音楽ナタリー PowerPush - マーク・ロンソン×SKY-HI(AAA日高光啓)
互いを刺激するルーツ、ビート、音楽への情熱
ヒップホップから広げた“音への関心”
──SKY-HIさんは楽曲制作のうえでマークの楽曲からインスパイアされることはありますか?
SKY-HI ものすごくあります。もともとヒップホップが好きで、そこからビートに使用されているソウル、ファンク、ジャズに興味を持ってきたんですが、マークの曲の場合はそれらを通過しながら彼ならではの音を聴くことができて。僕の場合はどんなジャンルでも、自分の声を通さないとSKY-HIの音にはならない。自分が歌うことを大切にしているんだけど、マークの場合はビートが彼らしさを表現しているから、毎回どんなサウンドを聴いても楽しめるんです。
マーク 共通点は多いよね。僕もヒップホップが好きで、そこからジャズやファンクを掘り下げていったから。でも彼の楽曲はソウルやR&Bがベースにありながらも、プロダクションはモダン。古臭さがないよね。聴いてて気分がよくなるし、メロディも最高だよ。
SKY-HI そう言ってもらえるとうれしい。
マーク 日本語がわかったら「この曲のここがいい」って言えたのにな(笑)。ソウルやディスコの要素を今のムードに合うようにしたり、ユニークに感じたところもいっぱいあったし。自分の好きな音楽の要素を自分なりに昇華させていって、新しいものを生み出そうという意識は多くの人が持っていると思うけど、彼の楽曲にはそれを強く感じることができたね。
──ほかの国にはない、日本ならではのグルーヴとか雰囲気は感じましたか?
マーク 日本独特というよりも、何かをただコピーするのでなく、オリジナルを作ろうという意識の高さを感じることができたよ。
SKY-HI 邦楽って特殊で、例えば全米チャートでEDMが上位にランクインして流行っていたとしても、日本でそれを表現する際はメロディを歌謡曲調にしないと受け入れてもらえなかったりする。だから僕はソウルやファンクは好きだしインスパイアもされているけど、自分のメロディや言葉にならない限りは世の中に発表してはいけないと思っていて。
マーク ベースはファンクでディスコなんだけど、EDMっぽいドロップがあって面白かったね。
SKY-HI それ「スマイルドロップ」だ(笑)。
マーク 「アップタウン・ファンク」も生演奏のファンクナンバーだけど、すぐサビに入って盛り上げるのではなく、サビの手前でブレイクを入れるみたいな、Aviciiがやりそうなことをデジタルではなくアナログで表現してみたり。ただ古いものを追求するのでなく、モダンな部分も取り入れようと制作した曲なんだ。
SKY-HI 「アップタウン・ファンク」ではサビ前にドラムロールがきて、Aviciiの曲だったらシンセサイザーの音が鳴りそうなところだけど、この曲ではホーンが入ってリック・ジェームス(主に1980年代に活躍したファンク系アーティスト)っぽいブルーノ・マーズのボーカルが入るという。
マーク そうだね(笑)。
本当に好きだと思う音楽を追求する
──そんな「アップタウン・ファンク」は14週以上全米チャート1位に君臨し続けています。おそらく現在、自身最高のヒットになっていると思いますが、そのことで変化はありましたか?
