まらしぃ「PiaNoFace」インタビュー|まらしぃと“相棒”が見る夢

CM曲を書くときは妄想から

──「Sogna」「金剛」といったオリジナル曲にはそのもととなるキャラクターがいますが、今作の収録曲「未来ハ廻ル」「sakura wishes」の2曲は企業の理念やプロジェクトに沿った曲を作ったわけですよね。いつもと感覚が違ったりはしましたか?

まらしぃ

実はそんなに感覚に違いはないんです。と言うのも、楽曲のお話をいただいたときに自分の中で「こういう設定とか世界観のアニメやゲームがあったらどうなるかな」って考えていて。架空の作品やキャラクターを妄想してから、それに合わせて曲を作っているのでいつもと同じなんですよね。

──自分が得意としているフィールドに1回落とし込んでから曲を作るわけなんですね。

はい。妄想の結果が曲みたいな感じなんですけど、幸いなことに曲がボツになるようなことはなかったので、自分の感覚がそこまで世間とズレていなくてよかったなと思っています(笑)。

──CMでは短い時間しか流れない曲がフルサイズで聴けるのもCDならではですよね。

30秒とかで完成しているものをフルサイズにするっていうのは、初めての作業で新鮮でした。ただ僕は曲を作るときいつもサビから作るタイプなので、今回のCM曲もサビを先に作ったと思うといつもと同じ要領なんですよね。なのでけっこういつも通りの感じで作れたのでそこまで苦労はしなかったです。

──YouTubeでは「sakura wishes」の演奏動画としてピアノにプロジェクションマッピングをした動画が公開されてまして、記事で紹介したところたくさんの反響がありました(参照:まらしぃ、手の動きに合わせて桜舞う演奏動画)。

弾いている僕もテンションが上がりました。ピアノの真上からプロジェクターを使って映像を映しているんですけど、ちゃんとメロディとか音に反応して背景が変わったりするんですよ。だから撮影のときに「この部分を間違えて弾くと映像が変わらないので気を付けてください」って言われまして。

──あらかじめ決まっている映像を流しているわけじゃなくて、ちゃんとまらしぃさんのピアノの演奏と連動してるんですね。

そうなんです。どうやらある特定のフレーズと連動しているみたいで、先にその部分を教えてもらって。そこだけは間違えないように、テンポもなるべく変えないように気を付けながら弾いてました。すごくキレイな映像なので、ライブでもスクリーンとかに映したいんですけど、間違えると思った通りの映像が映せないので難しいなって(笑)。

パズドラのランクは900

──アルバムには「KARIN」という新曲が入っています。これはまらしぃさんがかねてからプレイしているゲーム「パズル&ドラゴンズ」のキャラクターの曲ですよね?

はい。僕が大好きなカリンちゃんの曲を書きました。

──2月に配信された「パズドラ」の5周年記念番組では、まらしぃさんがゲストとして出演してライブをするコーナーがありました。ゲーム中のBGMの提供もありましたし、ここ1年で完全に“「パズドラ」の公式の人”になったなと思いました。

まらしぃ

好きでずっとプレイし続けているゲームですので、ゲストとして呼んでいただいて本当に光栄でした。生配信のときに弾いた曲が「KARIN」で。僕のことを知らない人もたくさん聴いてくれたと思うんですけど、皆さん温かいコメントを寄せていただいて、ゲームのファンの1人として幸せな時間を過ごせました。それと、この間ゲーム内のランクが900になりまして。

──おそらくゲーム内でもかなり上のほうのランカーですね。

まだまだモチベが高いです(笑)。「Sogna」「Hera」の2曲を作ったときは、公式から「やめてください」って言われたらお蔵入りにするくらいの気持ちだったわけですから。今こうやって公式の番組にも出させてもらうっていう関係になってすごくありがたいですね。

“ピンクのアイツ”も夢を見てるのかな

──アルバムのDISC 1には「夢ハ夢ノママデ」「I have a dream」という2曲が収められていますが、まらしぃさんの代表曲の1つに「夢、時々…」という曲もありますよね。今作の曲目を見たときに「夢」という言葉が、まらしぃさんの活動を示すうえですごく重要なものなのかな、と思いました。

なるほど。でも今回の「夢ハ夢ノママデ」と「I have a dream」では、「夢」の言葉の意味がちょっと違うんですよ。「夢ハ夢ノママデ」は、実際に睡眠している間に見る夢のことを曲にしたものです。僕、1年に1回くらい自分の欲望をすべて実現させたような“スーパードリーム”っていうのを見るんです。そういう夢、ありませんか?

