松岡侑李×尾澤拓実|松岡侑李を知るためのABC

ディレクションに悩まなかった「.C」

──「.A」「.B」「.C」の3作品の制作を経て、尾澤さんが感じる松岡さんが成長したところはどんなところですか?

尾澤 やはり抜群に表現力がアップしました。「.A」のレコーディングのときは、けっこう歌に対してがんばりすぎてしまう感じがあったんですよね。

松岡 自分は今まで“いかさん”として声色を変えながら、聴きどころを作ったり、緩急を付けたりしてたわけなんです。でも松岡侑李は地の声で勝負するアーティストですから、最初は声を変えずに聴きどころを作るのにすごく苦戦して。

尾澤 でも飲み込みも早かったから、すぐに緩急を付けられるようになってたよ。

松岡 実はお芝居のときにいただいたアドバイスが歌にも生きたんです。去年の11月にミュージカルに参加したとき、演出家の方に「何かをしようとしなくていいよ」と言っていただいたことがあって。お芝居をするわけですから、自分はずっと「演じよう」と思って来たんですけど、その演出家さんから「素直な気持ちでセリフを読むことで伝わる物もあるんだ」ということを教えていただいたんです。例えば「.C」の「TEN YEARS AFTER」という曲は、事前に作り上げていった自分の意識を1度すべてリセットして、そのときの感情のままに歌った曲ですね。

尾澤 松岡さんは小細工をしなくてもちゃんと歌に感情が乗せられる才能を持ったボーカリストなんです。それが「.A」「.B」「.C」という3作品を経て、どんどん洗練されていったんだと思います。「TEN YEARS AFTER」のディレクションのときは「こんなに優しい歌に熱い気持ちを乗せられるんだ」って感動しました。

松岡 正直、「TEN YEARS AFTER」という曲がきっかけになって、歌と向かい合う感覚が変わった気がするんです。あれこれ考えずに、感覚的に歌ってみた音源を自分で聴いてみて「あ、自分はこういうふうに歌うことができるんだ」って気付かされたというか。

尾澤 表現の幅がすごく広がったと思います。「.C」のレコーディングではディレクションに悩むことはなかったですね。

「立てようとしなくていい」

尾澤 「.C」の中では、私がレコーディングに立ち会わなかった「零度」という曲がすごく気になってるんです。どういうディレクションがあったんですか?

松岡 「零度」はsui sui duckの渋谷勇太さんに曲を書いてもらったんですけど、尾澤さんとは全然違うディレクションをする方で。「零度」のレコーディングでは「言葉をしっかり伝えないほうが届くような気がするよ」とアドバイスをいただきました。芝居のお仕事も、歌のお仕事も、基本的には「しっかり伝えたほうがいい」と言われることが多いんですけど、このときはまったく逆のことを言われたんです。「そんなに立てようとしなくていい」って。

尾澤 ゆるやかに流れるような曲だから、そのディレクションはすごく適切だと思う。どうやったらこういう曲ができあがったのかすごく気になってたんです。勉強になるなあ。

松岡 1つ気になってたんですけど、尾澤さんに提供していただいた「魂は消えない」という曲、歌詞の1人称が「私」なんですよね。

尾澤 はい。3作品通して雄々しい曲というか、松岡さんが男性目線で引っ張っていく曲が多かったので、ちょっと違う感じの曲も歌ってもらいたいなと思って。

松岡 そうだったんですね。

尾澤 あえて「私」と歌ってもらうことによって、演じてない松岡侑李を表現したかったんです。「私」って男性が使っても女性が使っても美しい言葉だと思いますし。次は松岡さんにもっと女性らしい曲も歌わせてみたいですね。

いかさんは“ホームであり、自由にできる場所”

──4月には松岡侑李として初のワンマンライブが開催されます。カバー曲中心だったいかさんとしてのライブとはまったく違うものになりそうですね。

松岡 これまでオリジナル曲だけのライブはやったことがないし、イメージしたこともなくて。今回はミュージックビデオでダンスに挑戦した曲もありますし、今までのいかさんのライブとはまったく異なる公演になると思います。

尾澤 「.A」「.B」「.C」で15曲もオリジナル曲が増えたからね。

左から松岡侑李、尾澤拓実。

松岡 新曲だらけのライブになることは間違いないので(笑)。まったく新しい形のライブ、たくさんの人に観てもらいたいですね。

──今後、いかさんとしての活動と松岡侑李としての活動はそれぞれどうなるんでしょうか?

松岡 いかさんとしての活動をなくしてしまうわけではなくて、自分の中でホームであり、自由にできる場所として残しておこうと思っています。それに対して松岡侑李は前に進んでいくための名義と言いますか、挑戦的なことをするときは松岡侑李の名前を使って活動していきます。

尾澤 松岡さんに歌ってもらいたい曲のイメージって、まだまだあるんです。また何かお仕事をご一緒できたらうれしいですね。

ライブ情報

松岡侑李 初ワンマンライブ Yuri Matsuoka Release Live 「.A」「.B」「.C」
  • 2019年4月21日(日)東京都 UNIT