マーク この曲が僕にもたらしてくれたのは、好きなことを突き詰めていけば世界に認められるんだということだった。この曲って今流行のタイプじゃないし、レーベルから「もっと若者が喜びそうなタイトルにしたら?」って言われて。でもこの曲は僕やブルーノたちが本当に好きだと思う音楽を追求して、半年かけて完成させたものだったから、周囲の意見に惑わされたくなかった。おそらくここまでのヒット曲はもう作れないと思うけど、「アップタウン・ファンク」で好きなことをとことんやれて世界に認められた結果は、今後の音楽活動の大きな励みになると思うよ。
SKY-HI 僕にとってもアルバム「アップタウン・スペシャル」は大きな励みになっていて。今ってインスタントに曲を作ることができて、例えば全曲を流行のサウンドにして、自分がビートに関わらなければ1週間で20曲くらい完成できると思う。そっちのほうが楽だし、多くの人に認められるのかもしれない。だから自分でメッセージやグルーヴをコントロールして、昇華させた楽曲を発表することに迷いがあって。でもビートが自身の手でコントロールされているこのアルバムを聴いて、勝手に背中を押されたような気分になったんですよ、何マイルも離れた場所から。だから「アップタウン・ファンク」がスタジオで1週間程度で完成したって言われたら、曲の作り方を考え直してたかもしれない(笑)。
マーク 最初のビートやヴァースが出てきたのはすぐだったんだよ。でもそのあとが大変で、そこで感じた興奮やマジックをもう一度生み出すことがなかなかできなかったんだ。メンフィス、ロサンゼルス、ニューヨーク……いろんなスタジオで試行錯誤したよ。しまいにはツアー中のブルーノを追いかけ回したし(笑)。結果ブルーノがイントロのクールなコーラスを思いつき、そこからホーンのアレンジが決まって、ようやく完成までたどり着いたんだよね。
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- マーク・ロンソン ニューアルバム「アップタウン・スペシャル」 / 2015年3月4日発売 / ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル / 2376円 / SICP-4387
- マーク・ロンソン ニューアルバム「アップタウン・スペシャル」
収録曲
- アップタウンズ・ファースト・フィナーレ feat. スティーヴィー・ワンダー&アンドリュー・ワイヤット
- サマー・ブレイキング feat. ケヴィン・パーカー
- フィール・ライト feat. ミスティカル
- アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ
- アイ・キャント・ルーズ feat. キヨン・スター
- ダッフォディルズ feat. ケヴィン・パーカー
- クラック・イン・ザ・パール feat. アンドリュー・ワイヤット
- イン・ケース・オブ・ファイア feat. ジェフ・バスカー
- リーヴィング・ロス・フェリス feat. ケヴィン・パーカー
- へヴィー・アンド・ローリング feat. アンドリュー・ワイヤット
- クラック・イン・ザ・パール, Pt.II feat. スティーヴィー・ワンダー&ジェフ・バスカー
<国内盤のみボーナストラック>
- アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ(BB Disco Dub Mix)
マーク・ロンソン
ロンドン生まれのアーティスト。16歳頃よりDJ活動を開始し、人気クラブや数多くの著名人のパーティに出演。当時のニューヨーククラブシーンを代表するほどの話題を呼んだ。プロデューサーとしても活動を行っており、エイミー・ワインハウスのアルバム「バック・トゥ・ブラック」で2008年度のグラミー賞にてプロデューサー・オブ・ザ・イヤー(ノンクラシカル部門)を受賞。2015年3月に最新作「アップタウン・スペシャル」を発表した。
- SKY-HI ニューシングル「カミツレベルベット」 / 2015年3月18日発売 / avex trax
- CD+DVD 1 / 1944円 / AVCD-83180/B
- CD+DVD 2 / 1944円 / AVCD-83181/B
- CD 1080円 / AVCD-83182
CD収録曲
- カミツレベルベット
- LUCE
- カミツレベルベット(Instrumental)
- LUCE(Instrumental)
- カミツレベルベット(Acappella)
- LUCE(Acappella)
CD+DVD盤1 DVD収録内容
- カミツレベルベット(ウラMusic Clip)
- カミツレベルベット(ウラMusic Clip Making)
CD+DVD盤2 DVD収録内容
- そばにいるだけで(SKY-HI TOUR 2014 Trip of TRICKSTER LIVE)
- Tyrant Island(SKY-HI TOUR 2014 Trip of TRICKSTER LIVE)
- キミサキ(SKY-HI TOUR 2014 Trip of TRICKSTER LIVE)
SKY-HI(スカイハイ)
ラッパー、ソングライター、歌手、ダンサーなど幅広く活動を行うアーティスト。AAAでもメンバーとして活動している。さまざまなラッパーとのコラボレーション企画「FLOATIN' LAB」を2011年よりスタートし、翌2012年に同企画のコンピレーションアルバム「SKY-HI presents FLOATIN' LAB」を発売。2014年3月にはファーストアルバム「TRICKSTER」をリリースした。2015年2月からライブツアー「SKY-HI TOUR 2015 ~Ride my Limo~」を全国9カ所で実施し、追加公演も決定している。2015年3月に最新シングル「カミツレベルベット」をリリース。tofubeatsやBase Ball Bearとの競演など、多方面のアーティストとの交流も行っている。