「MASHROOM 2019」|山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)、三原健司(フレデリック)、松本大(LAMP IN TERREN)、岩渕想太(パノラマパナマタウン)、石原慎也(Saucy Dog)、四方颯人(YAJICO GIRL)、シロナカムラ(ユレニワ)「MASH A&R」フロントマン座談会

自分らの道を歩み始めてるバンドが多い

──オーラルとフレデリックは、MASHに入った頃と今とではどんな変化がありましたか?

三原 僕らはやりたい音楽をひたすらやってきたけど、だんだんと「誰に届けていきたいか」「どんな人に対してどんなライブをしていくか」を考えるようになりましたね。前は「オドループ」がYouTubeですぐに100万回再生されたり、フェスで入場規制がかかったり、キャパ200埋まらないくらいのバンドやったのに話題性が先行しちゃって自分らで状況を把握しきれなかったんですよ。状況が先に来たからこそ、ずっと背伸びをし続けてる感じが2~3年続いてたかな。でも去年、初めてのアリーナワンマンを神戸のワールド記念ホールでやって、そこでようやく「俺たちで成功をつかめたんだ」と実感が得られたんです(参照:フレデリック、TOGENKYOの先を示した故郷での初アリーナワンマン)。

山中 そうなんや。健司が話してたみたいに「誰に伝えるか」とか「自分たちの音楽で何をしたいのか」とかもそうやし、「フレデリックにしかできへんこと」が絶対にあるはずで。まだ探してるのかもしれんけど、ワールド記念ホールのワンマンでそれを見つけにいこうとしているのを感じましたね。実際に観に行ったときに「このライブ中につかんでるものもあるんやろな」と。そもそも僕はフレデリックの曲が天才的にいいと思ってるし、健司のボーカリストとしての立ち居振る舞いが完全に進化してるんです。そういや昔は「MASHROOM」のあとに言い合いしたりもしてたなあ。

三原 あったな(笑)。

山中 今はもうまったく別のボーカリストとして、俺にはできへんことを健司がやってるし。いい意味で、前は切磋琢磨し合ってたのが今はそれぞれの道が分かれていってる感じかな。お互いがまったく別の種類のバンドなんで、どう競うかじゃない。それを理解し合ってます。

──横浜アリーナのライブでも「オーラルにしかできない攻め方を考えてる」と拓也さんは話してたし、そう変わっていく時期なのかもしれないですね(参照:THE ORAL CIGARETTES、観客と感情ぶつけ合った初の横浜アリーナ公演)。

山中 俺らの世代って、そういう時期なんちゃうかなと思います。フェスで一緒くたにされてたけど、自分らの道を歩み始めてるバンドが多い。

三原 うん。世代としてガンと上がってきた感じがあって、だからこそ「次はどうするか?」の課題をずっと与えられてるような気がします。そこを経て、個性が出始めてるんじゃないかな。

松本 確かに。オーラルの横アリは演出も含めて、頭の中にあるものを全部出そうとしてましたよね。「拓也さんの頭の中は複雑だ」と感じたし。本人はステージで絶叫してて、言ってみれば超ドSなライブを見せられたんですけど(笑)。自分のイメージを実現させていて観ててすごくうらやましかったです。近くにいる人があのステージを作るところまで行けて、貫いてきたスタンスもちゃんと存在してて。方向性は違えど自分に重なるものがあって、「夢があるなあ……」というか。カッコいいライブを見せてもらいました。

岩渕 なら100年会館(2016年4月開催)も武道館(2017年6月開催)もこの前の横アリも観たけど、ステージに立ってる姿が一貫してるというか。僕が言うのもアレですけど、オーラルの4人がどんどん成長してるからこそ、横アリにふさわしいカッコよさがありました。「自分らがアリーナに立つときにどんな人間になっていたいか」をすごく考えさせられたライブでしたね。

シロナカムラ(ユレニワ)

松本 MASHのオーディションでオーラルが優勝してフレデリックが特別賞を獲ったときから、ずっと前を走り続けてくれてて。2組ともMASHができることを広げてくれてる存在なんですよ。岩渕が言ってるように、「自分たちがやるならどうだろう?」というのは僕も常々考えていますね。

シロ 僕はまだ先輩たちのライブをちゃんと観られてないし、何か言えることなんてないけど、これから学んでいきたいです。音源を聴いてる印象としては、しっかり伝えたい軸があって、そこに個性が乗っかってて、日本のロックシーンの中でカッコいいバンドがMASHにはそろってると思います。

THE ORAL CIGARETTESとフレデリックがいない「MASHROOM」を観てみたい

──じゃあ、最後に今年8月開催の「MASHROOM 2019」に向けての話を。どういうライブをしたいとか、それぞれ考えてることを聞かせてもらえますか?

