2016年6月に自身のメニエール病発症のために活動休止に入ったJELLYFiSH FLOWER'Sのフロントマン・松尾昭彦がircleの仲道良(G)、EGG BRAINの内田雅人(Dr)を迎えて、ソロ名義の再録ベストアルバム「THE BIBLE 1」を完成させた。アルバムにはJELLYFiSH FLOWER'Sの楽曲のほか、彼が2000年から2011年にかけて活動させていたGENERAL HEAD MOUNTAINの楽曲と新曲1曲を加えた全13曲が収録されている。
「もうステージに戻ってくるつもりはなかった」という活動休止期間中の思いや、活動を再開した理由、現バンドの手応えなどについて松尾にじっくりと話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / moco.(kilioffice)
自分が一番昔に引っ張られてる
──2016年6月にJELLYFiSH FLOWER'Sが活動休止をしました。メニエール病の治療をされていたと思いますが、そのほかに何かされていたんでしょうか?
ライブハウス(宮崎・Sound Garage MONSTER)を作ったり、会社を作ったりしてました。
──音楽活動は?
ほとんどやってないに等しいですね。正直、ステージに戻るつもりはあんまりなくて。もともと人前に出るのがすごく苦手なので、音楽は続けるけど人前に出るつもりはもう。でもいろんなきっかけがあって結局……よくも悪くも音楽をやめさせてもらえなかったと言うか。
──ちょっと踏み込んだことを聞かせてください。JELLYFiSH FLOWER'Sは松尾さんのメニエール病発症が活動休止の原因でしたが、本当はそれだけではなかったのでしょうか?
きっかけは僕が病気になったことですけど、たぶんそれ以前にバンドは空中分解してたんですよね。だからまあ、いいタイミングだったんだと思います。
──なぜそれを聞いたかと言うと、JELLYFiSH FLOWER'Sは松尾さんの病気で活動休止してたはずなのに、復帰はJELLYFiSH FLOWER'Sではなくて、松尾さんのソロ名義の、でもバンドという形だったからなんです。
JELLYFiSH FLOWER'Sで復帰するのが筋ですよね。でもJELLYFiSH FLOWER'Sは事実上の解散だったので。別の仕事に就いたヤツもいるし。それは全然悪い意味じゃなくて、すごくいいことだなと思うし、僕にはそれを止める権利もないので。バンドサウンドが好きだからバンドで活動したくて、でももうこれだけバンドを潰してるから、俺にバンドは向かないだろうなと思ってソロ名義に……うわあ、なんかいろいろ思い出してきたな。
──聞かせてください。
JELLYFiSH FLOWER'Sで「ジェリーフィッシュフラワーズII」(2014年5月発売の1stフルアルバム)を作ってるときに、メンバーが脱退するって話になって……結局しなかったんですけど、そのときに(当時所属していたレーベル・THE NINTH APOLLO主宰の渡辺)旭さんに相談したら「まっちゃん1人で『JELLYFiSH FLOWER'S』でもええんちゃう?」って言われたんです。そのときのことがなんとなく頭に残ってて、今回復帰するときも、メンバーは違えどJELLYFiSH FLOWER'Sとして再開しようかなと思ったんですよ。けど、それをやるとGENERAL HEAD MOUNTAINの曲が歌えなくなっちゃうと思って、松尾昭彦名義にしました。
──GENERAL HEAD MOUNTAINの曲は歌いたい?
別に歌う必要はないんですけどね、でも歌いたかった。結局のところ、自分が一番昔に引っ張られてるんですよ、たぶん。
──昔に引っ張られてるとは?
