「marasy collection」
DISC 1 全曲解説
01.
うらめし太郎
──ここからは「marasy collection」DISC 1の収録曲について、1曲ずつお話を伺えればと思います。1曲目の「うらめし太郎」はまらしぃさんの1stオリジナルアルバム「First Piano」でも1曲目に収録されていた曲です。
もう5年も前になるんですけど、初めてリリースしたオリジナルアルバムの冒頭を飾った曲なので、僕にとっては“最初の曲”というイメージが強いんです。なので、今回のアルバムでも頭に持ってきました。5年も経つとアレンジの引き出しが増えて、表現の幅が広がったと思うんです。
──「First Piano」の収録音源よりも、演奏のキレが増したと感じました。
垢抜けたかもしれないですね(笑)。わかりやすく1曲目同士なので、聴き比べていただいて、僕の成長がよくわかるようなアレンジになっていると思います。
02.
PiaNoFace
──2曲目は2017年4月発売のアルバム「PiaNoFace」の表題曲です。
「PiaNoFace」というアルバムはアメリカ・ナッシュビルでレコーディングさせてもらった作品で、当時は日本とアメリカの“音の違い”に戸惑ったんですよ。それが楽器のせいか、環境のせいなのかはわからないんですけど、アメリカのピアノはすごく鳴るので、気持ちよく弾いたテイクをコントロールルームで聴くと、やかましく聞こえちゃうんですよね。そのときはレコーディングで初めて抑え気味に、“引き算”をすることを経験して。日本でピアノを弾くときにはまずないことなんですよ。
──今作のレコーディングはもちろん日本で行ったわけですよね?
そうです。「どっちがいい演奏か」と言われると答えにくいんですけど、「PiaNoFace」はけっこうお気に入りの曲で、ライブでもよく演奏しているので弾き方が少し変わっていると思います。ナッシュビルでのレコーディングのバージョンに対する思い入れも強いけど、日本という慣れた環境で録った今回の音源もいいテイクになった手応えがあります。
03.
楓神
──3曲目の「楓神」はライブでよく披露されている1曲でもあります。
「楓神」はライブを経て変わった曲だと思います。作った当初は全然ライブのことを意識してなかったんですけど、ステージで弾いてみたらすごくライブ映えする曲であることに気が付いたんです。
──この曲は「The PianØ」(2015年9月発売のアルバム)収録時と比べて、アレンジの変化が著しいと感じました。
これまで何度もライブで弾いてきて、自分の中で気持ちいいアレンジを追求してきた曲なんですよね。僕のライブを観たことがある方だったら、きっとライブの景色が思い浮かんでくるようなテイクになってると思います。4年振りにレコーディングできてうれしかった1曲ですね。
04.
アマツキツネ
──「アマツキツネ」はボカロ曲として発表された1曲で、ノベライズされるなどさまざまな広がりを持った曲ですよね。
個人的にうれしかったのは音ゲーに収録されたことですね。昔から音ゲーが大好きだったので、まさか自分の曲が音ゲーに入ってみんなにプレイしてもらえるなんて思ってもいませんでしたから。それと昨年の「まらフェス」では、僕の伴奏で高橋洋子さんが「アマツキツネ」を歌ってくださったんです(参照:まらしぃ×高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」連弾も!晴れの野音で「まらフェス」大成功)。10年前の僕に「自分で書いた曲を高橋洋子さんがカバーしてくれるぞ」と伝えても信じてもらえないと思います(笑)。「アマツキツネ」は僕にとって素敵な縁をたくさん持ってきてくれた曲なので、アルバムには絶対入れたかった1曲ですね。
05.
Sogna
──「Sogna」は、まらしぃさんが長らくプレイしているゲーム「パズル&ドラゴンズ」に登場するキャラクターをモチーフにした曲です。
昔からアニメやゲームが大好きで、特定のキャラクターに対して強い思い入れを持つ傾向にはあったんですけど、実はキャラクターをモチーフにした曲をしっかり作ったのは「Sogna」が最初なんです。
──しかもこの曲は公式に頼まれて作ったわけではなく……。
自分で勝手に作りました(笑)。もし問題が起きるようだったらすぐに下げようと思っていた1曲でもあるんですけど、ありがたいことに「パズドラ」のプロデューサーさんに曲を気に入ってもらいまして、いろいろ公式のお仕事にも関わらせていただいました。実際にゲームをプレイされている方に「曲が好きだ」って言われたときはめちゃくちゃうれしかったですね。
06.
