シリーズ累計40万本以上のヒットを記録しているマキシマム ザ ホルモンのライブ映像作品シリーズ「D対D」シリーズの最新作「Dhurha Vs Dhurha ~ヅラ対ヅラ~」が、今年1月にリリースされた。すでに発売から数カ月が経っているにもかかわらず、ホルモンも多数出演している春フェスシーズンの幕開けとともに再び映像作品のチャートにランクインするなど、異例のロングヒットを記録している。
「Dhurha Vs Dhurha」は、2020年4月のライブ映像を元に6月に配信された“全席・顔面指定席ライブ”「面面面~フメツノフェイス~」や、ホルモンが観客を1組だけ招き個室でライブを披露した「TOKYO NEO SOCIAL DISTANCE~潮吹~」の映像、ミュージックビデオやオフショット、ロケ映像など数多くのコンテンツをBlu-rayとDVDに凝縮させた作品。今回、そのロングヒットの理由を紐解く特別企画としてSNSで人気のインフルエンサーであるロッキン・ライフの中の人(@rockkinlife)、餓鬼Иちょ(@pazu_official)、ドズル(@kurakurachannel)の3人を招いたスペシャル鼎談を実施。ありがちな音楽批評とは異なる彼らならではの視点で、膨大な量のコンテンツが収録された「Dhurha Vs Dhurha ~ヅラ対ヅラ~」の味わい方を語り合ってもらった。
構成 / 倉嶌孝彦インタビュー撮影 / 曽我美芽取材協力 / 五反野 加賀廣
“ニセ亮君”営む腹ペコえこひいき店にて
──本日はSNSで人気のインフルエンサー3人が、さまざまな視点でホルモンの作品のうまみを好き勝手に“ダべりんぐ”する企画ということでお集まりいただきました。まずは皆様、それぞれ自己紹介をお願いします。
ロッキン・ライフの中の人 ロッキン・ライフの中の人と申します。普段は「ロッキン・ライフ」というブログを更新していて、そこで音楽のことをいろいろ書いています。一応、ブログ以外にも外部で書き物をさせていただいたり、プレイリスト作らせてもらったり。それとライブイベントを主催することもあります。
餓鬼Иちょ 餓鬼Иちょ(ガキンチョ)です。基本的にはTwitterでしか活動していなくて、バンド好きの“あるある”をつぶやいたり、自分のオススメバンドの紹介をしたりしてます。もちろん、ホルモンのことも何度かツイートしてます! ただそれぐらいしか活動がないので、お二人よりもカッチリしてないかもしれません(笑)。今日はよろしくお願いします。
ドズル ドズルと申します。僕はYouTubeでゲーム実況をしておりまして、かれこれ7年くらいやっていますが、音楽系のお仕事をいただいたのは初めてなので緊張かつ楽しみにしていました。よろしくお願いします。
──皆さんは腹ペコなんですか?
餓鬼Иちょ 見てください(上着の下に着ていたTシャツを見せる)。
──ホルモンTシャツを仕込んでますね。
餓鬼Иちょ 僕はけっこう腹ペコだと思います。
ロキ中 それで言うと僕は本域の腹ペコじゃないかもしれないです。もちろん作品は好きですしライブはカッコいいと思ってますけど、本域じゃない腹ペコというか(笑)。
──ちょい腹ペコということですね。
餓鬼Иちょ それなら僕も「ちょい腹ペコ」がいい(笑)。
ドズル 僕はもともとロックをそこまで聴いてこなかったんですけど、ホルモンだけは高校の頃から大好きで。ロックバンドはホルモンしか聴かないくらいなんですが、ライブに行ったことがまだなく……。
──ライブはまだ未経験と。餓鬼Иちょさんとロキ中さんは?
餓鬼Иちょ コロナになってからは行ってませんが、ちょいちょい行ってるほうだと思います。でも最後に行ったのは3年前くらいかなあ。
ロキ中 僕の場合、フェスだったりイベントだったりで観てますが、ワンマンはないですね。
餓鬼Иちょ そもそもチケットが当たらないんですよね(笑)。狭いところでしかやらないし。
ドズル 僕、今回お仕事をお受けするときに、ホルモンのスタッフさんにすごい愛を伝えたら、今度ライブに連れて行ってもらえることになりました。
餓鬼Иちょ え、聞いてないですよ!
ドズル だからこの1カ月ずっとワクワクしてて(笑)。
餓鬼Иちょ ずるい! スタッフさん、僕とロキ中さんにはないんですか!