「あの頃に戻りたい」って一番思ってるのが僕なんですよ、きっと。何も怖くなかったって言うか、むちゃくちゃやってOKだった頃。だから「月かなしブルー」(2008年6月にリリースされたGENERAL HEAD MOUNTAINの2ndアルバム)の曲とか歌うと、そのときに戻れるような気がして。自分勝手ですね。
──いやいや。それが「GENERAL HEAD MOUNTAINの曲も歌いたい」という理由なんですね。
そうですね。JELLYFiSH FLOWER'Sの曲にももちろん好きな歌はあるんで、どっちも歌おうと思ったらソロ名義が一番いいなと。
転がるように活動再開へ
──ではJELLYFiSH FLOWER'Sの活動休止から、松尾昭彦名義のバンドとして活動を再開するまでの流れを教えてください。
活動休止してる間に自分で作ったライブハウスのこけら落とし公演に出たのが最初ですね。こけら落とし公演には絶対にSHANKを呼びたくて、対バン相手を考えたときに「いい機会だし自分でやるか」と。その日は地元の友達たちと出る予定だったんですけど、当初予定してたギターのヤツがノロウイルスにかかって、急遽SHANKの(松崎)兵太にやってもらったんですよ。
──そうだったんですね。そのときにライブ再開の手応えを感じたんですか?
いや、「またやるのかな……?」くらい。そしたらずっとお世話になってる九州のイベンターの人が会場にフラッと現れて。JELLYFiSH FLOWER'Sのときは毎年年末に福岡・Queblickでワンマンをやってたので、「今年はやらないの?」って言われたんです。で、「新年でもいいですか?」って言ったら、勝手にワンマンライブが決まって(笑)。そしたら今度は東京のイベンターの人に「東京ではやらないの?」って言われたんで「じゃあやります」と言って、東京のワンマンが決まり……そしたら今後は大阪の渡辺旭さんに「大阪、やらへん?」と言われて大阪のワンマンが決まったと(笑)。
──みんなが松尾さんの活動再開を待ってたんですね。東京でのワンマンライブが決定したときは音楽ナタリーでも紹介させてもらいましたが、そのときに掲載させてもらった松尾さんのコメントに「転がるように転がって、辿り着いたのはやっぱり音楽でした」とありました(参照:「辿り着いたのはやっぱり音楽でした」JFF松尾昭彦、ソロ名義でワンマンライブ)。
転がってるでしょう?(笑) 怒涛の1年でした。
──じゃあ松尾さん的にはJELLYFiSH FLOWER'Sの活動休止からこれまでの怒涛の1年が今回のベストアルバムという形になっている感じですか?
そうですね。でも本当はベスト盤を出すつもりはなかったんですよ。来春に発売予定のミニアルバムがあるんですけど、そっちが先にできていて。でもそれを出す前にベスト盤を出そうという話になったんです。
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今初めて「バンドって楽しいんだな」って思ってる
- 松尾昭彦「THE BIBLE 1」
- 2017年11月22日発売
Wisteria Music Entertainment -
[CD]
2300円 / DDCZ-2175
- 収録曲
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- エンター
- 青
- 紅色
- 緑
- 群青
- 散歩道
- 本当のこと
- ブレーメン
- 午前四時
- 鳥籠
- 深まる日々に、微笑みを。
- 喜びの歌
- 町
公演情報
- 松尾昭彦「THE BIBLE 1」レコ発~東京編~
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2017年12月15日(金)東京都 TSUTAYA O-WEST
出演者
松尾昭彦 / あいくれ(オープニングアクト)
- 松尾昭彦「THE BIBLE 1」レコ発~福岡編~
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2018年1月6日(土)福岡県 Queblick
- 松尾昭彦(マツオアキヒコ)
- 宮崎県出身のシンガーソングライター。2000年から2011年にかけけGENERAL HEAD MOUNTAINのフロントマンとして活躍したのち、2013年からJELLYFiSH FLOWER'Sのフロントマンとして音楽活動を再開するも、2016年6月に自身のメニエール病発症のためにバンドの活動を休止する。2017年よりサポートメンバーと共にライブ活動を再開。11月にソロ名義のベストアルバム「THE BIBLE 1」をリリースした。