ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ
合唱を経てたどり着いた“未来永劫残る栄光
インスト曲はエンディングを盛り上げるために作った
──今回のアルバムではメンバー5人全員が作曲を担当していますが、皆さんの中で曲作りにおいて何か心がけたことはありましたか?
彩雨(Key) 僕が作曲した「悪魔の翼」に関しては、このアルバムじゃなかったらまったく違う仕上がりになってたと思います。1曲目の「-overture-」についても、別のアルバムでオープニングSEを作るとしたらこうはならなかったと思うんです。今回のテーマに沿って合唱を取り入れたことで、今までにない仕上がりになったんじゃないでしょうか。その分、合唱をバンドに取り込んだ上でどうやって生かすかを考えました。
Anzi(G) 自分も彩雨と同じように考えてました。11曲目の「Midnight Fanfare」というインストゥルメンタルの曲は、「GLORIA」と「Innovational Symphonia」、そして「喝采と激情のグロリア」という一連の流れが見えたときに思いついたんです。アルバムラストのタイトルトラックに向かう上で、その曲をより引き立たせるためのインストがあったらアルバムがさらに感動的なものになるんじゃないかなと思って作りました。
──「Midnight Fanfare」が入ることで、アルバムがクライマックスに向かっていく感じが強調されますよね。
Anzi まさにそこを狙いました。ラストナンバーを引き立てる意図で作ったことをメンバーに伝えたら「よさそうだからいいんじゃないの?」と受け入れてくれて。結果としてこの流れには大満足ですね。
──燿さんはシングル「GLORIA」のカップリングとして発表済みの「CAMEL」のほかに、もう1曲「SWORD」を書き下ろしてます。
燿(B) 僕はもともとゲーム音楽がすごく好きなんですけど、RPGでボスキャラと戦ってるような、ゲームの戦闘シーンで流れるような曲を前々からバンドでやってみたかったんです。それとアルバムの流れが大まかに見えてきたときにあんまり速い曲がないなと気づいて、だったらゲーム音楽から影響を受けた曲を1曲入れてみたい、イメージ的にも合うんじゃないかなと思って作ってみました。僕は曲の大本になる骨格部分しか作ってないんですけど、スタジオに入ってみんなで色付けしてアレンジが変わっていって。最終的にはこのアルバムになじみつつすごくいいフックになったと思います。
頭2曲とラスト3曲の曲順は最初に決めた
──このアルバムは曲順がすごく練られてると思うんです。歌詞のストーリー性というよりも曲の流れがすごく気持ちよくて。特に中盤から最後の「喝采と激情のグロリア」までの流れは前作「Justice」とはまったく異なる、新鮮な展開でした。曲順はどのようにして決めたんですか?
苑 今回一番重要視した部分が曲順で、頭2曲とラスト3曲を最初に決めて、残りは5人全員で話し合って決めました。「-overture-」は1曲目にしかなり得ないものですし、その後に続くのは「GLORIA」しかないというのもみんな一緒の意見で。そしてラストの3曲……10曲目「永遠のブルー」から12曲目「喝采と激情のグロリア」までの流れもAnziが言ったように固定の並びにして、そこから3曲目から9曲目までの流れを決めていったんです。
悠 実は「Innovational Symphonia」をどこに置くかで一番悩んで。最終的にこの位置(9曲目)にしたら、よりドラマチックな展開になりました。
──アルバムにはシングル「GLORIA」「Innovational Symphonia」のカップリング曲(「CAMEL」「Freesia」)も含まれていますが、この2曲はアルバムの流れに必要なものだった?
悠 各シングルからカップリング曲を1曲ずつ持ってこようっていう話は以前から決まってたんですが、アルバム用の曲が出揃ったときに「CAMEL」と「Freesia」がいいんじゃないかっていうことになって。そこはすんなりと決まりましたね。「CAMEL」に関しては7曲目の「Merry Drinker」へと続いていく流れが抜群によかったんで、この6曲目という位置はマストな感じで。
できあがってみたらコンセプトアルバムっぽくなっていた
──そうして皆さんで決めていった曲順ですが、時系列に沿ったストーリーではないものの、結果的にコンセプトアルバム的な流れを持つ作品になったと思います。皆さんの中ではそういったイメージはありましたか?
苑 できあがってみたらコンセプトアルバムっぽくなっていたというのが正直なところですね。最初の頃は本当に「GLORIA」「Innovational Symphonia」「喝采と激情のグロリア」の3曲を軸にストーリーを構成しようと思っていただけですし。でもそこから派生して、ストーリーに影響を受けた曲たちがこのアルバムに寄り添う形になったので、結果コンセプトアルバムのようになったのかな。
──「GLORIA」のサビと「喝采と激情のグロリア」のサビの歌詞はまったく同じ英詞が起用されています。この構成のせいもあって、コンセプトアルバム的な印象を強く受けました。
苑 「喝采と激情のグロリア」のメロディを作ってみたら「おや? これは『GLORIA』のあの歌詞がハマるんじゃないか?」と思って、あてはめてみたらピッタリで。なんか奇跡を感じましたね。
──まったく同じメロディではないけど、何か通ずるものというかひらめくものがあったと?
苑 そうですね。アルバム最終曲の中で「喝采と激情のグロリア」というテーマを表現するには、この歌詞がピッタリだなと思って。
収録曲
- overture
- GLORIA
- Plastic Lover
- 悪魔の翼
- Freesia
- CAMEL
- Merry Drinker
- SWORD
- Innovational Symphonia
- 永遠のブルー
- Midnight Fanfare
- 喝采と激情のグロリア
摩天楼オペラ (まてんろうおぺら)
2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコン週間ランキング初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。同年後半に「喝采と激情のグロリア」というテーマのもとに、「GLORIA」「Innovational Symphonia」という合唱をテーマにしたシングルを連続リリースした。2013年3月にメジャー2ndアルバム「喝采と激情のグロリア」を発売。同年6月にはZepp Tokyoで単独ライブを行う。