松尾太陽が1月から実施していた新曲の3カ月連続リリース企画が、3月17日に完結する。
超特急の活動と並行して、2020年9月にミニアルバム「うたうたい」でソロアーティストとしてデビューした松尾は、1月に全英語詞の「Magic」、2月にはOmoinotakeが楽曲提供した「体温」、3月に自作曲「ハルの花」という3つの新曲を発表。「うたうたい」で見せたものとは異なる表情で、曲ごとに自身の表現の可能性を広げている。
音楽ナタリーでは、「体温」でタッグを組んだ松尾とOmoinotakeにインタビュー。一緒にインタビューを受けるのは初めてだという両者に、お互いの印象や楽曲制作の背景などを語ってもらった。また、特集の後半には松尾が「Magic」「ハルの花」について語る単独インタビューも掲載する。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 笹原清明
松尾太陽×Omoinotake インタビュー
世界って狭いんだなあ
──Omoinotakeが太陽さんに楽曲提供と聞いたとき、真っ先に「チェリまほだ!」と思いました。直接の関わりというわけではないのですが……(2020年放送のドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」、通称「チェリまほ」に超特急タクヤこと草川拓弥が出演。Omoinotakeはオープニングテーマを担当した)。
松尾太陽 そうなんですよね。ドラマは僕も観ていて、初めてオープニングテーマの「産声」を聴いたとき、すぐにスマートフォンでOmoinotakeさんの曲をチェックしたんです。そういう流れもあって、楽曲提供していただけると決まったときは「世界って狭いんだなあ」と思いました。僕は出ていないんですけど(笑)。
藤井レオ(Omoinotake / Vo, Key) ありがとうございます。僕らもドラマはチェックしていたので、草川さんの活躍も観ていましたよ。
福島智朗(Omoinotake / B, Cho) だからまさかこんな機会をいただけるとは、という感じだったよね。
──太陽さんが2月に配信リリースされた「体温」で、2組は初めてコラボされました。まず太陽さんは、Omoinotakeにどういった印象を抱いていましたか?
松尾 すごく独自の道を走っていらっしゃるというか。楽曲にオモタケさんならではの強い色があるなって。僕自身がソロとして新たな一歩を踏み出すとき、自分の色をしっかりと持てたらいいなと考えていたので、「うらやましいな」という憧れもあります。
Omoinotake ありがとうございます!
福島 恐縮っす!(笑)
──Omoinotakeの皆さんは太陽さんについて、どういった印象を?
藤井 まず「うたうたい」を聴かせてもらったのですが、ハイトーンの曲が多いなと。僕らもハイトーンの曲が多いので、自分が歌っているような感じの曲調でも素敵に仕上がるんじゃないかなと考えました。
福島 いろんな方が楽曲提供されていて曲によって表現方法も違ってくるので、歌いこなすのは難しいと思うんですけど、ちゃんと真ん中に太陽さんの声の芯が通っているなとも思ったので、Omoinotakeの色が濃い曲を出してもちゃんと自分の曲として消化してくれるんだろうなとも思ったよね。
冨田洋之進(Omoinotake / Dr, Cho) 僕が受けた第一印象は、すごくツヤがあって太い声だなと。ハイトーンも耳が痛くならない聴きやすさがあって、すっと体に入ってくる声質だなと感じました。少しレオと似ている部分も感じられて、楽曲自体のイメージもすっと湧いてきたんですよ。
藤井 グループ活動とソロ活動をしっかり分けているんだなとも思ったので、ソロとしての太陽さんがより生きるように力添えができたらなと思いました。
松尾 めちゃくちゃうれしいです……。
福島 褒め合い(笑)。
ためらうことなくまっすぐに甘い曲を
──楽曲制作は、どういったところからスタートしたんですか?
藤井 オモタケの曲は詞先と曲先、いろいろあるんですけど、「体温」は曲先でしたね。僕らの中で、この曲のような甘めの歌を曲先で作るのは珍しいんです。
福島 そうだね。
藤井 オモタケの曲だと、どストレートに甘い歌を歌う自信が自分にないというか……ちょっとだけハズしに行きたくなるんですけど、太陽さんが歌うのであれば、どストレートに甘い曲でもいいものになりそうだなと思ったので、ためらうことなくまっすぐに甘い曲を作ろうと思いました。
──Omoinotakeの楽曲はブラックミュージックの要素がベースにありつつ表現の振れ幅が広い印象でしたが、「体温」はド直球のバラードです。それは太陽さんのイメージを加味してのことだったんですね。歌詞についてはいかがですか?
福島 僕は実体験から歌詞を書くことが多くて、この曲も自分の経験から着想してイメージを膨らませているんですけど、僕もレオと同じく「普段レオが歌わないようなフレーズも、太陽さんのフィルターを通せばいけるんじゃないかな」という考えがありました。Dメロの「ひかれあう体温 例えば世界のどこか 君が迷子になったとしても 見つけてみせるから」という部分なんかは、レオが歌うと思ったら書かないですもん。
Omoinotake あはははは(笑)。
藤井 確かにこのDメロは、自分だったら恥ずかしさみたいなものが出ちゃうかもしれないです。
福島 Omoinotakeの曲だと、一貫して主人公のキャラクターがもう少しナイーブというか。そこまで力強くないよなと思うんですけど、そういうキャラ付けのタガが外れた感じでしたね。
松尾 デモを聴かせていただいたとき、今まで自分が歌ったことのないような曲だなと思いましたし、この先音楽活動をしていくにあたって、この曲はずっと歌っていけるなと思いました。そういう楽曲に出会えたのが、何よりうれしかったです。自分のハイトーンを生かしてくれていたり、逆にチャレンジの部分があったり、率直に「早くライブでやりたい!」と思って。それに、今だからこそ響く言葉や世界観もあるなと感じました。
──“今だからこそ響く言葉や世界観”とは?
松尾 「体温」の描写に、今の世界の状況のことも書いていらっしゃるのかなと思ったんです。今は手と手を直接触れて体温を感じることができないから、心の中で相手の体温を感じているような。歌詞を読み込むうちに、主人公と相手の距離感が近付いたり離れたりするのを感じました。
福島 ありがとうございます。メンバーだけで自分たちの曲を作るときって、3人ですでにバンドの世界観を共有しちゃってるから「これはこういう意味で」みたいな意思合わせをすることはないんです。こうして曲を提供することで、曲を解釈していただいて、自分たちのイメージとはまた違った一面が見えてくるのは面白いですね。
次のページ »
固定観念がなくなった瞬間