──(笑)。さて、本日の“ダべりんぐ”は腹ペコにお馴染みの“腹ペコえこひいき”加盟店・五反野 加賀廣で行われています。さっそく料理が運ばれてきました。
ドズル ホルモン焼き!? おいしそう!
──ホルモンの作品やグッズに封入されている「腹ペコえこひいきクーポン」を注文時に使用すると、ホルモン焼きもしくはスタミナ焼きがサービスで付いてきます。
ロキ中 おいしいですね。
ドズル 本当においしいです! 今日、腹ペコで来ちゃったんで(笑)。
餓鬼Иちょ 簡単に「腹ペコえこひいきクーポン」の解説をすると、ホルモンのファンが経営していたり、働いたりしているお店を「腹ペコえこひいき店」として認定して、そこにホルモンのファンが「腹ペコえこひいきクーポン」を持っていくと、お店がちょっとしたサービスをしてくれるというものです。お客としてはえこひいき店をえこひいきして選ぶし、店側は腹ペコをえこひいきしてサービスする。店はクーポンを集めるとホルモンから恩返しグッズがもらえるという、ファン同士が“えこひいき”し合う、すごい仕組みなんですよ。さっきスタッフさんに聞いたら全国に500店舗くらいあるみたいで、ホルモンだから実現できる規模ですよね。そして、ここの店主さんが、ちょっと亮君に似てますね(笑)。名前はなんて言うんですか?
店主 ニセ亮です(笑)。
餓鬼Иちょ めちゃくちゃ意識してる(笑)。もう、触れんときましょう(笑)
「乙女組がちゃんと可愛い」
──そろそろ本題に入りましょう。マキシマム ザ ホルモンのライブ映像作品「D対D」シリーズの最新作「Dhurha Vs Dhurha ~ヅラ対ヅラ~」が今年1月にリリースされました。ライブ映像だけではなく、こだわり抜かれたメニュー画面やバラエティに富んだオリジナルコンテンツなど、映像作品であることを最大限利用した今作の魅力を、お三方にはフリップトークで存分に語っていただこうと思います。
ロキ中 では、被る前に先に出しちゃいます(笑)。なんと言ってもハイクオリティな映像演出。
ドズル それは僕も書いています! とにかく映像がカッコいい。
ロキ中 普通のライブ映像って、演奏している姿をいろんなカット割りで収録していると思うんですが、ホルモンの映像作品はそれだけじゃない。至るところに映像のエフェクトを入れたり、全然関係ないアニメーションを途中でぶち込んだりする。そもそもライブとまったく関係ないエピソード、例えば昔の映像を放り込んだりもするし、その作り込みがすごくカッコいい。
──お気に入りの演出ポイントはあります?
ロキ中 ライブ冒頭で亮君がポーズを決めて映るシーンがあって、そこからどんどんグラフィックのエフェクトが展開されていくんです。こんなの最初からぶち込むんだ!?って衝撃がありましたね。軽い気持ちでライブ本編を観ようとしたけど、これは軽い気持ちで観れないなと、その瞬間にちょっと気合いが入りました。
ドズル よく見ると便所サンダルが飛んでたり、しっかり見ないとわからないエフェクトがあるのも面白いですよね。何回観ても楽しめる。しかも、1曲だけ切り取ったら全部ミュージックビデオにできるクオリティみたいな。
ロキ中 そもそものカット割りもカッコいいんですよ。魚眼レンズで撮った映像が入ってたり、フロアにいたら観れないような画角でライブが捉えられていたり、臨場感もすごくある。ホルモンの楽曲のよさが際立っていると思います。
餓鬼Иちょ それと、ちゃんと客席を映してるのがいいですよね。ステージ映像ばっかりのライブDVDもあると思うけど、ホルモンのライブはフロアの盛り上がりも見応えの1つなので。
──餓鬼Иちょさんの考える見どころは?
