ナタリー PowerPush - 摩天楼オペラ
合唱を経てたどり着いた“未来永劫残る栄光
摩天楼オペラがメジャー2ndアルバム「喝采と激情のグロリア」をリリースする。昨年秋より「喝采と激情のグロリア」というテーマに沿って、合唱を取り入れたシングル「GLORIA」「Innovational Symphonia」を立て続けに発表した彼ら。そのテーマの完結編ともいえるアルバムは、これまで以上にドラマチックでエモーショナルな楽曲が詰め込まれた力作に仕上がっている。
彼らはこのアルバムで何を表現し、何をリスナーに伝えようとしたのか。メンバー5人に話を聞いた。
取材・文 / 西廣智一
過去を見つめ直したおかげでストーリーが生まれた
──前回のインタビューでシングル「GLORIA」と「Innovational Symphonia」は合唱を取り入れ、「喝采と激情のグロリア」というテーマに沿って制作されたと言っていましたが、今回のニューアルバムのタイトルはそのものズバリ「喝采と激情のグロリア」。これは「GLORIA」から始まったプロジェクトの最終章ということなんでしょうか?
苑(Vo) そうですね。「GLORIA」ができて「喝采と激情のグロリア」というストーリーの起承転結が思い浮かんだというか。まず“喝采”を表した「GLORIA」と“激情”を表現した「Innovational Symphonia」があって、そこからアルバムの「喝采と激情のグロリア」にたどり着く流れですね。
──具体的にはどのような内容なんでしょうか?
苑 「Innovational Symphonia」では栄光へ向かうまでの話を書いたんです。で、先に発売された「GLORIA」では栄光を描いていて、今度はその勝ち取った栄光を僕たちがいなくなっても未来永劫残していこうという思いを「喝采と激情のグロリア」に込めました。
──それは自分たちが経験してきたことを歌詞のモチーフにしたと?
苑 そうですね。
──そもそもなぜこのタイミングでこういう作品を作ろうと思ったんですか?
苑 僕は中学生くらいの頃からずっと合唱がやりたくて。そういうことを思い出したときに、ふと今までの人生を振り返ってみたんです。バンドを始めた頃に考えていたこと、ちゃんとお客さんの前に立てるようになってからのこと……そこからどうしていきたいかを考えたことも。まあ後付けになるかもしれないけど、一度自分の過去を見つめ直したおかげで、この「喝采と激情のグロリア」のストーリーが生まれたのかなと思います。だから合唱をやりたいと思ったことが、そもそものきっかけかもしれないですね。
合唱で人の内側からあふれる生命力を表現
──このアルバムにはいろんなタイプの楽曲が収録されています。それこそ前回のインタビューで「(『GLORIA』で伝えたかったのは)人は決して1人で生きているんじゃないんだよっていうこと」と言っていましたが、アルバム全体を通じて人の強さであったり孤独であったり、そういった人間の内面的な部分が散りばめられているように感じました。
苑 そうですね。合唱曲を作るにあたって、人の内側からあふれる生命力みたいなものを表現したいと思っていたので。だから歌詞にしても僕の内面をストレートに表したものが多いんです。それによって僕の中の寂しい部分、悲しい部分も出ていると思うので、そういった感情的な部分を聴いて感じ取ってもらえたのかもしれないですね。
──歌詞がストレートになった分、以前よりもエモーショナルに響く気がしました。
苑 本当に包み隠さずに書いてる歌詞が多いので。最近好きなんですよね、そういう歌詞(笑)。ライブでもストレートに歌えますし、感情をむき出しにしてぶつけられるんで。
──そういう苑さんの歌詞を見て、ほかの皆さんは以前との違いを感じましたか?
悠(Dr) 前回のアルバム「Justice」のときぐらいから、よりダイレクトな表現方法に変わってきたなと感じてたんですけど。今回の歌詞に関して言えば、僕は8曲目の「SWORD」っていうタイトルを見たときに今までにはなかったストレートさを感じました。タイトルだけ見たら今まで苑の中になかったものじゃないかなって思ったんですけど、歌詞を読んだらしっかり苑の色があって。でも今までとはちょっと表現が変わってきてる部分も感じられて、10年一緒にバンドをやってきて改めて驚かされました。
──その変化に対しては好意的なわけですね?
悠 もちろん。ダイレクトに伝わりやすくて、僕はすごく好きですね。もともと僕もそういう歌詞が好きなんで。
収録曲
- overture
- GLORIA
- Plastic Lover
- 悪魔の翼
- Freesia
- CAMEL
- Merry Drinker
- SWORD
- Innovational Symphonia
- 永遠のブルー
- Midnight Fanfare
- 喝采と激情のグロリア
摩天楼オペラ (まてんろうおぺら)
2007年に結成されたヴィジュアル系ロックバンド。2008年に苑(Vo)、Anzi(G)、燿(B)、悠(Dr)、彩雨(Key)という現在の編成になる。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2010年5月に初のホールワンマンライブを渋谷公会堂(当時・渋谷C.C.Lemonホール)で実施した。同年12月にはミニアルバム「Abyss」でメジャーデビュー。2011年7月にリリースしたメジャー1stシングル「Helios」は、オリコン週間ランキング初登場16位を記録した。同年10月にはメジャー2ndシングル「落とし穴の底はこんな世界」を発表。同月にさいたまスーパーアリーナで行われた「V-ROCK FESTIVAL '11」にも出演し、大きな注目を集めた。2012年3月、メジャー1stフルアルバム「Justice」を発売。同年後半に「喝采と激情のグロリア」というテーマのもとに、「GLORIA」「Innovational Symphonia」という合唱をテーマにしたシングルを連続リリースした。2013年3月にメジャー2ndアルバム「喝采と激情のグロリア」を発売。同年6月にはZepp Tokyoで単独ライブを行う。