24歳時点の僕を記録したい

──実際まらしぃさんらしいアルバムになりましたよね。1曲目の「うらめし太郎」や2曲目「踊ル猫曰ク」みたいな、ゲーム音楽の中でも特にトランス系が好きなまらしぃさんならではの曲もあれば、このアルバムには「未来デリバリー」や「Sogna」みたいな美メロを聴かせるまらしぃさんもいるし、「blue piano」みたいにメロディはさておきリズムを強調する、ハードなダンスミュージック仕様のまらしぃさんもいる。

「お惣菜」みたいなふざけた曲もあり（笑）。

──あはははは（笑）。で、7曲目以降では和モノのメロディをエモく聴かせて……。

13曲目の「わたしの卒業」あたりで泣かせにかかって（笑）。

──はい（笑）。そして最後にクラシック出身のプレイヤーならではのテクニカルな2曲と、ジャジーな「金剛」で締める。トラックリストをブロック分けして、ジャンルやテイストをキレイに整理分類してますよね。

曲をとにかくいっぱい作ってからそれぞれの曲をカテゴライズしてみた感じですね。ちょうど今年の誕生日頃から録り始めたアルバムなので、24歳時点の僕っていうものが記録できたらいいなと思っただけというか。左手がワシャワシャ動いてリズムを刻む曲や、メロディアスな曲やバラードチックな曲みたいな、普段やっているタイプの曲はもちろん大好きですし、これまで披露する機会はなかったけどアルバムの最後のあたりに入れた曲みたいなのも好きだったりはしますし。

生活環境ごと刻印されたアルバム

──アルバムの制作に入った時点で「24歳のまらしぃの自己紹介的アルバム」にしようと？

いや、今言ったこともある意味後付けですね。単に今聴きたいもの、今弾きたいものがたまたまこのジャンル、この16曲だったっていうだけ。その曲たちに何か1つテーマを与えるとしたら「24歳のまらしぃ」なんだろうなって。だってメロディを思い付いたらICレコーダーに録音しておいて、あとからそこにコードを乗せるみたいな作り方をした曲が多いですし。最初からコンセプトやテーマがあったわけではないですね。

──そのメロディはどういうタイミングで思い付くんですか？

タイミングかあ。ピアノに向かっていろいろ試行錯誤しつつ、なかなかよさそうなメロディの断片ができたら、そのメロディまでどういうふうに曲を展開させていくか、みたいなことを考えていくことが多いですね。あと「blue piano」なんかは、どこをキレイに聴かせたいとか、そういうことは考えずに、とりあえず適当にリズムを刻んで遊んで。そうしているうちに面白いフレーズが浮かんだらそのまま採用っていう感じで作りました。

──メロディがどこかから降ってくるみたいな感じではなく、きちんと「曲を書こう」って鍵盤に向かうんですね。

生活環境がそうさせるんですよ（笑）。家にいるときは基本的にベッドの上で生活しているので。ベッドのすぐ横にパソコンと鍵盤が並んでるから、何かメロディを思い付いたら、ベッドに座ったまま鍵盤を弾きつつ作曲をして、煮詰まったり飽きたりしたらパソコンをイジって、眠くなったらそのまま寝ちゃう、と。

──ベッド、鍵盤、パソコンが描く三角形の中でたいていのことが完結する（笑）。

この環境だと、パソコンで動画サイトを巡ってる最中に「そろそろ書かないとマズいよな」みたいな強迫観念に駆られたときもそのままピアノに向かえるし、けっこう便利ですよ（笑）。

──そういう意味でも24歳現在のまらしぃさんの姿が……。

刻まれたアルバムになってます（笑）。

フラれた弟に「ざまあ！」と叫ぶ“愚者”

──ボカロ曲として発表していた「アマツキツネ」のインストバージョン以外は、書き下ろし曲ですか？

そうですね。14曲目の「愚者のロンド」の元ネタは小学校のときに作った曲。弟が失恋したときに「ざまあ！」って感じで遊びで書いた曲なんですけど……。

──お兄ちゃん、ヒドいっス（笑）。

我ながらそう思ってます（笑）。で、今回オリジナルアルバムを作るに当たって、なんかそういう曲があっても面白いのかなと思って復活させることにしたんですけど、そのとき弟に「どういうタイトルがいい？」って聞いたんです。

──弟さんは失恋してまで曲のモチーフを提供してくれた人ですもんね（笑）。

なので聞いてみたら「愚者のロンド」って言うので「じゃあそれ採用」ってことに（笑）。ただ当時書いたのは20秒バージョンだったので、それは14曲目、イントロダクションとして使って、そのフレーズを膨らませつつ15曲目の「愚者のロンド -輪廻-」を書いてみました。