ナタリー PowerPush - MEG
国内活動休止の理由とアニソンカバーの意外な真相
MEGが国内での音楽活動を再開。復帰第1弾となるアルバム「LA JAPONAISE」はアニメソングを中心としたカバーアルバム、そして移籍先はアニソンレーベルの老舗スターチャイルドと、ファンの意表をついた再スタートとなった。
ナタリーでは活動休止期間の出来事やアルバム「LA JAPONAISE」制作の経緯を探るべく、MEGにインタビューを敢行。フランスに軸を置いた2010~11年の活動から、気になる次回作の構想まで幅広く話を訊いた。
取材・文 / 大山卓也
国内活動休止の理由
──MEGさんは2010年に国内での音楽活動を休止して、フランスに拠点を移しましたよね。まずはそのときの状況から教えてもらえますか?
2010年の9月にベスト盤を出して、10月のバースデーライブを最後に休止したんですけど、そこまで結構リリース続きだったんですよね。中田(ヤスタカ)くんが作るの速いからっていうのもあるんですけど、3週間でアルバム1枚分、歌詞を書いてレコーディングする、みたいな感じで。
──かなりのハイペースですね。
それで「MAVERICK」っていうアルバムのときに、音楽的にはクラブミュージックというより、もうちょっとポップなほうに寄り始めてて。そうなると言葉が際立ってくるっていうか、その分言葉を慎重に選ばなきゃいけなかったし、そうなるとやっぱりこのペースは無理だなって思ったんです。もうちょっと時間をかけないとまずいぞって。
──エレクトロのビートに乗せる歌詞なら、ある程度勢い重視で行けたのに?
と言うより、ポップス寄りのものを作るにあたっては、もうちょっと歌詞に時間をかけないとダメだし、自分の中に広いテーマのストックがないと納得いくアウトプットができない。それで「MAVERICK」を作ってるときから、次のベスト盤のところでひと区切りつけてちょっと休もうと思ってたんですよね。
フランス滞在について
──フランスに行くことにしたのはなぜですか?
フランスは2008年の「JAPAN EXPO」のライブのときに初めて行って、実はそのときからずっと気になってたんです。フランスで日本のカルチャーやエンタテインメントは、まだまだ広がるなと思ったし、私自身すごく楽しかったから。で、そのあとは年に5、6回あるそういったイベントには出ていて。
──でも移住したわけではなかったんですよね。
近くの国に行ったりも含めて、長くて3週間くらいの滞在を繰り返して、って感じですね。最初の頃、向こうでライブのあとにケータリングで生のサーモンのお寿司を食べたんです。すごく久しぶりの日本食だからおいしくて。でも仕事終わって日本に帰るとき、その帰りの飛行機で気持ち悪くなっちゃって、帰国してそのまま緊急外来へ……。
──サーモンに当たったということ?
わかんないんですけど、そのあとすぐ入院したりして。それで3週間以上の滞在は無理だって思って(笑)。そのあとわかったんですけど、私、小麦粉とかグルテンアレルギーだったんですよね。だからパンとかパスタばっかり食べてると体が弱ってきちゃうみたいで。
──そのおかげで日本での活動を再開してくれたなら、ファンとしてはうれしいですけどね。
やっぱり日本人なんですよね。お米とか食べないとダメみたいです(笑)。
老舗レーベルとの出会い
──国内での活動休止を決めたときに、その後の展望についてはどの程度考えていたんですか?
なんにも考えてなかったです(笑)。
──じゃあフランスで作品を発表して、このアルバムにつなげようといったことも……。
いえ、レーベルも決まってなかったんで(笑)。アルバムの話をもらったのは去年の年末くらいで、日本でのこととか全く考えないまま、プロデューサーも伏せてこっそり趣味的にリリースしてた感じで。
──iTunes Storeの楽曲も日本では買えなかったですしね。
そうですね。世界配信はできたんですけど、フランスだけでいいや、とか思ってて(笑)。フランスで6カ月連続でリリースし終わったくらいに、日本でも出さないかっていくつかのレコード会社からお誘いをいただいて。けどなんにも決めてなかったから、どうしようって悩んでたんですけど、今回のお話をスタチャさんからいただいて、「スタチャで出せるんだ!」みたいな。それもう最高だなって思って。
──アニソンといえばスターチャイルドですからね。
老舗から出せるのは、このコ(曲)たちにとって最高ですよね(笑)。
CD収録曲
- 「DISCOTHEQUE」(“ロザリオとバンパイア”)水樹奈々 Produced by 田中ユウスケ
- 「BELIEVE」(“ONE PIECE”)Folder 5 Produced by THE LOWBROWS
- 「TOUGH BOY」(“北斗の拳 2”)TOM★CAT Produced by the telephones
- 「wind」(“NARUTO –ナルト–”)Akeboshi Produced by The Shanghai Restoration Project
- 「バナナの涙」(“ハイスクール!奇面組”)うしろゆびさされ組 Produced by 田中ユウスケ
- 「もってけ!セーラーふく」(“らき☆すた”)泉こなた(平野綾)、柊かがみ(加藤英美里)、柊つかさ(福原香織)、高良みゆき(遠藤綾)Produced by 2 ANIMEny DJs (ミト from クラムボン&牛尾憲輔 a.k.a. agraph from LAMA)
- 「Still Love Her(失われた風景)」(“CITY HUNTER 2”)TM NETWORK Produced by 小室哲哉
- 「VOLEVO UN GATTO NERO」(“ノラゲキ!”)Produced by 中田ヤスタカ(capsule)
- 「ルージュの伝言」(“魔女の宅急便”)荒井由実 Produced by 小西康陽
- [ボーナストラック]
「Comment te dire adieu」Françoise Hardy Produced by 曽我部恵一
MEG(めぐ)
2002年7月にシングル「スキャンティブルース」でメジャーデビュー。2007年からは中田ヤスタカ(capsule)をプロデューサーに迎えて音楽制作を行い、アルバム「BEAM」「STEP」「BEAUTIFUL」はiTunes Store総合アルバムチャート連続1位を獲得する。多くのファンの支持を集める中、2010年9月にリリースしたベストアルバム「BEST FLIGHT」と、同年10月のライブを最後に国内での音楽活動を休止。その後は「JAPAN EXPO Paris」に出演するなどフランスを中心に活躍した。2012年より国内での活動を再開し、4月25日にコンセプトアルバム「LA JAPONAISE」をリリースしたばかり。6月23日には、東京・SHIBUYA-AXにてスペシャルライブパーティを開催する。音楽以外にもファッションブランド「CAROLINA GLASER」のメインデザイナー、コスメブランド「baw」のディレクターを務め、モデルとしても多くの雑誌の表紙を飾るなど、東京カルチャーの代表的なファッションアイコンとして多方面に活躍中。