餓鬼Иちょ “客席を映す”に関連しているんですが、「乙女組がちゃんと可愛い」です。
一同 (笑)。
──ちょっと補足をするとライブ本編に収録されている「面面面~フメツノフェイス~」というライブイベントは“全席・顔面指定席”を謳ったもので、「乙女組」というのはその指定席のカテゴリーの1つ。“ヅラにちょっぴり自信がある女子”がそのカテゴリーに自ら申し込んでライブに参加しています。
餓鬼Иちょ 映像内に映っている女の子たちが普通にかわいいんですよ。最初に映る茶髪ショートの子が特にかわいくて、ライブ映像を見ながらつい探しちゃいました(笑)。ちゃんとかわいい子を選んでチケットを販売するのってすごく難しいと思うし、普通のアーティストだったら絶対できないなと思って。
ロキ中 ファンもそれを受け入れてるのがすごいよね。バンドとファンの関係性があるからこそできる試みだと思う。MCでもヅラをいじったりするんだけど、双方理解があるいじりというか。ホルモンだからできるんだけど、誰も嫌な気持ちにならない愛のある空間で。まあ、お客さんも自分でカテゴリー選んでるわけだけど(笑)。この「面面面」はお客さんも出演者だったと言えるくらいのフィーチャー感があったよね。
ドズル 「乙女組」のほかにも“会社の偉い人風なヅラ”の「上層部」、“オカンヅラ”の「どっぷりおかん」とか、いろんなカテゴリーが用意されていて、それぞれの参加者に用意された「ヅラ エモートスキル」という仕組みも面白かった。その観客のカテゴリーによって持ってきてもいいグッズの指定があるんですけど、つまり、コロナ禍で声が出せない分、それぞれのエモートスキルを使って音を出していいという。例えば「カロリーメイツ」という枠の人たちはポテチを持ってくることが許されていて(笑)。ライブ中、ポテチを振りまくって盛り上がるんです。
餓鬼Иちょ 僕はそれ、フリップに書きました。「エモートスキル ポテチがいい」。普通、フロアにポテチは持ち込めないから、この発想はめちゃくちゃ面白い。「顔だけ意識高い系」のカテゴリーはキーボード持ち込んでカチャカチャやってた。
──マキシマムザ亮君の企画性はすさまじいですよね。
ロキ中 コロナだから工夫しているとかではなくて、もともとコロナ禍になる前からこういうことをしていたバンドなんですよね。今だったら声が出せないとか、いろんな制約があるけど、ホルモンのライブは楽しみ方がいろいろあるからお客さんの満足度も高いと思います。それから、さきほど餓鬼Иちょさんが「乙女組がちゃんと可愛い」と言ってましたが、これってホルモンのファンが多様であること、老若男女幅広く受け入れられているバンドということの証明でもあると思ってます。
餓鬼Иちょ ほかのバンドが真似できないのもすごいよね。唯一無二のエンタメを提供していて、二番煎じも出てこない。似たようなライブをやってるバンドを観たことがない。
あってもなくてもいいようなゲーム
餓鬼Иちょ それと「Dhurha Vs Dhurha ~ヅラ対ヅラ~」は価格が“潮吹き価格”で4029円なんですよね。これ、そもそも安すぎで、逆に僕らがもうちょっと払いたいくらい。8000円ぐらいしてもおかしくないんじゃないかな。
レーベルスタッフ 我々もこの価格では本当は出したくないんです(笑)。
餓鬼Иちょ そうですよね(笑)。語呂合わせをしたいだけで安くしてると思う。
ドズル 4000円台で観ていいボリュームじゃないんですよ。ライブ映像がちゃんと入っているのはもちろん、ほかのコンテンツも「これでもか!」というくらい入ってる。トータル6時間以上ですからね。
ロキ中 僕、「令和感のあるゲームチョイス」と書いたんですが、ホルモンの映像作品にゲームが入ることには、ファンの皆さんも慣れてきたと思うんですよ。今回はYouTubeの広告とか、なんかどこかで見たことあるよな……というアプリテイストの“あってもなくてもいいようなゲーム”が2つ入っていて、そのチョイスとセンスが抜群だなと思いました。
ドズル あのしょうもなさが面白い(笑)。
ロキ中 ゲームを作るのにもお金がかかるから、4029円にしたいならカットしたほうがいい(笑)。
餓鬼Иちょ ゲーム実況をしているドズルさんから見て、あのゲームはどうですか?
ドズル ニヤニヤしちゃうゲームでしたね(笑)。僕は隠し要素を観るためのワクワク感がけっこう好きで。今回の作品も1枚のディスクだけで完結しなくて、連動したマンガに描かれているヒントをもとにDISC 1でキーワードを見つけて、DISC 2に替えてからそれを入力しようとするんだけどタイミングをミスるとまたDISC 2を入れ直さなきゃいけなくて……みたいなめんどくさいことをさせられることにワクワクする。昔、攻略本を見て一生懸命ゲームをやってた感覚をすごく思い出したんですよね。前作の「Deka Vs Deka」も相当でしたが(笑)、世の中的にはわかりやすいものが求められてるし、すべてが便利になってるところであえて不便な工程を踏ませるところ、僕は好きです。
餓鬼Иちょ 隠し要素がようやく観れたときは達成感がありますよね。
ドズル 隠しコンテンツの中にさらに隠しコンテンツがあったりするから、本当に気が抜けない。最後までワクワクできた映像作品でした。
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「祟り君」のカバーがいい