ナタリー PowerPush - May J.

バラエティ番組で脚光浴びた歌唱力 その根源に迫る

カラオケ対決をするテレビ番組で連勝記録を打ち立て、一躍注目を浴びる存在となったMay J.。今年2月にベストアルバム、6月にカバーアルバムを発表し、ライブイベントにも引っ張りだこ、タイアップも続々決定と、彼女を取り巻く状況は大きく変化しつつある。このタイミングで自身も「勝負」と覚悟して放つのが、オリジナルバラードアルバム「Love Ballad」だ。

今回のインタビューでは、新作やテレビ番組出演にまつわることから、歌唱力が形成されたルーツ、これからのMay J.像まで幅広く話を聞いた。このテキストから、May J.が歌に賭ける強い思いを感じ取ってほしい。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 高田梓

スタートラインに立つことができた

May J.

──今回のインタビューにあたって改めてMay J.さんの活動を見直してみたところ、特に去年から今年にかけて状況がどんどんいいほうに転がってきているんじゃないかなと思いました。ご自身でも、今、自分に追い風が吹いているなとは感じます?

テレビ番組に出させていただいてから、とてもいい方向に向いていると思います。

──状況が変わるきっかけになったのは、やはりテレビ番組に出演し、カラオケ採点対決企画で連勝したことですよね。

そうですね。今までと比べものにならないぐらい反響がすごかったんです。番組で私の歌声というものにフォーカスしてくださって、「May J.のこの曲が好き」じゃなくて「May J.の歌声が好き」っていうふうに言ってくださる方々がすごく増えたんですね。それで自分の歌声を聴いてもらうスタートラインに立つことができたんじゃないかなって思いました。

──番組で披露したカバーが話題となって、今年6月にはカバーアルバム「Summer Ballad Covers」をリリースしました(参照:May J.、ファンのリクエストに応えカバーアルバム発売)。

もともとカバーアルバムを出すつもりはまったくなかったんですけれども、「カバーアルバムを出してほしい」という意見がものすごく多かったんです。今まで6枚のオリジナルアルバムを作ってきた中では、どういうふうに人に伝わっているのかあまり実感がなくて「伝わってくれてたらいいな」と思っていたのに、番組に出てからは「聴きたい」っていう人の声が届くようになった。そうなったのは本当にうれしいことだし、それを無視しちゃいけないなと思って。求められていることにしっかりと応えるのがプロのシンガーだと思うので、カバーアルバムを作ろうと思いました。

──そしてカバーアルバムも好セールスを記録して、よりいい手応えを感じることができました?

はい、たくさんの方に聴いていただけてうれしかったです。で、今度はオリジナルでしっかりと人に伝えたいなと思って。今回の作品は、May J.のオリジナルを初めて聴くっていう人も多いだろうから、その人たちに「カバーだけじゃなくてオリジナルもいいな」って思っていただけるように作りました。なので、勝負ですよね、この「Love Ballad」は。

オリジナルで知っていただくのがすごく大変なことは目の当たりにしてる

──じゃあ「Love Ballad」は、“今聴かれるMay J.のオリジナル作品”ということを最初から意識して、ターゲットや現状を踏まえて作られた作品なんですね。

May J.

はい。番組は小さい子からお父さんお母さん、そしておじいちゃんおばあちゃんまで、ホントに幅広い方々が観ているので、その人たちに歌声が響いてくれたっていうのはやっぱり何か意味があるなと思うんです。なので今回は、そういった年齢層の方々に届けるように工夫をして歌詞を作りましたね。

──曲の方向を“ラブバラード”と限定した意図は?

バラードってやっぱり聴かせる部分が強いし、しっかりとストーリーを伝えなきゃいけないことから、“歌力”を見せるものだと思うので。それから、誰もが経験したことのある恋愛の曲を幅広い年代の方々に伝えたいっていう気持ちもありました。

──カバーアルバムや番組出演によって得たものは、オリジナル作品にも落とし込まれてるんですか?

はい、もちろんです。特に「きみの唄」は、和メロに挑戦したいというところから作り出しました。そのきっかけになったのが「ハナミズキ」です。

──「ハナミズキ」は「仕分け∞」で歌って高評価を獲得し、今年2月発売のベストアルバムで音源化もされましたね(参照:May J.ベスト盤に一青窈「ハナミズキ」カバーも収録)。

あの曲、デビュー当時の自分だったら絶対に歌えない曲だったと思うんですよ。

──というと?

