まらしぃのニューアルバム「PiaNoFace」が4月26日にリリースされる。
彼にとって3枚目のオリジナルアルバムである今作には「未来ハ廻ル」「sakura wishes」といったCM曲や音楽ゲーム「CHUNITHM」でプレイ可能な「stella=steLLa」といった提供曲の数々を収録。これらの曲のほかアルバムのDISC 2にはIKUO(B)、淳士(Dr / SIAM SHADE、BULL ZEICHEN 88)が参加した「meteorite」「Butter-Fly」といった楽曲のほか、尺八奏者の小湊昭尚とのコラボ曲「bamboo flutter」などが収められている。音楽ナタリーではまらしぃへのインタビューを実施し、今作の制作のためにアメリカ・ナッシュビルで行ったというレコーディングでのエピソードや、新曲に込めた思いを聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 寺沢美遊(※アメリカ・ナッシュビルでの写真を除く)
縁が形になった1年
──まずは昨年秋に行われたツアーについてのお話を。前回のインタビューの際に「いい意味で力の抜けた部分もライブの中で作りたい」とおっしゃっていましたが、まさかステージ上にまらしぃさんの部屋が再現されるとは思っていませんでした。
以前からずっとやりたかったアイデアだったんです。ただレーベルの人とか、真面目な人たちを説得するのに時間がかかりまして(笑)。
──ピアノの上に飾ってあったフィギュアは私物ですよね?
もちろん。家から運ぶときに壊れないように丁寧に梱包するのが大変でした。
──兼ねてからのアイデアを形にしたソロのツアーのほかにも、maras kとしてのリリースツアー(参照:まらしぃへのプレゼントも、maras k初ツアー大盛況の中フィナーレ)や、CM出演(参照:まらしぃ、CMで“お風呂のあの曲”演奏)など、昨年はまらしぃさんにとってとても充実した1年だった印象がありました。
kors kさんとのコラボはもちろん、CM出演も含めてすごく素敵なご縁がたくさん形になった1年でした。ノーリツさんのCMは、僕が勝手に給湯器のメロディの “弾いてみた”動画を投稿したことがきっかけになってますから。僕自身はまだCMに出てるっていうことをそこまで実感してなくて、ふわふわしてる感じですね。
アメリカのピアノは鳴り方が違う
──今作「PiaNoFace」は、まらしぃさんにとって3枚目のオリジナルアルバムですが、これまでとは少し変わったタイトルの作品になりましたね。
ライブレポートとかで写真を掲載してもらってますけど、僕は一切顔出しはしてなくて。どうせだったら「顔出ししませんよ」って宣言してる作品が1つくらいあってもいいかな、ということで「NoFace」ってタイトルを思い付いたんですよ。ただ「NO」って言葉はネガティブなイメージが強いので、何か付けられないかなあと思って見つかった“ダジャレ”が「PiaNoFace」でした。
──「NoFace」という通り顔は出していませんが、ジャケットにまらしぃさんの写真が使われるのは、今回が初めてですよね?
初めてです。実は1回くらい僕の写真を使ったジャケットを作ってみたいと思ってたんですけど、やってみてやっぱり恥ずかしかったですね(笑)。顔は写っていないんですけど、ちょっと食べすぎていてお腹が少し膨らんでいたから撮影のときはけっこう心配で……。写真では全然気にならなくていい感じのジャケットに仕上がってよかったです。
──今作では初の海外レコ―ディングをしたというのも1つのトピックスだと思います。アメリカのナッシュビルのスタジオで制作をしたと伺いましたが、海外でのレコーディングはいかがでしたか?
アメリカのピアノは日本のものと鳴り方が全然違って驚きました。日本の場合はおとなしめと言うか、最初に触ったときに鳴り方を確認してどうやってピアノ全体を鳴らしていくかを考えることが多いんですけど、アメリカでは軽いタッチでも全開でピアノが鳴るんですよね。弾いていてすごく気持ちいいんですけど、レコーディングした音をコントロールルームで聴いてみると、実はピアノが強く鳴りすぎていることに気付いて。そこから引き算をしていく作業というか、どうやって弾き手の僕が抑えていくか、みたいな日本でのレコーディングとは逆のアプローチになったのが面白かったですね。海外に行く前から「アメリカのピアノはよく鳴るよ」っていうのは聞いていて。ただ想像よりも音色が強かったので驚きました。
──レコーディング以外ではどこかに足を運びましたか?
