音楽ナタリー Power Push - MANNISH BOYS

補完し合う2人の関係

1つのジャンルに縛られてたら欲求不満になる

──一緒に演奏する相手として斉藤さんはどうなんですか?

中村 ギタリストとしてテクニックを求めてるわけでもないし、ノリというか、人間のノリとかあるもんね。セッションしてると、どうしても相手に対して自分の欲望みたいなのが湧いてくるけど、和ちゃんに対しては「そうじゃなくてこう!」みたいなことなことは求めてないし強制しないっていうか。そんなこと考えてないから。その……和ちゃんそのものだからいいんじゃないかと思っています。ジャズっぽいわけではないし……。

斉藤 ジャズとか弾きたいけどねー、そういうの。弾けないけど。

中村 そういうのはお互いにある。でもお互いにできてないみたいな。だからいいんだよね。自分でも思うんだけど、ジャズとしても中途半端だし、ロックだろうがなんだろうが中途半端で、ずっと完成されないまま来たから、それがかえってよかったと思って。完成されてると、なんかその筋の演奏家になっちゃうというか。これ負け惜しみですけどね(笑)。

斉藤 そうね(笑)。

──俺は達也さんはパンクドラマーだと思ってたけど……。

中村 あ? パンク? パンクね。それは隠しておこう(笑)。隠れパンク! 隠れキリシタン的な(笑)。

斉藤 まあ、いわゆるパンクドラマーって、たっつぁんみたいな感じじゃないもんね。

中村 うん。ただザ・スターリンとか、the 原爆オナニーズとかTHE STAR CLUBでやってきたからね。でも彼らだってパンクをやろうっていうより、なんか面白いことをやりたくてやってるんだろうし。パンクの反逆精神はあるだろうけど。それはパンクやってる人に限らず、ジャズやってる人だって、そういうつもりで演奏してる人もいると思うしね。社会批判とか権力批判とか、そういうことを音楽にしてたんじゃないのかな。詩人もそうだろうし。

斉藤 なんていうかな、たっつぁんは表現する手段がたまたまドラマーだったというだけで、別になんでもよかったって人なんだろうなって印象がある。それが絵でも演技でもよかった。でもドラムが叩けたしドラムが好きだから、それで表現してるだけで。

中村 そうなんだよね、ブルースマンになりたいとかでもないし。パンクロッカーになりたいなあとは思ったけど。でも、やっぱし俺、先に進みたいと思ったし、パンク社会みたいなのから抜け出したいと思ったんだよ。自分のリズムに対する欲求とか、あと、リズムを加工したいって欲求もあるし。なんかオリジナルのものを作りたいとか発見したいって思うんだけど、その都度いろんなもんに出会っちゃったりして。大友良英さんのいる世界とか、いろんなリズムやいろんなドラムの人がいて、ドラムだけじゃなくて面白い音を出す人がいて、踊る人もいるし、絵描く人もいるし、やっぱ……大事なのはスピリッツですかね……ってことにしとこうかな(笑)。

──好奇心が大事。

中村 うん。あと、1つのジャンルに縛られてたら欲求不満になるんだと思うんですよ、自分に飽きる。うん。

斉藤 うんうん。

──昨日と同じことをやってる自分に飽きる?

中村 そう。「おおやったぜ!」とか思ってもなんにも変わってないみたいに見えることがあったりして。でも2、3年後に、悩んでる自分が前の自分を振り返ると「あ、もうやってるじゃーん!」ってなるんだよね。要するに、同じところグルグル回ってる感じがしつつ、実際は1年に1ミリぐらいずつ成長してるような気がする。

──10年で1cm?

中村 どえらい少ないなー(笑)。でも1歩でも先に進みたい。

面白くなりゃなんでもいいや!

──斉藤さんも好奇心旺盛で、けっこういろんなことやりたがるほうですか?

斉藤 そうですね、うーん……俺も飽きっぽいので。面白くなりゃなんでもいいや!って感じなんですけど。

中村 ははははは(笑)。

──そんな中で、ご自分のスタイルはどういうものだと考えていますか?

斉藤和義

斉藤 好きなコードとか好きなメロディとか手癖があって、どうしてもこっちいったら、こっち行きたくなっちゃうとか、そういうのはあります。そこから逃れたいとずっと思ってるんですけど、そうは言っても「でもギターが6本の弦って決めたの俺じゃないしなー」とか、そういう結論になっちゃう(笑)。ここ押さえたらこういうコードが鳴るっていうのを崩して、変則チューニングにして誰も理解できないようなものを作ろうとは思わない。やっぱ、どっかポップでありたいというのはずーっと昔からある。ジャズでもポップだなーと思う曲もたくさんあるし、アバンギャルドな音楽でもわかりやすいものもある。ロバート・クワインのギターだって、とんでもなく突拍子もないこともしてるけど、ルー・リードの音楽の中で聴くとポップになる。彼だけでやってるとかなりアバンギャルドなことになるんだけど。そういう組み合わせというか、歯車がきちんと合ったときにすごくポップな音になるっていう音楽が好きなんですよね。

──ポップっていうのは、わかりやすさってことですか?

斉藤 わかりやすさというか、ちょっと笑えたり。うーん……わかりやすさもあるし、カッコいい!ってのもあるし。なんでもいいんですけど、一部の人しかわからないみたいなやつはヤダっていうか。全員がいいと思えるはず、っていうもののほうが好きですかね。

──わかりやすくするための工夫はしてるんですか?

