私が決めました。鳥居(真道)くんに関しては、昔から友達なんです。「Sway」をカクバリズムで作る前に、すでにメンバーとして誘いたくて話をちょっとしていたくらいでした。前回のバンドはスリーピースだったんですけど、今回はギターを1人増やせることになったので、鳥居くんがいいというのは決めていました。ベースのCoffくんとは、私が王舟さん、弁護士の藤森(純)さんと始めたアーティストに宅録機材や楽曲制作について取材するプロジェクト「DONCAMATIQ」で、取材相手として初めて会ったんです。
──あのWebサイト、面白いですよね。Coffさんの取材記事も読みました。
話してみたら同い年で、考えていることも面白くて。そのあと、Coffくんのソロアルバムなどでじっくりと彼の音楽を聴いたりしているうちに、彼ならと思って誘ったんです。
──もともとCoffさんとドラムの浜(公氣)さんはどついたるねんのリズム隊でしたけど、2人がセットという発想ではなかった?
そうです。リズム隊をどついたるねんの2人で固めて、と具体的に考えていたわけではなくて、私のフィーリングで「好きだな」と思った人を選んだ結果です。浜さんはどついたるねんでプレイするのを見て「素敵なドラマーだな」と思っていましたし、浜さんが「Sway」を聴いて「サポートをやりたい」って、ずっと言ってくれていたんですよ。それでお願いしたんです。キーボードの沼澤(成毅)くんは、スリーピースのメンバーだった長岡くんの大学の後輩で、長岡くんが新バンドのキーボーディストとして推薦してくれました。長岡くんと沼澤くんは一時期同居していたので、沼澤くんの人柄とかキーボードの腕前についてもちょくちょく聞いていました。それで彼がサポートで出るバンドのライブを観に行ったら演奏がすごくよくて、長岡くんの紹介なら間違いないと誘いました。
とにかくバンドっぽいことがしたい
──つまりメンバー全員、誘ったきっかけが別だったという。面白いですね。このメンバーがそろったことで、今回の「Ampersands」の曲作りも進んでいったわけですか?
スリーピースのときにリリースしていた「最初の日は」、何年も前に作った「ギャンブル」などを除いて、「群れになって」「昼間から夜」とか半分くらいの曲はメンバーがそろった時点で、もうできていました。私が自分でアレンジしたバンドサウンドのデモをメンバーに聴いてもらって、リハに入ってみんなで練っていくというスタイルでやりました。
──「昼間から夜」は7inchシングルでも先行でリリースされていて、ラヴァーズレゲエっぽいフィールが印象的な曲でしたけど、あれもできたのは早い時期だったんですね。
みんなに声をかける前からできていて、レゲエっぽい曲調は始めから意識していました。デモの時点からテンポはかなり上がりましたけど。
──「Sway」ではキセル的な宅録感との融合が印象的ではありましたけど、「昼間から夜」に限らず、今回は抜けがいい方向に向かっていますよね。そういうサウンド面での変化を象徴している出来事や、この期間に聴いて影響された音楽はあるんですか?
うーん。サウンドに関しては基本的に全員で考えていこうと思っていました。メンバーはみんな、プレイヤーとしてだけでなく作曲家としても素晴らしい人たちだと思っているので、知恵を出し合って完成を目指したいと考えていたんです。リハをしながら「この曲のアレンジは、本当にこれでいいのかな?」と話し合っているときに、誰かが「このアレンジ、これっぽいけど」と音源を携帯からちょろっと流してくれたり、何かが足りないと思ったときは「次回別の機材を持ってくるよ」と、積極的に正解探しをしてくれました。とにかくバンドっぽいことがしたいと思っていました。いろいろな楽器をバンドの上からダビングで重ねて盛りだくさんにしていくよりも、バンドメンバーがそこに集まって、各々自分の役割をしっかりと演奏していくことを目指したかった。
──その感覚、わかります。それって、もしかしたら3人時代の経験が下地になってる感覚かも。
そうかもしれないですね。まあ、でもメンバーが増えてみて大変だなと思うこともけっこうありました。1人ひとりを際立たせながら、どこでどうやったらぶつかり合わないかとか、何が不足していて、どんな風に伝えればいいかなどを考えるのは難しかったですね。そういうところを、リハでは感情的な表現で伝えていました。
──感情的な表現?
「ここまではもっと黙っている感じで、このあたりまで来たら、“すごくイライラした人間が来た”みたいな感じでやってほしい」とか(笑)。私は音楽的な知識が本当にないから、感情的な表現とか比喩、表情、身振り手振りで伝えるしかできなくて、それをみんなに汲み取ってもらっています。「そこはもっとイライラしてよ」とか、「もっと悲しい感じで」とか。
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私はたまに物を壊したくなるけど