普段はあまり旅行をしないんですけど、今回のレコーディングではけっこういろんなところに足を運びました。ただ英語が絶望的にしゃべれないので、もっと事前に勉強しておけばよかったなって後悔してます(笑)。あ、そういえばアメリカでラーメンを食べたんですよ。
──ラーメン同好会(まらしぃが所属するバンド・logical emotionの通称)としては外せない現地グルメですね。
それが「オタクラーメン」っていう名前のラーメン屋さんで(笑)。普通にオシャレな雰囲気のバーカウンターが併設されているようなラーメン屋さんで、面白そうなので入ってみたら普通より3倍くらい脂っこいとんこつラーメンの上に、とてつもないサイズのステーキが乗ったラーメンが出てきて……。
──(笑)。
さすがの僕でも完食するのが大変で。食べたことのないラーメンでしたね。
1週間のうち7日音ゲーをしていた
──アルバムの2曲目「stella=steLLa」は音楽ゲーム「CHUNITHM」シリーズへの提供曲です。以前から音ゲーファンを公言していたまらしぃさんにとっては思い入れの深いコラボなのかなと思いました。
大学時代、時間のある時期はそれこそ1週間のうち7日は音ゲーをやってましたから(笑)。お話をいただいてすごくうれしかったです。
──ゲームとしてプレイされることを想定すると曲の作り方もちょっと変わるのではないですか?
ゲームとして好まれる“譜面”の作り方というか、どうやって音を配置していくかはすごく考えました。ただあんまりゲームのことばかりを考えて作るのもまた違う気がしたので、素直に作りたい曲を書いたあとに、ゲームとしてプラスになりそうな要素を足したくらいです。
──曲中にグリッサンドが多用されているのは音楽ゲームだからこそなのかなという気がしました。
それもありますし、「stella=steLLa」は宇宙をイメージした曲なので流れ星のイメージで入れています。
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CM曲を書くときは妄想から
- まらしぃ「PiaNoFace」
- 2017年4月26日発売 / Subcul-rise Record
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[2CD]
2700円 / SCGA-00059~60
- DISC 1
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- PiaNoFace
- stella=steLLa
- daydream refrain
- Jeanne
- 春風
- 空想少女への恋手紙(PiaNoFace Album ver.)
- KARIN
- sakura wishes
- 未来ハ廻ル
- 夢ハ夢ノママデ
- I have a dream
- DISC 2
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- I have a dream(Piano Trio ver.) with Bass IKUO, Drum 淳士
- Butter-Fly with Bass IKUO, Drum 淳士
- bamboo flutter with 尺八 小湊昭尚
- Re(piano solo)
- 相対人生 with Bass IKUO, Drum 淳士
- meteorite with Bass IKUO, Drum 淳士
- まらしぃ
- 2008年よりニコニコ動画の“弾いてみた”カテゴリなどで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリースした。また2012年10月には初の全編ピアノソロアルバム「V-box」を発表。2013年には事務員Gを新たに加えたアニソンカバーアルバムの続編「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースする一方で、トヨタのハイブリッドカー「AQUA」のCMソングの演奏を担当。「チョコレイト・ディスコ」、「千本桜」のカバーバージョンはいずれも大きな話題を集めた。2015年2月にはdrm(B)、タブクリア(Dr)とともにインストトリオバンド・logical emotionによる初の全国流通盤「LOGISTIC FUNCTION~VOCALOID SONGS COMPILATION~」を発表。2015年7月には音楽ゲーム「BEMANI」シリーズのトラックメーカーとして知られるkors kとのコラボユニット・maras kとしてアルバム「Beat Piano Music」をリリースした。2017年4月には自身にとって3枚目のオリジナルアルバム「PiaNoFace」を発表する。