ナタリー PowerPush - MASTERLINK
“王道エレクトロポップ”でシーンに挑戦 シングル「Traveling」でメジャーデビュー
チャートのトップに来るような音楽ってすごくかっこいい
──そういったサウンドをMASTERLINKなりに消化していくうえで、歌詞を全編英詞にするのではなく、要所要所で日本語で歌うようになったのはどうしてですか?
自分にとっては、英語はそんなに遠い存在じゃないから仮歌の時点では英語の雰囲気で作っちゃってるんですけど、全部英詞にするよりも、英詞の中に日本語がパッて出てきたときのインパクトがけっこう大きいと思うんですよ。英語の部分がわからなくても、パッて出てくる日本語をメッセージ性の強いものにしたら、そこを聴いただけで曲の世界観が伝わるかなって。
──英語にしろ日本語にしろ、イメージを限定しない使い方をしていますよね。
自分もそこはものすごく意識しています。「自分たちはこうだ」って言い放つんじゃなくて、それを聴いた人が自分の人生に対するさまざまな思いとかを自由に想像してもらえればいいと思うんで、わりと抽象的な感じにしているつもりです。
──ロックバンドって、打ち込みを導入することで音楽のフォーマットがすごく自由になりましたよね。日本でもスーパーカーのようなバンドが出てきたりして。
スーパーカー、好きだったんですよ。こういう音使ってんだ、こういうミックスしちゃうんだ、でもJ-POPとしてのバランスが絶妙に成り立っている。そういうところが共感できたし、今でもそういう曲を作りたいなと思います。
──ポップに対するこだわりがあるんですか?
技術的に言うと、マイナーコードじゃなくてメジャーコードの曲が好きです。それに、アメリカの普通のギターロックサウンドとかも、すごくあたたかみがあって好きなんですよ。僕は、誰も知らないようなマニアックなものを聴いてます、みたいなスタンスにはあまり興味がなくて。チャートのトップに来るようなポップな音楽ってすごくかっこいいなと思うんですよね。アレンジでは奇抜なことをやりたいんですけど、メロディとかコードは王道なものが好きなんで、MASTERLINKではそれを両立させるようにしてます。王道なものに対してどこまで自分たちのカラーとマニアックな感じを入れてポップに持っていけるか。それがテーマです。
自分たちの音楽はエレクトロって言われるけど、根底はロック
──メジャーデビューシングルとして選ばれた「Traveling」は、いつ頃作られた曲なんですか?
3年ぐらい前に作ったものです。カップリングの「Miss You」はそのちょっとあとぐらいかな。
──「Traveling」は、ここではないどこかへ行こうという歌ですね。
歌詞にはいろいろな意味があって、イヤな暗黒時代から抜け出したいとか、ただ自由になりたいとか、人生のスタートとか。そういったことも含めて、デビューシングルにふさわしいかなと。
──カップリングに「Miss You」を選んだのはどういう理由からですか?
「Traveling」みたいなスタイルのバンドって思われるのを、いい意味で裏切りたかったんです。聴いてみると打ち込みを使ってるし、そこまで大きく離れてはいないと思うんですけど、こういうこともやりますみたいな意思表示で。
──MASTERLINKの二面性が出ていると。
そうですね。自分たちの音楽はエレクトロって言われるけど、別にそこにこだわってはいなくて、根底はロックにある。そこはちゃんと出していきたい。
──シングルにはm-floの☆Taku Takahashiさんによる「Traveling」のリミックスも収録されていますね。これはNARUさんの意向で?
そうです。m-floの曲から打ち込みに関して影響を受けた部分があったんで、お願いしたんです。そうしたら本当に引き受けていただけて。すごくうれしかったです。
──m-floは、コアなダンスミュージックをJ-POPのフォーマットにうまく落とし込んできた人たちですよね。
はい。そういった部分にもインスピレーションを受けてるのかもしれないですね。トラックはコアなのに聴けばポップっていうところに。
ここから人生の新たな「Traveling」が始まる
──晴れてメジャーデビューを果たす今、これからはどんなことをやっていきたいですか?
次のシングルを出したいとか、PVの監督もやりたいとか、いろいろあります。ここまで長くかかりすぎた分、ホッとしているという部分も大きいですけどね。今まで、辞めようと思ったことが何回もあったんで。
──それでも諦めなかったのはどうしてですか?
「落ち込んでるときにMySpaceで曲聴いたら元気になりました」とか「バンドを続けなよ」とか言ってくれる人がいたんですよ。そういう、たくさんの人たちが応援してくれることに対してバンドをやり続けたいなと思ったんですよね。自分たちがやってきたことはおかしなことじゃなかったんだなって確信を持てるようなレスポンスをもらうタイミングが何回かあったから、今まで続けてこられた。もしそういうことが何もなかったら辞めてたと思います。
──だからこそ、「Traveling」をメジャーデビューシングルにしたのには大きな意味があるわけですね。
今まで応援してきてくれた人もこれで初めて僕たちを知った人も、自分たちと一緒に「Traveling」してほしい。ここから人生の新たな「Traveling」が始まる、ということですね。
MASTERLINK「Traveling」
MASTERLINK(ますたーりんく)
NARU(Vo, G)、KOJI(B)、YASU(Dr)からなる3ピースバンド。打ち込みを多用した四つ打ちサウンドを軸に、ポップ感あふれる楽曲を作り出している。
2002年、東京都町田市で中学の同級生だったNARUとKOJIを中心に結成。2003年にTOKYO FMのオーディション番組にデモテープを送ったところ、リスナー投票で圧倒的な得票数を獲得しグランプリを受賞。3月に原宿アストロホールで行われた同番組主催のライブイベントに、ELLEGARDEN、NANANINEのオープニングアクトとして出演した。
2004年にYASUが加入した後は、楽曲制作を中心に活動。2009年春にはソニーのウォークマンに楽曲がプリインストールされ、知名度を高める。2010年6月、1stシングル「Traveling」でメジャーデビュー。