プロデューサー大森靖子によるメンバーのガチ評価
──MAPAがCDデビューを果たしてから、ちょうど1年が経過しました。そこで今回はメンバーそれぞれについて、音楽プロデューサーの大森さんから「成長ポイント」「努力する姿勢」「アイドルとしての魅力」などを査定していただきつつ、「今後の課題」にも言及していただければ幸いです。
大森 わかりました。私にとって、この4人は平等にかわいい生徒なので忖度なしで厳正にコメントしていきたいと思います。
全員 ひえー、お手柔らかにお願いします!
古正寺恵巳
大森 こう見えて古正寺は甘え上手。人の懐に入って甘えるのがうまいんです。だけどMAPAは古正寺を中心に考えて作ったグループだから、それだけじゃ困るんですね。なのでこの1年、私自身、古正寺に対しては少し突き放していたような部分があったかもしれない。放っておくと、あまりにもセットリストが目に余るときがあるので、注意するようになりました(笑)。
古正寺 アハハ! そのへんは自覚があります。
大森 もちろん古正寺の個性は大事なんですけど、MAPAでは音楽的な部分だけじゃなくて、4人で作るストーリーを見せていきたいんですよ。彼女に関しては、客観的な視点であるとか、バランス感覚が1年で向上したなと感じます。最近の古正寺はさまざまな角度の視点で物事を見ている気がしますね。
古正寺 確かにセットリストを決めるときも「大森さんだったら、どうするかな?」という角度で考えるようにはなりました。自分がやりやすいようにやるだけじゃなく、主催者の意図とかも頭に入れていますし。あえてそこから外すこともありますけど、前に比べると考えることは確実に増えていますね。
──そんな古正寺さんですが、課題を挙げるとしたら?
大森 気合いの入り方にバラつきがあるので、いつでもなんでも全力でやり切ってほしい。
古正寺 耳が痛いです(笑)。常に「もっとがんばらなきゃ!」の精神で行けということなんでしょうけど……そのことは肝に銘じます!
宇城茉世
大森 これまで活動してきた中で、対バン相手や著名アーティストも含め、私がやろうとしているボーカルのスタイルに一番近付ける可能性があるのが茉世。全部を教えたいし、全部を吸収してほしい。だから実際、私のツアーにもコーラスで同行してもらっていますし。
宇城 エヘヘ、うれしいなあ。
──手放しで絶賛されていますが、宇城さんはボーカリストとして具体的にどういう点が優秀なんですか?
大森 歌でピッチやリズムを合わせるのは基本中の基本。「こういうふうに歌うとうまく聞こえるよ」というのもテクニックの一環だし、それは練習すれば誰でもできるようになるはずです。問題はその先。「こういうことを伝えるためには、何が必要なのか?」という表現の部分を身に付けるのが難しいんです。でも茉世は最初からそこに向き合っていた。ボーカルが繊細なんですよ。彼女はZOC(現・METAMUSE)のオーディションに落ちてMAPA入りしたという経緯があるんですね。ZOCは「0か100か?」どころか、「0か1000か?」みたいに極端なグループ。とにかく全力で振り切って自分を出さなくちゃいけない。茉世のボーカルは「36.7」とかの繊細なニュアンスを表現できるからこそ、ZOCにはマッチしなかったんですよ。
宇城 こんなに人から褒められたことないかもしれない(笑)。これからも精進します。私の場合、課題は何になりますか?
大森 茉世は器用だから、現時点でも0から100まで歌を自在にコントロールできると思うのね。だけど、ときには100以上の数字も出してほしい! ボーカリストとして、さらにギアを上げていく作業が今後は求められるかな。でもこれは本当に難しくて、プロのボーカリストが10年かかってできるかどうかというレベルの話なんです。これまでステージ経験がなかった茉世にそれを求めるのは酷かもだけど、期待しているからこそ「もっと!」と思っちゃうんですよね。
紫凰ゆすら
大森 ゆすらは社会性が非常に高くて、なんでもこなせるオールマイティなタイプ。ところが一方で、音楽やパフォーマンスに関しては完全にポンコツなんですよ(笑)。これまでの人生で挫折を知らなかった分、自分がポンコツなんだとなかなか認められなかったんじゃないかな。
──それはそれで苦しかったでしょうね。プライドが邪魔するでしょうし。
大森 そう。ゆすらの進化が始まったのは、「自分はできない人間なんだ」と認めたところからなんです。だから今、ステージでの彼女はすごくよくなっていますよ。お客さんからすると、最初からできている人よりも、努力してできるようになった人のほうが輝いて見えることがあるじゃないですか。アイドルとして理想形ですよね。
紫凰 ありがとうございます。(涙ぐみながら)もう本当に泣きそう……。正直、MAPAに入ってからも自分ができない人間なんだって認めたくなかったんですよ。感情的にも傷付きますし。でも、現実を直視するしかないじゃないですか。「もう嫌だ!」という気持ちもあったけど、だからと言ってすべてを投げ出すほどMAPAは自分にとって軽い存在ではなかったから。
古正寺 ゆすらからは、そういった気持ちが痛いほど伝わってくるんです。だから部活の居残り練習みたいに徹底的にマンツーマンで特訓しました。そこにド根性で食らい付いてくるんですよね。最高です。
大森 ゆすらの課題を挙げるとしたら、もっと地に足の着いた努力をしたほうがいい。自分の理想とするイメージが高いことは素晴らしいんですけど、その前に基礎的な部分を補強していかないと。“ガワ”だけ取り繕ってもダメなんですよ。崇高な理想に近付くために、まずはしっかり地力を付けていってほしいです。
──言葉は厳しいですが、愛のある熱血指導ぶりが伝わってきます。
紫凰 「基礎を大事に」というのは、レコーディングのときにもよく言われるんです。せっかく録音した自分の声が消されていくのを見ると悲しいけれど、そういう現実も知っておかないとダメなポイントがわからないじゃないですか。だから、なるべくミックスまで立ち会うようにしています。
大森 その気持ちが素晴らしいよ。根本的に性格が真面目なんだろうね。そこはこれからも大事にしてほしいな。
神西笑夢
大森 笑夢は天才型。METAMUSEでいえば西井万理那タイプ。ステージに立つだけで華があって目立つようなメンバーです。こればかりは努力で身に付くものではないから、貴重な存在ですよね。これ以上、私から言うことはないです(笑)。
──そうおっしゃらずに、今後の課題点なども教えてください。
大森 課題は自分の調子をコントロールすること。お腹が空いたら、パフォーマンス能力が極端に下がりますからね。なるべく空腹にならないように、なおかつ動けるように食べすぎには気を付ける……そんなところでしょうか?
神西 なんだかほかのメンバーに比べて、私のアドバイスだけ子供向けすぎるような気が(笑)。
大森 いや、でも笑夢はどこでもやっていけると思うよ。何かのインタビューで「私、自分がなんでMAPAのオーディションに受かったのかわからない」とか話している記事を読んだけど、そりゃそうだろうなと感じました。理屈じゃ魅力を説明できない。天真爛漫さが笑夢の魅力だから、私から望むことがあるとしたら周りの空気を読みすぎないで奔放に振る舞ってほしいということ。これからもよろしくね!
神西 はい、とりあえずお腹を空かせないように気を付けたいと思います(笑)。
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