音楽ナタリー Power Push - MANNISH BOYS
補完し合う2人の関係
斉藤和義と中村達也によるユニットMANNISH BOYSが、3rdアルバム「麗しのフラスカ」をリリースした。それぞれの活動を行いながらジャムセッションを重ねて作り上げられたという本作。音楽ナタリー初登場となる今回はお互いの“補助線”とも言える2人の関係や、MANNISH BOYSとほかのプロジェクトとの違いなどについて語ってもらった。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 江森康之(P1、4)、佐々木コウ(P2、3)
ほじくり返して「これいいじゃん」
──2年ぶりのアルバムですが、2ndアルバム以降もシングルを出しているし、お二人共忙しいのによくコンスタントに作る時間がありますね。
斉藤和義 うん。でも今までジャムってた音源がいっぱいあったので。
中村達也 ほじくり返して「これいいじゃん」とか言ってね。あとは、誰かに丸ごとジャムった音源を渡しちゃって、メロディだろうが歌詞だろうが、ホントに全部思い付くままに作ってもらおうというのもやって。
斉藤 例えば、ジャムってた20~30分の音源を蔦谷好位置くんに、「好きに作り変えてもいいし、そのまま使うもいいし。これでなんか浮かぶやつでもいいし」って渡して完成したのが「グッグッギャラッグッグ」。「真っ赤なバレリーナ」もジャムった音源を鹿野洋平くん(my hawaii)に渡したんだけど、それはほとんどうちらが演奏した音の上に、メロが付いてほぼそのままダビングだけして戻ってきた。
中村 残りの楽曲も過去に録った音源を編集して。
斉藤 新たに録ったのは「Honey」と「1.2.3.4」だけかも。今回は編集作業だったもんね、過去のジャム音源をお互い聴き直して擦り合わせて。「2012年12月のジャム3のテイクいくつがどうこうで」みたいなやり取りをして、まとまりそうなやつを編集してみたり、そのまま使ってみたり。あとはそれをダビングして、歌詞書いて、メロ付けて。
──そういうジャムみたいなものは常にやってるわけですか?
斉藤 そうです。それがすごい溜まりに溜まってて、俺のパソコンに入ってるだけでも16、7時間分くらいあったんで、前からいつかそれをまとめたいなとは思っていたんです。
中村 MANNISH BOYSやり始めたときからだから5年分くらい?
斉藤 うん。
──基本的に曲はそういうふうに作っていくんですか?
斉藤 ほぼそうですね。あとはたっつぁんが送ってくる、口で言ってる……。
中村 エアーデモ?
斉藤 エアーデモ(笑)。それを解読したりとか。
──それはどういう具合に入ってるんですか?
中村 ドドダァンスカ、ドドダァンスカ……みたいな(笑)。
──斉藤さんはそれを「これはこういうことをやりたいんだな」と推測して?
斉藤 そうですね、ふふふ(笑)。でもすごいはっきりしてるデモもあるし。「曲がれない」とかはスカがやりたいとか言って、別のジャムのときに「曲がれないー」とか言ってたのにスカのサウンドをくっ付けた感じ。
中村 そうだったっけ?
──斉藤さんとしては、そういう作り方はMANNISH BOYSならでは?
斉藤 そうですね。
MANNISH BOYSはジャム、斉藤名義は歌モノ
──ご自分のソロのときはそういう作り方はしない?
斉藤 そういうのもありますし、俺が1人で適当に遊んだものを編集する場合もあるし、ハナから歌モノを作る場合もあるし、バラバラですけど、MANNISH BOYSは2人で適当に即興でやって、「ここがよかったねー」っていうところを曲にしていく感じですかね。
──曲にする際に、何か決めごとってあるんですか?
斉藤 あんまりないですね。俺がドラム叩いて、たっつぁんがベース弾いてるときもあれば、俺がドラムマシンとかキーボード叩いて、たっつぁんがギターって場合もあるし。
中村 スタジオ行くとなんか作んなきゃいけないって圧迫感があるから判断できないんだけど、家に帰って改めて聴いていると「あれ? これカッコいいじゃん」とか思ったりして。そうすると、「ここすごいいいよ」って(斉藤に)メールして。家でお酒でも飲んでると気持ちよくなってたりして、いいじゃん、って気付くことがある。
──それは演奏にすごくグルーヴがあるとか、ノってる感じがあるとかそういうことなんですか?
