ナタリー PowerPush - May J.
バラエティ番組で脚光浴びた歌唱力 その根源に迫る
歌と表現、両方できたら強いなって思った
──番組に出ると決まって、カラオケ対決企画の内容を聞いたときはどう思いました?
まずうれしかったです。実はあの番組で歌わさせてもらってる曲って、聴きなじみのない曲だったり、自分があんまり歌ったことのない曲もありました。でも、それに挑戦できる機会というのもあるし、たくさんの方が観ている番組で自分の歌声を聴いていただける、すごくいいチャンスだなって感じてたんですね。なので、出ることに対してはすごくポジティブだったし、プロとしてどんな曲でもしっかりと気持ちを込めて歌いたいなと思っていましたね。
──普段プロの歌手は表現も含めてパフォーマンスしているのに、番組ではテクニック面をすごくフィーチャーされて、ただ“歌のうまいキレイな人”と見られるかもしれない。それに抵抗はありませんでしたか?
でも、両方できたら強いなって思ったんですよ。うまく歌うっていうことと、うまく表現すること。カラオケだけどしっかりと気持ちを込めて歌うっていうのはプロにしかできないことで、ほかの歌うま芸人さんとか歌うまキッズとは違うところだと思うんです。だからその両方を出すために、毎回カバーする曲の歌詞をしっかりと読んで、自分の過去のことを思い返したりして、この部分はこういうふうに歌おうって全部シミュレーションしてから歌っていました。
──じゃあ音源制作と同じ気持ちで?
そうです。1曲1曲、レコーディングをするような感じでしたね。
──音程や歌い回しの技がリアルタイムで細かく表示されることはプレッシャーになりませんでした?
もう、プロとしては当たり前のことだと思ってるので別になんとも思いませんでした。音程がすべてではないんですけど、そこができるのは最低限だと思うんですね。それよりも、人に思いを伝えるにはどういうふうにこの曲を歌ったらいいか……例えばここでフェイクを足して、ここでピークを持っていくとか、そういうことを考えてました。
人生そのものが歌
──May J.さんの歌唱力が形成されたルーツを伺っていいですか。
3歳の頃からもう歌手になりたいと思っていました。父親が音楽好きで、よく家で音楽を聴いたり、ピアノを弾いたり、バイオリンを弾いたりしてましたし、自分も好きなディズニー映画を観ながら曲にあわせて歌ったりして、自然と音楽が好きになったんです。それから8歳のときに本格的に歌を習いたいと思って、基礎といったらその当時の自分にとってはオペラだったので、オペラを学び始めました。
──オペラが基礎だと思ったのはなぜ?
しっかりとお腹から声を出すっていう腹式呼吸が歌の基礎で、できないといけないと思ったので。それにはやっぱりオペラから学ぶべきなんじゃないかなと感じたんですよね。
──それで先ほど「ビブラートを喉からではなくお腹からかける」とおっしゃってたんですね。
はい。でも、自分の好きなジャンルはオペラではなくて、やっぱりポップスやR&Bだったので、14歳のときにオーディションを受けて、合格して。そのあとはボイストレーナーの方に見ていただいて、何年もずーっと通ってましたね。常にレッスンしてました。
──自分が“歌が大好きな女の子”から“プロシンガー”に変わったのは、いつ頃だと思いますか?
うーん、きっかけがないんです。本当に歌のことしか考えない子で、学校が終わったらすぐに「レッスンに行かなきゃ、将来のために」ってずっと思っていたので(笑)、自然とプロになる心構えができていったと思うんですよね。
──常に歌がそばにある人生なんですね。
ホント自分のすべてです。人生そのものが歌で、いつも歌とともに成長していきたいです。歌ってその人そのものが素直に出てくるものだと思うので、いろんな経験を重ねて、歌ににじみ出たらいいなと思っていて。訓練ももちろん大切なんですけど、それ以上に人生の経験がすごく大切だなと。例えば、今は広い意味での愛の歌を歌ってるんですけど、10代の頃だったらきっと今歌っているようなものは歌えなかった。今は25歳だから歌える歌を歌ってますけど、もしこれから結婚して家族が増えたら、そのときにしか歌えない歌っていうのができると思うんですよ。それがすごく楽しみです。
──幼少期からのレッスンの積み重ねで歌唱力が培われたということはわかりました。一方、オリジナルの表現はどういうふうに磨いていったんですか?
