音楽ナタリー Power Push - May'n
“声の力”と歩んだ10年
今年デビュー10周年を迎えたMay'nが、8月26日に初のベストアルバム「POWERS OF VOICE」を発表し、同日に東京・日本武道館にて同タイトルを冠した10周年記念ライブ「May'n 10th Anniversary Special Concert at Budokan『POWERS OF VOICE』」を行う。
昨年より全国47都道府県と海外数カ所を回るライブツアー「May'n Road to 10th Anniversary Japan & World Tour 2014-2015『dots and lines』」、続けてアコースティックツアー「May'n Road to 10th Anniversary Acoustic Tour 2015『Hang jam vol.2』」と10周年に向けて弾みを付けてきたMay'nだったが、今年の5月、喉の治療のため活動を休止。10周年の記念日である6月1日に予定していたアコースティックツアー最終公演も中止となった。現在はすっかり快復し、復帰戦の場となった日本武道館に向けて準備を整えているMay'n。音楽ナタリー4度目の登場となる今回のインタビューでは、およそ2カ月におよんだ休止中の出来事やベストアルバム「POWERS OF VOICE」に込められた思い、武道館公演への意気込みを語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 佐藤類
突然の活動休止とその胸中
──ベストアルバム「POWERS OF VOICE」とこれにまつわるデビュー10周年についていろいろと伺いたいのですが、まずはどうしても避けて通れない、活動休止期間の話を聞かせてください。
そうですね。お騒がせしまして……ご心配おかけしました。
──10周年に向けてのツアーが休止を余儀なくされ、おそらくどんな感情よりもまず「悔しい」という気持ちが先立ったんじゃないかと思うのですが。
本当にとにかく悔しかったです。ツアー中だったので「まだ歌えます!」とスタッフさんには何度もお話しましたし、なんで今こうなっちゃったんだろうという情けなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。10周年に向けてのカウントダウンツアーで、最終公演を10周年の記念日(2015年6月1日、神奈川・大さん橋ホールでファンクラブ会員限定公演を行う予定だった)に当てていたので……。ツアーはアコースティック編成で回っていて、自分でもすごくやりがいがあったし、自信を持って皆さんにお届けすることができていたツアーだったんです。だからこそ「みんなにもっと届けたいのに」という気持ちが強くて。
──きっとMay'nさんは性分的に、多少ボロボロになってもステージには立つという判断をするタイプだろうと思ってたんですよ。そのMay'nさんが休止するということは、よほどのことなのだろうなと。
スタッフさんと、とことん話し合った末の判断でした。喉の問題は以前から抱えてたのですが、ステージに立つと自分でもびっくりするようなパワーが湧いてくるんです。アコースティックツアーでも自分の中では「今日これだけ歌えたなら、次はもっと歌える」という自信をみんなからもらっていたんですけど、それってプロとしてはどうなんだろう?ということに初めて気付かされたというか。みんながくれるパワーと、みんなに会いたいという気持ちでしか今はステージに立てていないんだなと気付いたときに、ちゃんと歌える声を取り戻さなくちゃって。
──ファンが与えてくれるパワーも含めたコンディションとしては十分に続行可能だとしても、プロとしてそれを前提にしてはいけないと。
はい。今でも正直、最後まで歌いたかったという悔しい気持ちはあるのですが、今後活動を重ねてく先で「あのときの経験はムダじゃなかった」って思えるように、ここからさらにがんばらないといけないなと思っています。
声が出せなくなることで初めて歌うことへの憧れを感じた
──では実際に活動を休止していた2カ月あまりの時間はどんなふうでしたか? 今すぐにでも歌いたい人が、声を出さずに静かに過ごす時間というのは。
日常的に声を出すことも禁止されていた3週間ぐらいは名古屋の実家に帰っていて……もちろん地元は好きなのですが、やっぱり私は夢を叶えるために東京に出たいという気持ちで上京したので、早く歌いたい、早く仕事がしたい、早く東京に戻りたいという気持ちで3週間ずっと過ごしていました。
──きっかけはともあれ、10年間ほとんど休みなく突っ走ってきた人が不意にゆっくり過ごす時間を手に入れたことは、プラスの要素もあったのかなと思ったんですけど、そんなことはなく。
全然ですね、私は。ゆっくりしていても落ち着かなくて、結局毎日体を動かしていましたし。声をまったく出せない期間はジムにも行けなかったので、ひたすら近所をランニングしてました。ちょっと声が出せるようになってからはほぼ毎日ジムに通って。これまでだと何日かゆっくりできる時間があったら作詞作曲をしたりしてましたけど、声が出せないと鼻歌でメロディを奏でることすらできないんです。作曲しているときに限らず普段からよく歌っているし、小さな頃から歌うことが当たり前の生活を送っていたので、声が出せなくなることで初めて歌うことへの憧れを感じたというか。とにかく早く歌いたい!と考えて過ごした3週間でした。
──なるほど。ぼんやりする時間も悪くないなーみたいな気持ちはまったく?
