ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ
“合唱”から“劇的ロック”へ 解体から生まれた新たなスタイル
摩天楼オペラがニューシングル「隣に座る太陽」をリリースする。昨年12月に発売されたシングル「Orb」に続く今作は、“劇的なロック”をテーマに掲げたアッパーチューン。9月3日に発売を控えたメジャー3rdアルバム「AVALON」への橋渡し的な作品となる、親しみやすいメロディを持つ1曲に仕上がっている。
昨年3月のアルバム「喝采と激情のグロリア」リリース時(参照:摩天楼オペラ「喝采と激情のグロリア」インタビュー)以来となる今回のインタビューでは、“劇的ロック”というテーマを通じてバンドがどこへ進もうとしているのかを、メンバー5人に語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一
完成したスタイルを崩していく作業
──改めて昨年のアルバム「喝采と激情のグロリア」以降の動きについて聞きたいと思います。合唱というテーマで進めてきたプロジェクトが「喝采と激情のグロリア」というアルバムとそれに伴うツアーでひと段落したわけですが、昨年12月のシングル「Orb」の際に「摩天楼オペラとして次はどこへ向かっていこう、何を創造していこう」という話し合いはあったんでしょうか?
悠(Dr) ありましたね。
苑(Vo) 「喝采と激情のグロリア」で摩天楼オペラとして1つ完成したスタイルが作れたので、今度はそれを崩していく作業……今までは「摩天楼オペラの音楽はこういうものだろう」ってメンバーが意識して作ってきた型を一旦なしにして、今までNGにしていたものをOKにしていく、そういう意識の変え方を「Orb」の頃からし始めて。その中から情熱的な曲を作りたいと考えるようになって、「劇的ロック」というキーワードにたどり着いたんです。
──なるほど。「今までNGにしていたものをOKにしていく」と言いましたが、具体的にはどういうことなんですか?
苑 メンバーが5人いるのでやりたいことは5通りあるわけで。それをそのまま1個の器に詰め込んじゃうと、どうにも形にならないんですよね。そこから自分の中でやりたいことと引くところがだんだんわかってきて、5人のバランスが取れて曲が洗練されていくんですけど、今回はそれを無視してみよう、自分のやりたいように曲を作ってみようとしたんです。昔だったら「こういうアレンジだとゴチャッとして、ちょっと忙しく聞こえる」と反省していたことを、改めて反省しないところまで戻して、自分たちが弾きたいように弾いてみたり。
──それって簡単なようですごい難しいことですよね。
苑 そうですね。できあがってしまってるぶん、逆に難しくなってると思います。でも面白かったですよ。マンネリになってた部分っていうのはやっぱりあって、そういうところを一度見つめ直せたかなと思います。
Anzi(G) NG云々の話だと、音だけでなくライブやビジュアル、アートワークに対してもそういう考えになりましたね。ヴィジュアル系という固定観念から、今までの摩天楼オペラだったら黒をイメージすることが多かったんだろうけど、今回はアートディレクターの方から刺激をもらって、衣装にしても今までにはないカラフルなものを着てますし。昔から見てるファンには斬新に映るかもしれないですけど、結局音にしてもビジュアルにしても、ほかの人の意見を取り入れても自分たち自身に「絶対にカッコいいものになる」っていう確固たる自信があるから、ここ最近の活動は面白いですね。
僕らが思っている以上に「この5人が集まれば摩天楼オペラ」
──ほかの皆さんはどうでしょう?
悠 去年の夏、すっごいひさしぶりに5人で飲みに行ったんですよ。そのときは年末にシングルを出すことは決まっていて、どういう曲にするかをそこでいろいろ話し合ったんです。僕はけっこう苑と考えてることが近くて、「喝采と激情のグロリア」よりもうちょっとシンプルで、さらにビッグなコーラスがある曲をやりたいと、漠然と考えてたんですよ。そんなときに「Orb」を初めて聴いて、「次のシングルは絶対にこれしかないでしょ!」と思って。こういう曲が今出せるのはうちぐらいだろうと思っていたし、そこは自信を持って発表できましたね。
彩雨(Key) 「Orb」を出したときはどういう反応があるか楽しみだったんですけど、今までとは違うタイプの曲を出しても「やっぱり摩天楼オペラの曲だね」っていう反応がすごく多くて。それは僕らが思っている以上に、この5人が集まれば摩天楼オペラになるんだということを証明したと思うんです。摩天楼オペラだからこうしなきゃいけないじゃなくて、5人集まれば摩天楼オペラ。そういう発見もありました。
燿(B) ジャンルとか関係なく、聴いた瞬間に「あ、これは摩天楼オペラだね」とわかってもらえるものを目指そうみたいな話はずっとしてたんですけど、特にこの1年はそういう意識がみんなすごく高まってきたと思うんです。そういう意味で「Orb」から今回の「隣に座る太陽」、そして次のアルバムでいい流れを作れたと思うし、どんなに新しいことをしても聴いた瞬間に摩天楼オペラだと認識してもらえるものが作れてると思います。「Orb」はその取っ掛かりとなった1曲なんです。
──実際「Orb」を初めて聴いたとき、それまでのシングルに多かったスピード感のある楽曲とは違って、ミディアムテンポで壮大なスケール感の曲だなと思いました。これまでの楽曲にも壮大なイメージはありましたけど、タイプが違うんですよね。今までにない解放感が備わっていて、ある種の余裕すら感じさせるというか。
苑 まさにそうだと思います。「喝采と激情のグロリア」ではいろんな人が合唱に参加してたんですけど、「Orb」では僕1人の声を重ねることで厚みより奥行きが増したように感じていて。それが壮大さや解放感につながったのかもしれないですね。
次のページ » 初期のガツガツ感を思い出してみたらどうかな?
CD収録曲
- 隣に座る太陽
- メインキャストは考える
DVD収録内容
- 「隣に座る太陽」 MUSIC VIDEO
摩天楼オペラ「AVALON TOUR」
- 2014年9月17日(水)東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2014年9月19日(金)石川県 Kanazawa AZ
- 2014年9月20日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2014年9月23日(火・祝)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2014年9月25日(木)青森県 青森Quarter
- 2014年9月27日(土)岩手県 Club Change WAVE
- 2014年9月28日(日)宮城県 darwin
- 2014年9月30日(火)大阪府 BIGCAT
- 2014年10月2日(木)広島県 ナミキジャンクション
- 2014年10月4日(土)熊本県 DRUM Be-9 V2
- 2014年10月5日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2014年10月7日(火)愛媛県 松山SALONKITTY
- 2014年10月9日(木)兵庫県 神戸VARIT.
- 2014年10月11日(土)京都府 磔磔
- 2014年10月13日(月)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2014年10月18日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
摩天楼オペラ(マテンロウオペラ)
2007年に結成されたロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコン週間ランキング初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。同年後半に「喝采と激情のグロリア」というコンセプトのもとに、「GLORIA」「Innovational Symphonia」という合唱をテーマにしたシングルを連続リリースした。2013年3月にメジャー2ndアルバム「喝采と激情のグロリア」を発売。同年6月にはZepp Tokyoで単独ライブを行った。2014年7月にニューシングル「隣に座る太陽」を発表。9月3日にはメジャー3rdアルバム「AVALON」をリリースし、日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブを含む全国ツアー「AVALON TOUR」を9月から10月にかけて実施する。