斉藤 それがデカいですかね。レコーディングのときは「なんか音出したらとにかく録っといて」ってエンジニアに言ってるんで。「この感じでやろうか」って改まって演奏する場合もありますけど、そうやると大体かしこまっちゃう。
中村 かしこまる。
斉藤 うん、だからなるべくジャムの音源のまんまを使って、それを歌モノにしたりインストにしたり。1stアルバムはループが多かったけど、今回はほぼジャムったのが多いですかね。編集してない。若干刻んだりくっ付けたところはあっても、基本的には演奏のままが多いですね。だからどう弾いたかとか叩いたかとか覚えてないもんね。
中村 覚えてない(笑)。あとで、ツアーのために自分の曲をコピーするって感じ。
斉藤 まあ、僕の場合はけっこう昔からそういうやり方でやってますね。バンドのメンバーとやることもあるし、1人でスタジオでとりあえずドラムだけ叩き倒してきて、家でそこに適当にギター弾いたり、鼻歌歌ってみたり。レコーディングでニューヨークに行ったときとかでも、ロバート・クワインとかマーク・リボーとかチャーリー・ドレイトンとか、そういう人たちとスタジオに入ってばーっと適当にセッションするのが昔から好きで。昔、小田原豊さん、伊藤広規さんと3人でSEVENっていうバンドやってたときもそういう感じでやってて。
──シンガーソングライター的に、ギターをつま弾きながら鼻歌が出てきて、言葉が出てきてって作り方も当然なさるわけですよね?
斉藤 そうですね。
──ジャムで作ると、作る曲の傾向って変わってきますか?
斉藤 どうですかね、自分の手癖っていうか、好きなコードについ行っちゃったり、っていうのはどっちもありますかね。
──結果としてはどちらも斉藤和義っぽいものになる?
斉藤 ですかね。でもマニッシュを始めてからは、斉藤のソロ名義は歌モノって感じの意識になってきましたかね。
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- ニューアルバム「麗しのフラスカ」 / 2016年10月19日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 初回限定盤 [CD] / 3564円 / VICL-65003
- 通常盤 [CD] / 3240円 / VICL-65004
収録曲
- グッグッギャラッグッグ
- Honey
- レモン
- 曲がれない
- Only You
- レモネード
- 真っ赤なバレリーナ
- Jungle Hurricane
- ダンゴムシ
- うんこメーカー
- 麗しのフラスカ
- My Dear FLASKA
初回限定盤ボーナストラック
- Mach Venus feat. 東京スカパラダイスオーケストラ(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO)
- ざまみふぁそらしどfeat. 東京スカパラダイスオーケストラ(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO)
- LOVE&LOVE feat. 東京スカパラダイスオーケストラ(Live at RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO)
- 1.2.3.4
MANNISH BOYS「2016-2017 TOUR」
- 2016年11月3日(木・祝)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2016年11月5日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCKさいたま新都心 VJ-3
- 2016年11月6日(日)群馬県 高崎club FLEEZ
- 2016年11月10日(木)宮城県 Rensa
- 2016年11月12日(土)岩手県 Club Change WAVE
- 2016年11月13日(日)青森県 Mag-Net
- 2016年11月17日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2016年11月18日(金)岐阜県 CLUB ROOTS
- 2016年11月24日(木)兵庫県 Kobe SLOPE
- 2016年11月25日(金)滋賀県 SHIGA U★STONE
- 2016年11月29日(火)愛媛県 WStudioRED
- 2016年12月1日(木)香川県 高松MONSTER
- 2016年12月2日(金)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2016年12月4日(日)高知県 CARAVAN SARY
- 2016年12月7日(水)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2016年12月9日(金)富山県 MAIRO
- 2016年12月11日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2016年12月13日(火)新潟県 新潟LOTS
- 2016年12月16日(金)北海道 Zepp Sapporo
- 2016年12月17日(土)北海道 帯広MEGA STONE
- 2017年1月7日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年1月9日(月・祝)熊本県 熊本B.9 V1
- 2017年1月11日(水)大分県 DRUM Be-0
- 2017年1月13日(金)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2017年1月15日(日)沖縄県 桜坂セントラル
- 2017年1月19日(木)大阪府 Zepp Namba
- 2017年1月20日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年1月22日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年1月24日(火)山口県 周南RISING HALL
- 2017年1月27日(金)東京都 Zepp Tokyo
MANNISH BOYS(マニッシュボーイズ)
斉藤和義と中村達也によるロックユニット。2011年に結成され、同年行われた「JOIN ALIVE」「ARABAKI ROCK FEST.」「FUJI ROCK FESTIVAL」といったフェスに出演する。その後も斉藤と中村はそれぞれの活動と並行して、ユニットとしての活動も精力的に展開。2012年9月に1stアルバム「Ma! Ma! Ma! MANNISH BOYS!!!」をリリースする。2014年にリリースされたシングル「I am Dandy」の表題曲はドラマ「俺のダンディズム」主題歌として採用された。2016年10月に3rdアルバム「麗しのフラスカ」を発表。11月より過去最大規模のライブツアーを行う。