桜の花の下でまた会えるその日まで
──そして第3弾としてリリースされる「ハルの花」は、太陽さんが作詞作曲を手がけた曲です。
はい。この曲はタイトル通り春をテーマにしているんですけど、届けたい思いがたくさんあって。今年の春はこれまでと違って、誰も経験したことのない新生活が始まるんじゃないかなと考えたんです。だから、新しいことを始めるときのソワソワした気持ちや不安といった普遍的な心情も描いてはいるけれど、2番などにはコロナ禍の今だからこそ痛感する当たり前の日々の大切さ、みたいな部分も書きました。今は大事な人と直接会いづらい状況で、そこには応援してくださっている皆さんと僕の状況も重なる。ハルの花……桜の花の下でまた会えるその日まで、直接みんなで笑い合える日が来るまで元気でいようという思いを歌っています。「春」「2021年」「コロナ禍」「会えない」……と、いろんなキーワードを集めてこの曲の世界観を作っていきました。
──このタイミングでしか生まれ得なかった曲なんですね。
はい、そうなんです。
──曲全体を通して流れる温かなムードと、穏やかな旋律が印象的な曲ですよね。太陽さんの作曲スタイルが気になったんですが、太陽さんは「曲を作ろう」と机に向かうタイプ? それともふとした瞬間にメロディが浮かぶ感じでしょうか。
突然降ってくるタイプですね。場所もシチュエーションもそのときによって違うので、頭の中にふとメロディが流れたら、もう50メートル走を走るくらいの勢いでスマートフォンを取りに行きます(笑)。今から寝ようというときに思い付いて飛び起きたり……お風呂に入っているときに浮かんで、急いで出るっていうパターンもありました。最近はギターを使った曲作りもしているんですけど、基本はボイスメモに録音した鼻歌。思い付いたメロディをひと欠片ずつ集めて、パズルのように組み上げて曲にしていく感じです。
──作詞の作業についてはどうですか?
歌詞は作曲とは逆で、考える時間を設けますね。すぐにアイデアが浮かぶときもあるんですけど、基本けっこう時間をかけて書いています。
猫、出したかったんです
──「ハルの花」を聴いていて、前作で太陽さんが作曲した「掌」から続く曲としても聴けるなと感じました。「掌」で描く「冬の空」が「ハルの花」では「凍てついた都会の 風の景色が変わる」と春の景色へ移り変わりますし、「掌」は上京の描写が登場しますが、新曲では「都会」での暮らしを切り取っています。
そうですね。すごく意識したわけではなかったけれど、「こんな思いを届けたい」という自分の中の大きなテーマは、確かに「掌」と通ずるものがあると思います。どちらもこれからがんばる人への応援歌という側面があるし、向いている方向は一緒なんだと思います。
──それと、猫が出てくる描写は愛猫家の太陽さんらしい歌詞だなあと。
猫、出したかったんです(笑)。僕にとって「当たり前の日々が幸せだな」と思う瞬間は、猫が出てくる2番のAメロに書きました。家の外に出て仕事場に向かっているときとかに感じることなんですけど、上を向いたり下を向いたり……自分の視界を広げた瞬間に幸せを感じられる。そういうちょっとした幸せが、自分の中で支えになることが多いんです。
──太陽さんは先程「伝えたい思いがたくさんある」とおっしゃっていましたが、それについてもう少し聞いてもいいですか?
みんなに伝えたい思いをサビに全部詰め込んだんです。1サビと3サビでは、今、ライブができないこんな世の中でも、笑い合えて楽しい日々が来るよと希望を歌いたかった。2サビではそれに加えて、人生の節目や卒業をイメージしながら歌詞を書いていきました。“冬”の先には絶対に春が来るよという思いが、伝わってくれたらいいなあと思っています。
──それと、「ハルの花」の「ハル」がカタカナになっているのには何か理由があるんですか?
「春の花」と漢字にしてしまうと、ちょっと堅苦しいかなと思ったんです。もっとフランクに聴きやすい、触れやすい曲にしたかったから。それと、どこかにカタカナが使われている言葉って、温かみや接しやすさが出るなっていう印象があって。なので「ハルの花」にしたんです。
やっぱりライブがしたいです、みんなの前で
──最後に、松尾太陽としてこの先に見えているビジョンや、やりたいことを教えてください。
ソロデビューしてから有観客ライブはまだできてないので、今年はやっぱりライブがしたいです、みんなの前で。今後の具体的な活動は「ハルの花」をリリースしてからしっかりと決めていくと思うけど、僕の中ではもっといろんな楽曲に触れたり、もっといろんな挑戦をしていきたいなと思っているので。皆さんのことは待たせてしまっている状況だけど、もう少し待っていてほしいなと思います。
──以前練習されていると言っていたギターは最近どうですか?
ギターレッスンを受けたり、自主的に弾いたりする時間は維持していますね。「もっとうまくなりたいな」という気持ちが強くて。ライブでもいつか弾き語りを披露できたらいいなと思っています。