表現は、デビューしてから歌詞を書いて培った部分ですね。歌詞を書くときに、今までの自分を見つめ直して、どんなことが今の自分に影響したかとか、認めたくない自分をも吐き出すことで、もっと自分を知ることができる。そこで初めてリスナーの方とつながることができて、豊かな感情表現になっていくのかなって。あとは経験も大きいです。いろんな先輩の方に出会って、自分もこういうふうに歌いたいとか、こんな深い愛を歌いたいっていう目標をもらったりしたので。まあ、表現は常に成長していかなきゃいけない部分ですね。完璧っていうのはないと思います。
──お話を聞いていて、May J.さんは持っている意識がすごく高いし、それに対する努力も常にされてるんだなあと感じました。個人的には、個性豊かなグループアイドルやボーカロイドが隆盛している今の音楽シーンで、ソロのボーカリストが“歌のうまさ”というごくシンプルな観点から注目されていくのは興味深い現象だなと思っていて。
周りにどう思われてるかはわからないんですけど、本来プロになるってことはそれなりの基礎を持っていなきゃいけないと思うんですね。ただ、音楽っていろんな楽しみ方があるから、ある意味誰でもこの世界に入れるというか、そんな時代にはなってるんじゃないかなと思っていて。私の場合は洋楽を聴いて育ってきたんですけど、向こうのアーティストはデビュー前からすごく訓練をして、世に出るときにはもう完成されたスキルを持ってる人がほとんどなんですよね。私はそれが普通だと思っていたので、やっぱり国によって音楽シーンのあり方って違うなあと思います。
- ミニアルバム「Love Ballad」/ 2013年10月23日発売 / rhythm zone
- CD+DVD 3360円 / RZCD-59423/B
- CD 1890円 / RZCD-59424
CD収録曲
- Lovin' you
- きみの唄
- Eternally -Wedding ver.-
- Shine Bright -Love Ballad ver.-
- 泣いていいよ
-Bonus Tracks-
- 涙そうそう
- I Believe [Japanese Version] feat. V.I(from BIGBANG)
CD+DVD盤DVD収録内容
Music Video
- Lovin' you
- きみの唄
- Eternally
May J. TOUR 2013 -7 Years Collection- 2013.4.26 shibuya O-EAST
- Garden(2BEDROOM PROGRESSIVE ANTHEM)
- DO tha' DO tha'
- HERE WE GO
- No No No
- Rewind
- FREEDOM
- 夜空の雪
- -Acoustic Medley-(Dear...、旅立つ君に、あの日があるから、TSUBASA)
- Sing for you / May J.×MAY'S
- ハナミズキ
- 白い雲のように with クリス・ハート
- A Whole New World with クリス・ハート
- Eternally
- Be mine ~君が好きだよ~
- Shiny Sky
- 風になりたい with Vimclip
- Beautiful Days
- RAINBOW
- Garden
-Encore-
- Precious
- ありがとう
May J.(めいじぇい)
1988年生まれの女性シンガー。日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち多彩な言語を操るマルチリンガル。幼少期よりダンス、ピアノの弾き語りやオペラを学び、ソングライティング、アパレルブランドのカタログモデルもこなす。シンガーとしては2006年にミニアルバム「ALL MY GIRLS」でデビュー。さまざまなアーティストとのコラボレーションを重ねて知名度を高めていき、2009年にSugar Soul feat. Kenjiの名曲「Garden」をカバーし話題を集める。2012年からバラエティ番組のカラオケ企画でその歌唱力が話題となり、2013年6月にリリースしたカバーアルバム「Summer Ballad Covers」がオリコン週間ランキングで5週連続トップ10入りを記録した。同年10月にはオリジナルバラードアルバム「Love Ballad」を発表する。