はい。しいて言うなら、朝のスーパーに行けたことがうれしかったぐらい(笑)。いつもは仕事終わりにしかスーパーに寄ることができないけど、朝市に行ってみたりして「こんなに安いんだ! 知らなかった!」って(笑)。それ以外は本当になくて、早く仕事に戻りたい、歌いたいって毎日思ってました。
──完全に性分ですね。休みの日でもじっとしていられないタイプ。
そうですね。普段から休みの日に1日中家にいるなんてめったにないので。でも今回の1件を通して初めて、私も自分自身にもっと優しくならなくちゃいけないんだなって思いました。体力もあるほうだし、喉も本来強いほうなんですよ。どこか自分の体をロボットぐらいに思っていて(笑)。でもそれって単に、気持ちが勝っていたからそうやって過ごせていただけで、ちゃんと自分の体と向き合わなくちゃいけないなって思いました。
──新しい自分が発見できる大きな変化かもしれないですね。
はい。これまでは自分に厳しくするのが当たり前だと思っていたけど、少し優しくなることでいい方向に作用することもあるんだろうなって。それに今回の治療を受けて出会った先生が、いろいろと今まで知らなかった喉のことを教えてくれたので、ツアー中の過ごし方なども見直すことができたかなと思います。信頼できる先生に出会えたことは大きかったですね。
次のページ » リリース順に並べた曲順へのこだわり
- ベストアルバム「POWERS OF VOICE」 / 2015年8月26日発売 / FlyingDog
- 初回限定盤A [CD2枚組+Blu-ray] / 5400円 / VTZL-110
- 初回限定盤B [CD3枚組] / 4320円 / VTZL-111
- 通常盤 [CD2枚組] / 3240円 / VTCL-60410~1
CD収録曲
DISC 1
- 射手座☆午後九時Don't be late
- ダイアモンド クレバス
- ノーザンクロス
- May'n☆Space
- キミシニタモウコトナカレ
- Ready Go!
- pink monsoon
- ユニバーサル・バニー
- Grand Piano
- my teens, my tears
- 愛は降る星のごとく
- シンジテミル
- Deep Breathing
DISC 2
- Scarlet Ballet
- Brain Diver
- もしも君が願うのなら
- Chase the world
- アオゾラ
- Mr. Super Future Star
- HEAT of the moment
- Run Real Run
- ViViD
- 今日に恋色
- Lose My Illusions
- Re:REMEMBER
<Bonus Track ~May'n self-cover>
- Crazy Crazy Crazy -May'n ver.-
- Sympathy -May'n ver.-
- Fallin'in or Not -May'n ver.-
DISC 3「May'n Selection Special CD」
(※初回限定盤Bのみ同梱)
- ROCK YOUR BEATS
- Get Ready
- 誰がために
- standing bird
- Swan
- Phonic Nation
- ユズレナイ想ヒ
- BLUE
- リーベ~幻の光
- WHY?
- わたしのしるし
- WE ARE
Blu-ray DISC「May'n MUSIC CLIPS」収録内容
(※初回限定盤Aのみ同梱)
- May'n☆Space
- キミシニタモウコトナカレ
- Ready Go!
- シンジテミル
- Deep Breathing
- Scarlet Ballet
- Brain Diver
- もしも君が願うのなら
- Chase the world
- Mr.Super Future Star
- HEAT of the moment
- Run Real Run
- ViViD
- 今日に恋色
- Lose My Illusions
- Re:REMEMBER
- 10周年記念ライブ
May'n 10th Anniversary
Special Concert at Budokan
「POWERS OF VOICE」 - 2015年8月26日(水)東京都 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
料金:7000円
May'n(メイン)
1989年10月21日、愛知県名古屋市生まれ。幼い頃から歌手を目指し、中学生のときに「ホリプロタレントスカウトキャラバン」のファイナリストに残りデビューのきっかけをつかむ。2008年に本名から「May'n」へと改名し、同年4月より放送されたアニメ「マクロスF」で作中に登場する歌姫シェリル・ノームの歌声を担当。「シェリル・ノーム starring May'n」名義によるシングル「ダイアモンド クレバス / 射手座☆午後九時 Don't be late」が大ヒットを記録した。2010年1月には初となる日本武道館単独コンサートを開催。同年3月には初のアジアツアーを大成功に収めた。2014年2月からは2015年のデビュー10周年に向けて世界規模のツアー「May'n Road to 10th Anniversary Japan & World Tour 2014-2015『dots and lines』」を行い、日本では本人の念願だった全国47都道府県でのライブを完遂した。2015年8月に10周年記念ベスト「POWERS OF VOICE」を発表し、同タイトルの10周年記念公演「May'n 10th Anniversary Special Concert at Budokan『POWERS OF VOICE』」を東京・日本武道館で開催する。