当時私がオリジナルで歌ってたのはR&Bで、「ハナミズキ」はJ-POPの王道らしい歌謡曲。さらに一青窈さんと私は歌唱法が違うと思うんですよ。小さい頃、オペラの西洋的な方法で歌い方の基礎を学んだので、ビブラートをかけるときも普通だったら喉でかけるところを、私はお腹からかけるんです。だから、この曲は好きだけど、歌っても自分の歌声に合うの?っていう心配があったんですよね。

──なるほど。

でも番組で歌ったときにすごく反響があって「CDにしてほしい」といろんな人から言われたんです。自分は見た目も歌声もあまり日本っぽくないし、バックグラウンドも考えて海外らしいもののほうが似合うのかなって思ってたんですけど、意外とこういう和メロのものでもいけるんだなって知ったんですよね。

──現時点で世の中に広く浸透したMay J.さんの作品というと、2009年に発表した「Garden feat. DJ KAORI, Diggy-MO', クレンチ&ブリスタ」と前述の「Summer Ballad Covers」だと思うんですが、どちらもカバーですよね。やはりオリジナル曲で知ってもらいたいという気持ちはある?

やっぱり、オリジナルで知っていただくのがすごく大変だっていうことは目の当たりにしてますし、これからも挑戦していかなきゃいけない課題なんじゃないかなと思ってます。ただ、「Garden」と今回のカバーアルバムは、私の中で意味が違うんですよね。まず「Garden」は曲単体で好きって言ってくれる方が多かった気がして。「曲は好きだけど誰が歌ってるかわからない」っていう人もたぶん多かったと思うんですよ。だけどカバーアルバムでは「May J.の歌うカバーがいい」って言ってくださる方が多くて。だから今度はオリジナルでしっかりと伝えるラブソングを作ったら、たくさんの人に聴いてもらえるんじゃないかなって思ってるんです、今は。まだ結果はわからないですけどそういうスタンスではいますね。

ミニアルバム「Love Ballad」/ 2013年10月23日発売 / rhythm zone
CD+DVD 3360円 / RZCD-59423/B
CD 1890円 / RZCD-59424
CD収録曲
  1. Lovin' you
  2. きみの唄
  3. Eternally -Wedding ver.-
  4. Shine Bright -Love Ballad ver.-
  5. 泣いていいよ
-Bonus Tracks-
  1. 涙そうそう
  2. I Believe [Japanese Version] feat. V.I(from BIGBANG)
CD+DVD盤DVD収録内容
Music Video
  1. Lovin' you
  2. きみの唄
  3. Eternally
May J. TOUR 2013 -7 Years Collection- 2013.4.26 shibuya O-EAST
  1. Garden(2BEDROOM PROGRESSIVE ANTHEM)
  2. DO tha' DO tha'
  3. HERE WE GO
  4. No No No
  5. Rewind
  6. FREEDOM
  7. 夜空の雪
  8. -Acoustic Medley-(Dear...、旅立つ君に、あの日があるから、TSUBASA)
  9. Sing for you / May J.×MAY'S
  10. ハナミズキ
  11. 白い雲のように with クリス・ハート
  12. A Whole New World with クリス・ハート
  13. Eternally
  14. Be mine ~君が好きだよ~
  15. Shiny Sky
  16. 風になりたい with Vimclip
  17. Beautiful Days
  18. RAINBOW
  19. Garden

-Encore-

  1. Precious
  2. ありがとう
May J.(めいじぇい)
May J.

1988年生まれの女性シンガー。日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち多彩な言語を操るマルチリンガル。幼少期よりダンス、ピアノの弾き語りやオペラを学び、ソングライティング、アパレルブランドのカタログモデルもこなす。シンガーとしては2006年にミニアルバム「ALL MY GIRLS」でデビュー。さまざまなアーティストとのコラボレーションを重ねて知名度を高めていき、2009年にSugar Soul feat. Kenjiの名曲「Garden」をカバーし話題を集める。2012年からバラエティ番組のカラオケ企画でその歌唱力が話題となり、2013年6月にリリースしたカバーアルバム「Summer Ballad Covers」がオリコン週間ランキングで5週連続トップ10入りを記録した。同年10月にはオリジナルバラードアルバム「Love Ballad」を発表する。