友人に寄り添えた「ナンセンスに逆戻り」
──前作よりも同世代のリスナーを意識したのはなぜですか?
これは個人的な話になっちゃうんですけど、アルバムに収録されていた「ナンセンスに逆戻り」って曲は、私が友達と話をしていてその中で思ったことをそのまま歌詞に書いたものなんです。勝手に曲にしたようなものだから「ネタにされた」って怒られるかなあと思っていたんですけど、その友達が「すごく大切な曲になったよ」って言ってくれたんです。
──「ナンセンスに逆戻り」は、どちらかと言うと曲の主人公を揶揄する内容のものですよね。
そうなんですよ。すごく優しいバラードでもなんでもなくて、むしろポジティブな曲でもないし、共感を呼ぶようなつもりで書いたわけでもなかったんですけど、結果として私の友達に寄り添うような曲になった気がしたんです。もしかしたらその友達だけじゃなくて、似たような経験をした人たちにも寄り添う曲が作れていたのかもしれないですね。
──ともすれば怒られるかもしれない曲の料理の仕方が正解だったことを実感したわけですね。
はい。本当に受け取ってほしい人に、大事なことがちゃんと届いていた実感を得られたのは本当にうれしくて。もともと同世代の女の子に聴いて欲しいって思いはあったんですけど、それをもっとわかりやすく出してみようと思って曲を書いたのが、このシングルの3曲ですね。
「プールに畳を浮かべてみよう」
──「どうせ夏ならバテてみない?」はミュージックビデオが公開されています。プールを舞台にした一風変わった映像に仕上げられてますね。
「どうせ夏ならバテてみない?」って夏の曲ではあるんですけど、シチュエーションは最初から最後まで室内なんですよね。だからと言ってMVまでずっと室内だとワクワクしないかな……と思って、砂浜の上に布団と豆電球があるようなシュールな感じとかを最初はイメージしてたんです。でもなかなかそこから先が広がらなくて、MVの監督さんに相談してみたら「プールに畳を浮かべてみよう」ってことになったんです。「いやまさかプールに畳は敷けないよ」と思ってたんですけど見事にプールの上に四畳半が再現できました。このMV、合成とかが一切ないんですよ。
──ましのみさんが水の中で歌唱するシーンも実際に潜って撮影しているわけなんですね。
かなり体を張りました。水の中に沈んで歌ったことなんてないですから、もうぶっつけ本番でいろいろチャレンジして……そのぶん観たことのない映像になったので満足してます。
キレイなだけじゃない恋愛のちょっと汚い部分
──カップリングの「海水掛け合いっこ」ではアウトドアなシチュエーションでの男女のすれ違いが描かれています。
一緒に楽しくしたいんだけど、どうしても意地を張っちゃうところって恋愛の中で1つの大事な要素だと思ってるんです。一見マイナスな感情だと思う人もいると思うんですけど、個人的には意地を張って思ってもないことを言っちゃう感じは、グッとくるポイントだと思っていて。特に今の若い世代の人たちっていい意味でも悪い意味でもつながりの中で生きてる感じがするから、さわやかなだけの恋愛をしている人って案外少ないんじゃないかなとも思っているんです。キレイなだけじゃなくて、恋愛のちょっと汚い部分を曲にして、それがポップでなんだかんだ幸せを感じられる、って曲を目指しました。あとはせっかくの夏なのでキレイな海の景色が浮かぶ曲も書いてみたくて。
──1曲目とも共通しているんですが、どちらの曲も男性側の視点はあまり書かれていないんですよね。
あ、そこはわざとなんです。同世代の女の子がわりと経験しがちなことを歌詞に落とし込んでいる中で、男性側がどういう人かって言うのは聴き手の人それぞれが自分の思い浮かぶ人を当てはめてほしいんですよね。「あ、ここのところ経験したことある」って思ってくれたら、そのままそのときに付き合ってた男性を思い浮かべてもらえるというか。
──恋愛のマイナスな部分にスポットを当てつつ、最終的にはポジティブなオチになっているのは2曲とも共通しています。
室内と海辺でロケーションは全然違うんですけど、曲の中でくらいは自分で体験できない空気感を味わってほしいんですよね。私は日差しが苦手なのであんまり海に行ったりはしないんですけど、こうやって曲を作って歌うことであたかも海に行ったかのような気分にはなれるし(笑)。
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“悪い人”が出てこない
- ましのみ「どうせ夏ならバテてみない?」
- 2018年8月1日発売 / ポニーキャニオン
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初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / PCCA-04685 -
通常盤 [CD]
1296円 / PCCA-04686
- CD収録曲
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- どうせ夏ならバテてみない?
- 海水掛け合いっこ
- コレクション of コネクション
- どうせ夏ならバテてみない? (Inst.)
- 海水掛け合いっこ (Inst.)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- どうせ夏ならバテてみない? Music Clip
- Digest of「ぺっとぼとリテラシー~別途ほとばしるショータイムへようこそ~Vol.1@Shibuya WWW X」
- どうせ夏ならバテてみない? Making
- ましのみ
- 1997年生まれのシンガーソングライター。2015年1月に東京・下北沢LOFTで初ライブを行い、大学に通いながら都内で精力的にライブ活動を行う。2016年3月、音楽コンテスト「Music Revolution 第10回 東日本ファイナル」でグランプリを獲得。同年9月には東京・恵比寿天窓.switchで自身初のワンマンライブ「ましのみ 初ワンマンライヴ~サブタイトルなんてつけたくない~」を実施した。2017年10月、東京・WWWで行われたフリーライブでポニーキャニオンからのメジャーデビューを発表し、2018年2月にメジャーデビューアルバム「ぺっとぼとリテラシー」をリリースした。同年8月にはメジャー1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」を発表。9月には東京・UNITでワンマンライブ「ぺっとぼとリテラシー ほとばしるバテで夏を締めくくりまショータイム Vol.2」を開催する。