ナタリー PowerPush - Mayumi Morinaga
交通事故&借金生活からたまアリのステージへ躍進!波瀾万丈の歌姫が半生を告白
「歌スタ!!」出演で地元の人々は「浜崎あゆみみたいになれるんですよね」
──ひと口に「いろいろ」というには、あまりにもいろいろなことがあったのち(笑)、「歌スタ!!」の審査員だったDJ UTOさんに見出されるわけですよね。金銭的にも肉体的にもキツい目に遭って、一時は夢を諦めていたのに、オーディション番組に応募してみようと思ったのはなぜ?
Morinaga これがなぜか母親なんですよ。正直な話、私は番組のことを知らなかったんですね。放送時間は借金返済のために働いていたので(笑)。ただ、母親は妹と一緒に毎週「歌スタ!!」を見ていたみたいで、ある日夜中の2時くらいに家に帰ったら「あんた、出てみたら受かるんじゃない?」って言い出して。
UTO 多分、娘のことがあまりに不憫だったんですよ(笑)。
Morinaga そうかも(笑)。それまではずっと「あんた、歌手になるとか言ってるけどバカじゃないの」みたいな感じだったのに、突然、そんなことを言い出したので。ただ、こっちは単純に真に受けて「えっ、受けていいの!?」って、速攻で「歌スタ!!」のオーディションの対象になっているカラオケボックスに行って500円払って応募したんですよ(「歌スタ!!」の1次審査は、番組スポンサーである第一興商のカラオケ機「DAMステーション」で撮影した歌唱映像を投稿してエントリーするシステムを採用していた)。そうしたら1カ月後くらいに「1次審査通りましたよ」って連絡がありました。
──そして、あれよあれよという間にデビューに至るって感じですか?
Morinaga 確かに最終のテレビ審査までの8カ月くらいは順調に1つずつ勝ち上がってはいたものの、年齢が年齢だったので、不安はありましたね。20歳の頃から周りには「モー娘。があんなに若いのに、あんたなんてもうムリだよ」なんて言われてましたし。田舎だともうみんな結婚してる年齢だし、私も「これでダメだったら、誰かいい人を見つけて結婚しよう!」みたいな決意はありました(笑)。
UTO 確かに「歌スタ!!」のほかの審査員の方が評価するのは中学生や高校生の子が中心でしたよね。ただ、僕はもともとトランスのDJやトラックメーカーだったこともあって年齢は気にしてなくて。シンガーがアー写を撮ったりする文化があんまりなくて、声さえ良ければ売れるって世界なので「○○歳だからダメ」みたいな考え方はなかったんですよ。
Morinaga 「歌スタ!!」のプロデューサーさんにも「年齢なんて関係ないよ」って言っていただけて、それですごく救われた部分もあったんですけど、それでも、UTOさんに曲を作っていただけることが決まってからも、最初のシングルまで1年くらいかかりましたから。本当に気が気じゃなかったんですよ。
UTO それは僕の不徳のいたすところで、それまでいわゆるJ-POPを作ったことがなかったので、トラックの制作に時間がかかっちゃったんですよ。Morinagaさんのご家族や地元の方の期待がすごく高かったっていうのもありましたし。「メジャーデビューってことは浜崎あゆみみたいになれるんですよね」って感じだったので「成功しないと僕は殺されるに違いない」って、その間、必死でJ-POPの作り方を研究してました(笑)。
Morinaga 確かに佐賀出身で歌手デビューした方ってそんなにいないから、結構珍しがられてはいましたね。「歌スタ!!」放送後に市長さんにご挨拶させていただいたり「市全体で盛り上がろう」みたいになってたし。よく「Mステ観るからね」なんて言われたりもしましたし(笑)。
ラジカセを担いで飛行機に乗り、ドイツでストリートライブ
──UTOさんがJ-POP研究に勤しんでいる間、Morinagaさんは何をなさってたんですか?
Morinaga デビューが決まる前からなんですけど、派遣で短期バイトをしつつ、地元のミュージシャンの方と一緒に音楽活動をしてました。地域の夏祭りとか、地元企業のイベントとか、クラブイベントやカフェで歌ってましたね。あと、一瞬だけですけど、地元の男友達とバンドを組んでみたり。
──当時やっていた音楽のジャンルは?
Morinaga 地元のミュージシャンの方とはソウルやR&Bで、男友達とはギターロックですね。聴いていたのもFPMや、池田正典さんの「SPINOUT」シリーズでしたし。あとはバンドをやってた男友達の影響でTHE MUSICとかBLOC PARTYとかOASISだったり。
──デビュー前からUTOさんの世界というか、クラブミュージックに対する理解や造詣はあったわけですね。
Morinaga でも、トランスを聴いたことはなかったんですよ。初めてちゃんと聴いたのは、UTOさんにいただいた「MONEY NO TRANCE MIXED BY UTO」(DJ UTOは日本テレビ系「マネーの虎」に出演したのをきっかけに、EXIT TUNESの前身・クエイクレコードを設立。「MONEY NO~」は同番組のオフィシャルCD)っていうくらい知らない世界でした。ただ、レコーディングやPV撮影のために上京するときには必ず聴いていたので、今も私の中ではトランスは東京のBGM、カッコいい音楽なんですよ。
──そして、1stシングルのリリースは2007年。デビューしたときの心境は?
