まらしぃがベストアルバム「marasy collection ~marasy original songs best & new~」を4月24日にリリースした。
今作は「夢、時々…」「KARIN」「楓神」などまらしぃがこれまで発表してきたオリジナル曲の新録音源で構成されたDISC 1と、「Love Piano」「わたしのマーガレット」といったタイアップ曲を中心にしたDISC 2からなる2枚組のベストアルバム。今回のインタビューでは、まらしぃに10年のキャリアを振り返ってもらいながら、彼自身が選曲したDISC 1収録曲を解説してもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 竹中圭樹(D-CORD)
最近知った方に名刺代わりのアルバムを
──まらしぃさんはこれまでもアニソンやボカロ曲をまとめた作品、要はベスト盤的なアプローチでのCDリリースを何度か経験していますが、今回はオリジナル曲のみを集めた新しい試みになりました。なぜこのような形のベスト盤を?
活動10周年を迎えて、やっぱり自分で書いた曲をまとめておきたいなって気持ちがまずあったんです。僕は、ニコニコ動画とYouTube同時に動画を公開し始めたんですけど、最近はYouTubeから僕の音楽を知ってくれる人の間口が広がった感覚があるんですよね。最近になって「まらしぃさんの動画を知りました」みたいな方も多くて。
──新しくまらしぃさんを知った方に向けて、改めて名刺代わりのアルバムを作ろうと思い立ったわけですね。
そうですね。まらしぃというピアニストって、もしかしたらカバーアーティストとしての側面が強いかもしれないんですけど、10年も活動していく中でそれなりには自分で書いた曲が数多くありまして。僕のことを新しく知ってくれた方々に「こういう曲を書く人なんだ」と知ってもらうためには、オリジナル曲だけのアルバムがあったほうがいいかなと思ったんです。特に最近は、海外の方から動画にコメントをいただく機会も増えていますから。
──そういった土台があって、まらしぃさん初の試みとして初のアジアツアーの開催があったわけですね(参照:まらしぃ初のアジアツアー開催決定、ツアーファイナルは幕張メッセで)。
以前にも海外からのお誘いやライブの問い合わせはそこそこの頻度でありまして。あと個人でやっている同人の活動ではコミックマーケットの活動などで海外の方々がCDを買ってくれることも多いんです。そのとき「どこから来たんですか?」と聞くとアジアの方が多かったんですよね。「いつかは海外を回るツアーを開催したい」と思っていたんですが、ちょうど今回いろんなタイミングが合って、アジアツアーを開催することになったんです。
トラブルを経て一丸となった中国ツアー
──中国の各都市を回る初の海外ツアー、いかがでしたか?
最初はすごくドキドキしていたんです。「ちょっとは中国語を覚えたけど伝わるかな」とか、「曲のこと知ってるかな」とか。でも実際に演奏してみたら皆さんすごく熱心に聴いてくれて、例えば北京公演とか日本の会場よりも皆さんの反応が激しかったんですよ。アメリカで以前ライブさせていただいたときの感覚とちょっと近かったですね。知ってる曲が流れたときに「ざわ」っとする感じとか、声援の熱さとか。あと、中国のツアーで一番印象に残っているのは、ライブじゃないんですけど、スタッフが1人脱落したことで……。
──なぜ脱落してしまったんですか?
香港から中国に入るスケジュールだったんですけど、香港公演が終わったタイミングで中国に入るとき、スタッフの方が1人パスポートをなくしてしまいまして。中国に入れず、そのまま帰国することになったんです。ここまで聞くとネガティブな話ですが、スタッフの人数が1人減って、スタッフ同士の団結感が生まれたんですよね。僕がスタッフに対してできるのは応援することだけだから、僕はとにかくステージ上でしっかり演奏しなきゃいけないと思って、いつもより気合いが入った感じはありました。国内では起こりえないトラブルを経て、スタッフとのコミュニケーションも密に取れるようになったんですよね。
──ツアーファイナルの千葉公演に向けても団結力が高まっているわけですね。
僕だけじゃなくて、みんなが一丸となって1つ大きなツアーを乗り越えたので、最後の千葉公演も絶対にいいライブになると思うんです。中国で作り上げたチームのいい空気感をそのまま国内に持ってきて、さらにいいライブができるようにしたいですね。
- まらしぃ「marasy collection ~marasy original songs best & new~」
- 2019年4月24日発売 / Subcul-rise Record
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[CD2枚組] 2800円
SCGA-00083~4
- DISC 1収録曲
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- うらめし太郎
- PiaNoFace
- 楓神
- アマツキツネ
- Sogna
- 空想少女への恋手紙
- Jeanne
- KARIN
- 金剛
- Linaria
- sakura wishes(富士通エフサス CM Music)
- 未来ハ廻ル(ソフトバンクでんき FITでんきプランCM song)
- 夢、時々…
- DISC 2収録曲
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- Love Piano
- ラーメン†デュエル
- cat's magic☆
- ホシアカリ
- わたしのマーガレット
- ざざぶり大作戦
- 黒ノ夜明ケ
- Iris
- Apricot memory
- ひかりのやくそく
- Mille
- Messier
- 風来
- まらしぃ
- 2008年よりニコニコ動画の“弾いてみた”カテゴリなどで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリースした。2013年にはトヨタのハイブリッドカー「AQUA」のCMソングの演奏を担当し、CMでオンエアされた「チョコレイト・ディスコ」「千本桜」のカバーはいずれも大きな話題を集めた。2015年2月にはdrm(B)、タブクリア(Dr)とともにインストトリオバンド・logical emotionによる初の全国流通盤「LOGISTIC FUNCTION~VOCALOID SONGS COMPILATION~」をリリースした。また2015年7月には音楽ゲーム「BEMANI」シリーズのトラックメーカーとして知られるkors kとのコラボユニット・maras kとしてアルバム「Beat Piano Music」を発表。2018年10月には活動10周年を記念した“メモリアルアルバム”として「marasy piano world X」をリリースした。2019年3月からは中国各地を回る海外公演を含むアジアツアー「marasy piano live asia tour 2019」を開催。4月にはオリジナル曲を集めた2枚組仕様のベストアルバム「marasy collection」を発表した。6月には千葉・幕張メッセ国際展示場7~8ホールでアジアツアーの最終公演を行う。