アニソンをどう解釈したのか、音に残したい

──好きな曲ばかりとはいえ、けっこう勇気のある選曲ですよね。「残酷な天使のテーゼ」「創聖のアクエリオン」「鳥の詩」と、かなりの大ネタ、アンセムもカバーしている。「鳥の詩」なんてまさに“国歌”なわけだし（笑）。

改めて見てみるとそうですね（笑）。選んでる段階では「ホントに自分が好きだからやります！」っていう曲だけを集めただけだったのに。だけど好きな曲しか選んでないからこそ1曲1曲としっかり向き合いたい。今まで以上にその曲と自分のコアなところにまで踏み込んだカバーをしたいっていう気持ちはありました。

──「First Piano」とほぼ同じ感想になってしまうんですけど（笑）、「Anison Piano」も確かにまらしぃさんがプレイする意味のあるアルバムになっていると思います。「V-box」のインタビューのときにも言っていた通り、まらしぃさんがカバーするとホントにメロディが際立つんですよ。

ありがとうございます。そのインタビューのときにお話したことなんですけど、オープンチューニングみたいなことをするのが難しい、逆に言うとキレイに和声を聴かせられるピアノという楽器でアニソンをカバーする意味についてはホントに考えました。

──ええ。実はエモいギターロックの「君の知らない物語」にせよ、景気のいいダンスミュージックである「太陽曰く燃えよカオス」「only my railgun」にせよ、「尊敬するアーティスト：beatmania系クリエイター」って言い切るまらしぃさんならではのアレンジになっている。ビート感は生かしつつも、メロディにフォーカスすることで楽曲に新しい解釈を与えている。

そう聴いてもらえるとうれしいですね。まあある意味、それが歌モノをピアノでカバーするときの弱点でもあるんですけど（笑）。アニソンやJ-POPってAメロ、Bメロ、サビを2コーラス分繰り返す構成が多いじゃないですか。歌モノなら歌詞が違うから2回同じことを繰り返してもちゃんと変化を付けられるんだけど……。

──そうか。インストで同じことを繰り返すとやたらと平坦なことになる。

極端な話、弾く意味すらなくなるんですよ。1コーラス目をレコーディングしておいて、そのデータを2コーラス目にコピペすれば成立しちゃいますから（笑）。だから歌詞の意味を考えつつ、いかに1コーラス目と2コーラス目の響きを違うようにするか？ いかにそれぞれのメロディを立たせるか？ そのための最適なアレンジはどういうものなのか？みたいなことはホントに考えましたね。好きでカバーしている18曲なので。自分はどう解釈したのか？ どのフレーズがカッコいいと思ったのか？ どの展開が面白いと思ったのか？っていうことを音にしておきたかったんです。

楽しみの核心にさらに近づくために

──今後、やってみたいことってあります？

こういうときって「すごいプレイヤーになって武道館を埋めるぜ！」とかカッコいいこと言ったほうがいいんですよね？

──そういうお言葉をいただけると、インタビューがビシッと締まる気がします（笑）。

でもそういうこと考えたことがないんだよなあ（笑）。ただそれこそCMを通じてより多くの人に僕の演奏を聴いてもらうこともそうだし、オリジナルアルバムを作ったこともそうなんですけど、だんだんやりたいことをやれるようになっている感覚はあって。今までの活動ももちろん楽しかったんですけど、今はより楽しいし、自分が思う楽しいことの核心に迫れている感じがするんですよね。だからこれからも曲を書くのも「艦これ」をするのもベッドの上っていうユルい感じではあるものの、CMやオリジナルアルバムみたいなお話とか、それこそ武道館みたいな大きなお話が来たときにはそれにちゃんと向き合う。自分自身の状況はユルいながらもちゃんと密度のあることを続けていけたら、以前から聴いてくれている人はもちろん、新しい人にも楽しんでもらえて、しかも自分もより楽しみの核心に近付けるんじゃないかな、っていう気はしてますね。