Morinaga 夢いっぱいでしたね。海外での活動にも憧れがあったので、ヨーロッパでも活動しているUTOさんがプロデューサーだし「これはヤバいぞ!」って。実際、私自身が海外に行く話も聞いていたので、ホント夢が止まりませんでした。
──でも、プロフィールを拝見すると、その海外での活動ってかなり「電波少年」的ですよね?
Morinaga 確かに「電波少年」っぽいかも(笑)。単2電池8本くらいで動くラジカセを担いで飛行機に乗って、ドイツ・ハンブルグのSATURNっていう電気屋さんの前でそのラジカセをバックに歌ってましたから。みんなクスクス笑ってるし、私が歌ってる目の前をわざとカツッカツッって通り過ぎていく人はいるし、移動中、ラジカセを何度もぶつけていたらしく、ホテルのシャワールームでアザだらけになった太ももを見て「呪われた!」ってビックリさせられるし。路上ライブを始めたばっかりの頃は「私、何してるんだろう?」と思ってはいましたね。
UTO これもDJ的な発想なのかもしれないんですけど、どんな現場でもヒョイっと歌える人にしたかったんですよ。うまいDJって、どんな国のどんなハコでも、なんならターンテーブルが壊れていても踊らせることができる。J-POPとはいえ、僕がプロデュースする以上、ダンスミュージック寄りにはなるわけですから、そんなDJの歌手版になってほしかったんです。どんな街のどんなお客さん相手でも踊らせることができる人に。
Morinaga 実際、回数を重ねてくと、人が集まってくるようになったし「いいぞー!」なんて歓声ももらえるようになりましたしね。デビューシングルの「ONE MILLION MILES」のPVにも入ってるんですけど、小学生にサイン責めにあったり、酔っ払いのおじさんに「お前はボックスを作って、マイクの前に置いておけ! きっとみんながお金を入れてくれるから」って絡まれ、……いや、ありがたいアドバイスをいただいたりもしましたし(笑)。
UTO あと、ドイツのTUNNEL RECORDSっていうレーベルが、ハンブルグのトンネルを借り切って開いたTUNNEL RAVEっていうパーティでも歌いましたしね。
Morinaga そこで3000人の言葉の通じないお客さんたちが盛り上がってくれているのを見て、弱っちい私が勝手に作っていた壁が少しずつ崩れた気はしています。
ニューアルバム「Glitter / 神巫詞」」/ 2012年6月6日発売 EXIT TUNES
収録曲
- Glitter (Starving Trancer Remix) feat.Another Infinity
※初回限定盤では1曲目、通常盤では10曲目に収録 - dreamin' feat.Ryu☆
- STARS(Ryu☆Remix RRver.) feat.Another Infinity [REFLEC BEAT limelight]
- Follow Tomorrow (for future mix rearrange ver) / HHH×MM×ST [beatmaniaIIDX 19 Lincle]
- Mermaid girl (Extended RRver.) / Cream puff [beatmaniaⅡDX 18 Resort Anthem]
- XANADU OF TWO feat.T.Kakuta With Starving Trancer -BEYOND THE ETERNAL XANADU MIX-beatmania IIDX 18 Resort Anthem]
- 朧 / HHH×MM×ST [pop'n music 20 fantasia]
- 夢現 feat.Another Infinity [jubeat plus]
- 響音-kotone- feat.Another Infinity
- 神巫詞 feat.164
※初回限定盤では10曲目、通常盤では1曲目に収録 - Delta feat.40mP
- Love Material feat.Another Infinity
- SW feat.Starving Trancer
- Don't be afraid feat.Starving Trancer
- ずっとみつめていて feat.DJ UTO vs. Starving Trancer
- ONE MILLION MILES feat.DJ UTO
- NO CHALLENGE, NO SUCCESS(MK Remix)
- Caramel Sugar feat.Another Infinity
初回限定盤 DVD収録内容
- 「Glitter(Starving Trancer Remix) feat.Another Infinity」PV
- テレビアニメ「FAIRY TAIL」ノンテロップED映像
- 「神巫詞」フルアニメーションPV
- 「Don't be afraid feat.Starving Trancer」PV
- 「天ノ弱 feat.164」PV
- 「ビフォーアフター feat.164」PV
- 「Delta feat.40mP」PV
- 「MY BABE BEE feat.Ryu☆」PV
- 「シリョクケンサ feat.40mP」PV
- 「ニセモノトレジャー feat.糞田舎P」PV
- 「砂漠の蝶 feat.monaca:factory」PV
- 「ONE MILLION MILES feat.DJ UTO」PV
Mayumi Morinaga(まゆみもりなが)
佐賀県出身のダンスミュージック系シンガーソングライター。2006年に日本テレビ系オーディション番組「歌スタ!!」に出演したことをきっかけに、翌2007年にシングル「ONE MILLION MILES」でデビューした。2008年にはラジカセ1台を持って世界各国で路上ライブを敢行し、カバーコンピ「パギャル! トランス」にてマンガ家の浜田ブリトニーとコラボレートした「NIGHT OF FIRE / 森永真由美 feat. 浜田ブリトニー」を発表。Cream puffのmoimoi名義で音楽アーケードゲーム「beatmania IIDX」に楽曲を提供するほか、MAKI、PRIMなどさまざまな名義で精力的に活動している。2012年6月にはテレビ東京系アニメ「FAIRY TAIL」のエンディングテーマ「Glitter」などを収録した1stアルバム「Glitter / 神巫詞」をリリースした。