──もしかしたら忘れてしまっているだけかもしれませんが、あまり見た覚えはないですね。

そうなんですね。僕はホントに1年に1回ぐらいの周期でスーパードリームを見るんですよ。例えば自分がそのとき読んでた4コママンガの世界に自分がいる夢とか、自分の理想がすべて叶っている夢。起きてからすごく後悔するんです(笑)。ああ、なんで起きちゃったんだ!って。そういう夢をテーマに書いたのが「夢ハ夢ノママデ」なんです。

──「I have a dream」は、それとは違う夢なんですよね?

まらしぃさる

「I have a dream」はそもそも主役が僕ではなくて。いつも一緒にいる“ピンクのアイツ”も夢を見てるのかなって思って書いた曲なんです(そばに置いてあった猿のぬいぐるみを触りながら)。今回、ナッシュビルでのレコーディングにも連れて行ったし、いろんな景色を僕と一緒に見てますから。

──ライブのときは必ず傍らに置いてますから日本全国回ってますし、もしかしたら思うところがあるのかもしれませんね。

あんまりお風呂にも入れてもらえず、僕のことを恨んでるかもしれませんけど(笑)。今回日本だけではなくて、海外にも行きましたから、ひょっとしたら野望の1つでも抱いてるのかなって思いながら書いた曲ですね。

──これまで何度かインタビューをしてきましたけど、まらしぃさんはあまり目標や夢について語ってこなかったので、「I have a dream」という曲名を見たときは、ついに何か叶えたい夢が見つかったのかと思いました。

僕の夢は特にないです(笑)。今の感じをゆるりゆるりとずっと続けていくのが夢ですから。例えば5年、10年後に今回のインタビューを振り返ったときに「今と同じことを言ってるな」って思えたら最高ですね。

まらしぃ「PiaNoFace」
2017年4月26日発売 / Subcul-rise Record
まらしぃ「PiaNoFace」

[2CD]
2700円 / SCGA-00059~60

Amazon.co.jp

DISC 1
  1. PiaNoFace
  2. stella=steLLa
  3. daydream refrain
  4. Jeanne
  5. 春風
  6. 空想少女への恋手紙(PiaNoFace Album ver.)
  7. KARIN
  8. sakura wishes
  9. 未来ハ廻ル
  10. 夢ハ夢ノママデ
  11. I have a dream
DISC 2
  1. I have a dream(Piano Trio ver.) with Bass IKUO, Drum 淳士
  2. Butter-Fly with Bass IKUO, Drum 淳士
  3. bamboo flutter with 尺八 小湊昭尚
  4. Re(piano solo)
  5. 相対人生 with Bass IKUO, Drum 淳士
  6. meteorite with Bass IKUO, Drum 淳士
まらしぃ
まらしぃ
2008年よりニコニコ動画の“弾いてみた”カテゴリなどで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリースした。また2012年10月には初の全編ピアノソロアルバム「V-box」を発表。2013年には事務員Gを新たに加えたアニソンカバーアルバムの続編「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースする一方で、トヨタのハイブリッドカー「AQUA」のCMソングの演奏を担当。「チョコレイト・ディスコ」、「千本桜」のカバーバージョンはいずれも大きな話題を集めた。2015年2月にはdrm(B)、タブクリア(Dr)とともにインストトリオバンド・logical emotionによる初の全国流通盤「LOGISTIC FUNCTION~VOCALOID SONGS COMPILATION~」を発表。2015年7月には音楽ゲーム「BEMANI」シリーズのトラックメーカーとして知られるkors kとのコラボユニット・maras kとしてアルバム「Beat Piano Music」をリリースした。2017年4月には自身にとって3枚目のオリジナルアルバム「PiaNoFace」を発表する。