斉藤 工夫かあ……The Beatlesが好きだったりするんで、なるべく曲は短くてそこにぎゅって詰まってるもののほうが好きなんです。長いジャムの曲も好きだけど、自分が世に出すときはサクッと短かめにしたいとか、そういうのはありますかね。

──お話を聞いているとダウンタウンみたいですね。松本人志と浜田雅功がいて、松本1人の笑いだとマニアックでわかりづらい。でも浜田という非常に的確なツッコミがいることで、どこが面白いのか、どこで笑えばいいのか、すごくわかりやすく伝わる。松本1人でやってるとすごくマニアックなものになっちゃうけど、ダウンタウンになると非常にポピュラーな、誰でもわかるような笑いになる。そういうある種の補助線っていうか、わかりやすく見せるための工夫ってあると思うんです。

斉藤 ああ。

──それが斉藤さんの場合は例えばどんなものなのかなと。

中村 自分ツッコミ?

斉藤 ああ、自分ツッコミはいるね、うん。「それはオナニーだぞ」っていう自分がどっかでいるし。「でもオナニーでいいんだよ」っていうもう1人もいるし。たまにすごい思うんだけど、歌なんて誰でも歌えるじゃないですか。うまい下手は置いといて。みんなカラオケでも歌ってるし、学校でも歌ってるし。そういうものを職業にして人前で歌って金を取ろうなんてだいたい図々しいって思ってるんだよね(笑)。図々しいし、ナルシストだし、そもそもそんなものをどっかで信用してないところがあって。だけど、誰かの歌を聞いてグッとくるときもある。声だったり、歌い方だったり、詞の内容だったりいろんなことでグッとくるわけで、さすがこれはお金取っていいよ、とか、芸術になってるな、っていうものがたくさんあるのもわかる。でもやっぱり歌なんて誰でも歌えるんだよ。ギターやドラムはそれなりに練習しないとダメだけど、音楽そのものは言ってしまえば誰でもできんだよ、っていう。

ニューアルバム「麗しのフラスカ」 / 2016年10月19日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
ニューアルバム「麗しのフラスカ」
初回限定盤 [CD] / 3564円 / VICL-65003
通常盤 [CD] / 3240円 / VICL-65004
収録曲
  1. グッグッギャラッグッグ
  2. Honey
  3. レモン
  4. 曲がれない
  5. Only You
  6. レモネード
  7. 真っ赤なバレリーナ
  8. Jungle Hurricane
  9. ダンゴムシ
  10. うんこメーカー
  11. 麗しのフラスカ
  12. My Dear FLASKA
初回限定盤ボーナストラック
  1. Mach Venus feat. 東京スカパラダイスオーケストラ(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO)
  2. ざまみふぁそらしどfeat. 東京スカパラダイスオーケストラ(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO)
  3. LOVE&LOVE feat. 東京スカパラダイスオーケストラ(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO)
  4. 1.2.3.4

MANNISH BOYS「2016-2017 TOUR」

2016年11月3日(木・祝)神奈川県 Yokohama Bay Hall
2016年11月5日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCKさいたま新都心 VJ-3
2016年11月6日(日)群馬県 高崎club FLEEZ
2016年11月10日(木)宮城県 Rensa
2016年11月12日(土)岩手県 Club Change WAVE
2016年11月13日(日)青森県 Mag-Net
2016年11月17日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
2016年11月18日(金)岐阜県 CLUB ROOTS
2016年11月24日(木)兵庫県 Kobe SLOPE
2016年11月25日(金)滋賀県 SHIGA U★STONE
2016年11月29日(火)愛媛県 WStudioRED
2016年12月1日(木)香川県 高松MONSTER
2016年12月2日(金)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
2016年12月4日(日)高知県 CARAVAN SARY
2016年12月7日(水)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
2016年12月9日(金)富山県 MAIRO
2016年12月11日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
2016年12月13日(火)新潟県 新潟LOTS
2016年12月16日(金)北海道 Zepp Sapporo 
2016年12月17日(土)北海道 帯広MEGA STONE 
2017年1月7日(土)福岡県 DRUM LOGOS
2017年1月9日(月・祝)熊本県 熊本B.9 V1
2017年1月11日(水)大分県 DRUM Be-0
2017年1月13日(金)鹿児島県 CAPARVO HALL
2017年1月15日(日)沖縄県 桜坂セントラル
2017年1月19日(木)大阪府 Zepp Namba
2017年1月20日(金)愛知県 Zepp Nagoya
2017年1月22日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2017年1月24日(火)山口県 周南RISING HALL
2017年1月27日(金)東京都 Zepp Tokyo
MANNISH BOYS(マニッシュボーイズ)

斉藤和義と中村達也によるロックユニット。2011年に結成され、同年行われた「JOIN ALIVE」「ARABAKI ROCK FEST.」「FUJI ROCK FESTIVAL」といったフェスに出演する。その後も斉藤と中村はそれぞれの活動と並行して、ユニットとしての活動も精力的に展開。2012年9月に1stアルバム「Ma! Ma! Ma! MANNISH BOYS!!!」をリリースする。2014年にリリースされたシングル「I am Dandy」の表題曲はドラマ「俺のダンディズム」主題歌として採用された。2016年10月に3rdアルバム「麗しのフラスカ」を発表。11月より過去最大規模のライブツアーを行う。