岩渕 やっぱり、先輩にひと泡吹かせるライブはしたいですね。去年はちょっとダサかったなと思うんで……。

山中 あははははは!(笑)

松本 パノラマパナマタウンが一番好き放題やってたけどな。

岩渕 「絶対に先輩を倒すぞー!」という気持ちばかりで、自信を持ってライブしてなかった感じやったと思います。今年はもっと自信を持ってパフォーマンスできるはずやから。

四方颯人(YAJICO GIRL)

四方 僕らも去年は新木場STUDIO COASTでやることでいっぱいいっぱいだった部分があるので、「YAJICO GIRLはこういうバンドなんですよ」というのをしっかり見せたいですね。もっと余裕を持って。

石原 僕もすごく緊張してしまって、終わったあとに「悔しかったな」と思ったのだけ覚えてるくらいで。想太が言ってたみたいに自信が足りてない部分はあったから、今年の「MASHROOM」では絶対に更新したいです。

シロ いいライブができてもできなくても、どっちにしろ後悔はある気がするから、せめて本番までは悔いなくやりたいですね。失礼に聞こえちゃったら申し訳ないんですけど、先輩たちを焦らせなきゃいけないし、自分らにも後輩ができたら唖然として言葉が出ないくらいの音楽を作らなきゃと思ってます。ユレニワはMASHの中で異端児でありたいです。何か革命的なものをずっと持ってるような。

──大さんにとっては、去年の「MASHROOM」はバンドが活動休止を発表する直前のライブでしたよね。

松本 そう、声帯ポリープが発見されて1発目のライブでした。「あと3回ダメなライブをしてしまったら手術します」と自分で決めていた中、実際にダメだったうちの1つが「MASHROOM 2018」で。だから僕はリベンジしたい。それと僕らは先輩に頼ってるというか、悪い言い方をすればあやかってる状態だと思うから、「イベントには出させていただきますけど、来年以降へつなげるために全員に勝ちにいく」という気持ちです。

山中 先のことを考えるなら、俺はオーラルとフレデリックがいない「MASHROOM」を早く観てみたい感じもあるよ。

石原慎也(Saucy Dog)

石原 そこなんですよね。「俺らだけでも会場を埋められたら」という感情はすごくあって、安心してもらえるようにならなきゃなと思ってます。

山中 単純にMASHを更新していきたいだけなんよ。主人公がいつも同じやったらオモロないやん。例えば「Death Row Recordsの人たちはみんな好き!」とか、そういうカルチャー感をMASHで作りたいんです。「MASHが輩出するアーティストは間違いないよね」となっていくためには、特定の主役がずっといちゃダメで。毎回更新されていって、「今回はこんな新人が出てきたらしいぜ」みたいな。そのほうがヤバいでしょ?

──出演しない年があっても、その次はまたどうなるかわからないし。

山中 そうそうそう! お客さんもきっとワクワクしますよね。「MASHROOM」は夜遊びしに行く楽しいイメージやし、抜けたいとかじゃないです(笑)。

三原 「MASH FIGHT!」のときの気持ちでやってほしいですね。いっそ先輩とか事務所とかいう頭も取っぱらって、「誰のことも知らんけど、俺がトップを獲る」感じでさ。もとをたどれば、そこで勝ち抜いてきて今があるわけやから。そうすれば、もっともっといい「MASHROOM」になるんちゃうかな。本当の意味でMASHらしいバンドイベントに。

山中 そうやな。一方で、現場の空気感の中でどう遊ぶかも大事かな。当日がバチバチやったらその日一番カッコいいバンドを倒せばいいし、もっと柔らかいテンションになってたら、それを踏まえた最高のライブをすればいいと思うので。なんにせよ、今年も楽しみにしてます。