空想少女への恋手紙
──「空想少女への恋手紙」は「アマツキツネ」と同じくボカロ曲として発表された1曲です。
これまで自分が作ってきたバラードの中で、けっこう気に入ってる曲が「空想少女への恋手紙」なんです。僕はあくまでピアニストなので歌詞を書くのがすごく苦手なんですけど、「空想少女への恋手紙」と「アマツキツネ」に関しては、ちゃんと曲にハマる歌詞が書けた気がしていて。
──まらしぃさんのオリジナル曲にはピアノのみのインストの曲と、Vocaloidを用いた歌モノの2種類がありますが、このアウトプットの違いをまらしぃさん自身はどう意識しているのでしょうか?
実はあまり深くは考えていなくて、曲作りの最初の段階ではその曲がボカロになるかどうかとかは全然意識していないんです。作っている最中に思うところがあって、アウトプットの形がピアノ1本かボカロを乗せるかに最終的に分かれるだけで、2つをそこまで切り分けてないですね。
07.
Jeanne
──「Jeanne」はまらしぃさんのほかのオリジナル曲と比べてちょっと毛色が違う曲ですよね。
「PiaNoFace」と同じく、オリジナルバージョンはナッシュビルでレコーディングをした曲でもあって、こういうエキゾチックな曲を異国の地で弾いたってだけでもけっこう思い入れが深い曲なんです。アメリカでのレコーディングが決まってなければ、こういう形に仕上がらなかったかもしれないし、当時の僕の状況や制作環境が間違いなくプラスに働いた曲だと思います。
──まらしぃさんが得意とするポップスに近いイメージの曲ではなく、どちらかと言うとクラシカルな音楽性の曲に仕上げられています。これはまらしぃさんのクラシック畑出身の経験が生きているのかなと。
「Jeanne」にも元ネタがあって、あるゲームのキャラクターをモチーフに書いた曲で、曲名からわかるようにフランスのジャンヌ・ダルクが間接的にモチーフになっているんです。なので、普段の僕とはちょっと違う引き出しを使った感覚はありますね。ちゃんとクラシックのこととかを勉強したわけではないので胸を張っては言えませんけど、昔の経験がもしかしたら役に立った1曲かもしれません。
- まらしぃ「marasy collection ~marasy original songs best & new~」
- 2019年4月24日発売 / Subcul-rise Record
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[CD2枚組] 2800円
SCGA-00083~4
- DISC 1収録曲
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- うらめし太郎
- PiaNoFace
- 楓神
- アマツキツネ
- Sogna
- 空想少女への恋手紙
- Jeanne
- KARIN
- 金剛
- Linaria
- sakura wishes(富士通エフサス CM Music)
- 未来ハ廻ル(ソフトバンクでんき FITでんきプランCM song)
- 夢、時々…
- DISC 2収録曲
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- Love Piano
- ラーメン†デュエル
- cat's magic☆
- ホシアカリ
- わたしのマーガレット
- ざざぶり大作戦
- 黒ノ夜明ケ
- Iris
- Apricot memory
- ひかりのやくそく
- Mille
- Messier
- 風来
- まらしぃ
- 2008年よりニコニコ動画の“弾いてみた”カテゴリなどで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリースした。2013年にはトヨタのハイブリッドカー「AQUA」のCMソングの演奏を担当し、CMでオンエアされた「チョコレイト・ディスコ」「千本桜」のカバーはいずれも大きな話題を集めた。2015年2月にはdrm(B)、タブクリア(Dr)とともにインストトリオバンド・logical emotionによる初の全国流通盤「LOGISTIC FUNCTION~VOCALOID SONGS COMPILATION~」をリリースした。また2015年7月には音楽ゲーム「BEMANI」シリーズのトラックメーカーとして知られるkors kとのコラボユニット・maras kとしてアルバム「Beat Piano Music」を発表。2018年10月には活動10周年を記念した“メモリアルアルバム”として「marasy piano world X」をリリースした。2019年3月からは中国各地を回る海外公演を含むアジアツアー「marasy piano live asia tour 2019」を開催。4月にはオリジナル曲を集めた2枚組仕様のベストアルバム「marasy collection」を発表した。6月には千葉・幕張メッセ国際展示場7~8ホールでアジアツアーの最終公演を行う。