より純粋な気持ちでカバーできてる

──ニコニコ動画で「めざせポケモンマスター」の“弾いてみた”動画が公開されているのを拝見しまして。動画では曲中でピカチュウの鳴き声が入るところで、まらしぃさん手描きのイラストをカメラに向けているんですよね。これ、CDではどうなってるんだろうと思って聴いてみたら……。

なんかしら弾いてます（笑）。

──そうなんです。で、ピアノで弾くとなると「ピカチュウの鳴き声をどうするのかな」って気になるんですけど、無理に鳴き声をピアノで再現しようとはしていない。曲間に入って心地よいフレーズをハメてる印象を持ちました。

よかった。アニソンに出てくるかけ声とか鳴き声をどうするのかっていうのは、ピアノカバーをするうえでいつも考えることではあるんですけど、なんとなく最初に思い付いたメロディを入れるのがしっくりくるんですよね。やろうと思えば音程を合わせて鳴き声をピアノで再現することができるかもしれないけど。

──無理くり原曲に寄せていない。それこそ自然にアレンジが生まれた部分なんですね。

昔だったらもっと考え込んでたかもしれませんね。でも今は「やりたいから弾きました。自然に弾いてピアノカバーにしました」っていう流れが、よりスムーズになっているのかもしれません。あまり余計なことを考えずに、純粋な気持ちでカバーできてる気がしますね。

──今作の収録曲で、特にアプローチに苦労した曲はどれですか？

「ようかい体操第一」は、台詞が多い曲ですからどう演奏しようかちょっと悩みましたね。僕の中では挑戦的な1曲だったと思います。それと「シュガーソングとビターステップ」。この曲はメロディがカッコいいし、サビは弾いててすごく気持ちいいんですけど、間奏がメチャクチャ難しいんですよね。でもその分、自分の中で腑に落ちるピアノカバーが完成したので達成感を感じられる1曲でもありました。

──アルバムの最後には「創聖のアクエリオン」のカバーが収録されています。前作「Anison Piano」にも収録されていましたが、今回は小湊さんが入ったバージョンに仕上げられています。

この「創聖のアクエリオン」も挑戦をした1曲です。ピアノと尺八っていう珍しい組み合わせをどうしたら魅力的に聴かせられるかをイメージして。頭の中で尺八の音をイメージしながら僕が曲の構成を考えています。小湊さんからはいろんな奏法の尺八の音を聴かせていただいたんですけど、僕からはいつも通り「全ツッパ（麻雀用語で守りに入ることなく、攻めに徹する打ち方を表す）でお願いします」とお伝えしました（笑）。

ピアノという楽器のおかげで

──ニコニコ動画でのコミュニティの参加人数や、Twitterアカウントのフォロワー数が年々増えていますが、ご自身の活動を取り巻く環境やファンの変化は感じていますか？

ファンの入れ替わりはあるなと感じていますけど、基本的にはピアノのことが好きな人が聴いてくれてる印象が強いですね。例えばアニメ、ゲーム、CM、それこそ嵐さんのアルバムでのピアノ演奏だったり、僕の曲を知ってくださる入り口はさまざまなんですけど、「昔、習ってました」とか「今ピアノやってます」とか、「子供に薦めたら親よりもっと熱心なファンになりました」とかが多いですね。

──イベントやライブに親子で来ている方も多いですよね。

ピアノならではの強みだと思います。親の世代、子供の世代など関係なく曲を受け入れてもらえるのは、やっぱりピアノという楽器の裾野が広いおかげだなあと感じますね。

──新旧のアニソンが収められた「Anison Piano2」は、どういうファンが聴いてくれてるかをまらしぃさんが感じ取ったからこそ生まれた作品なのかもしれませんね。

確かにそうですね。前作の「Anison Piano」は、当時の僕がただ好きなアニソンを選んで弾いたものだったのに対して、「2」はさらにそこから僕がもっといろんなアニメを観て、いろんな曲を聴いて、聴いてくれる人のことも考えて、丁寧に選んだ感じがします。

スタッフ　選曲に関してはすべて本人に任せているんです。僕らは許諾を取るだけで。

──じゃあ収録曲のバランスとか、すべてまらしぃさんが考えていると。責任重大ですね。

そうなんですよ。まあだからこそ好き勝手やれてるので、ありがたいことです。

いい意味で力の抜けた姿も

──今後についてもお話を聞かせてください。ある意味これまでの活動の集大成的な「まらフェス」という一大イベントを終えて、これから先のまらしぃさんは今のコラボ相手たちとどんどん関係を深めていきたいという感じなんでしょうか？ それとも新しいコラボ相手を見つけていきたい？

もともと僕は友人関係が広くないというか、少ない人数でわいわいするのが好きな性分なんですよね。なので、しばらくは今一緒にやらせてもらってる人たちと楽しくコラボをしつつ、気が向いたら何か新しいことに手を伸ばすかもしれません（笑）。とりあえず大きいイベントを成功させて、アルバムも作り終えたので2週間くらい雲隠れがしたいんですけど……。

スタッフ　リリースしたからすぐにイベントもあるし、9月からはツアーが始まるからね。

そっかあ。

──（笑）。9月22日からの全国ツアーはどのような内容になりそうですか？

僕がピアノを目いっぱい弾くっていうコンセプトはこれまでのツアーと変わらないんですけど、今回はちょっとメリハリの付いたものにしようと思ってるんです。真面目なところと、いい意味で力の抜けた部分もライブの中で作りたくて。2時間ずっと気を張って集中して演奏するのはもちろん刺激的で見応えもあると思うんですけど、今回の野音でやったみたいにライブの展開がガラッと変わるのもすごく楽しかったんですよね。だからすっごい気合いを入れる瞬間と、僕の素の部分が見えるようなパートも用意したいです。

──ということは、これまでのライブとはまた違った一面が垣間見れるツアーになりそうですね。

そうなんです。僕自身が楽しむのはもちろん、皆さんにも楽しんでもらえる時間を作ろうと今はいろいろ考えています。