ナタリー PowerPush - 家の裏でマンボウが死んでるP
人気ボカロPがユニットに進化 知られざる姉弟関係を暴く
アルバムは「カラフルな混乱」を目指した
──今回発売されるデビューアルバムの収録曲ってバラエティに富んでますよね。タカハシさんが言うところの“ネタ曲”、ポニー直系の8ビートのパンク風サウンドにトリッキーな詞が乗るものもあれば、メロウなメロディのギターポップもあるし、ゴリゴリのテクノもある。
タカハシ 「集大成的なアルバムを作ろう」っていうコンセプトだからですね。13曲中10曲は既に発表済みのものなんですけど、元々その時々で興味のある音楽を作るようにしていたんでジャンルはバラバラなんです。で、それが家の裏でマンボウが死んでるPらしさでもあると思ってるんで、アルバム全体を1つのトーンにまとめずに、あえて散らかしてみました。アルバム用に書き下ろした「My Colorful Confuse」なんて曲自体が散らかってますから。
──確かにクルクルと表情を変える、ド派手な1曲ですよね。
タカハシ 最初はメタルっぽいのに、途中でちょっと聴かせるピアノを入れてみたり。歌詞もグチャグチャで、僕の叫びまで入っちゃってるし。「三つの首の魔犬召還(ケルベロスレンタル)」って!
竜宮 ありきたりな言い方なんですけど、元々ヨウの作る曲には、おもちゃ箱をひっくり返したような雰囲気があったし、今回のアルバムは特にそういう印象が強いですよね。だから私も、ジャケットのデザインはできるだけ派手に、カラフルにしようかな、って。
タカハシ まさに「Colorful Confuse」(笑)。でも、ホントにただ単にグチャグチャしているだけじゃなくて、笑いあり、感動ありっていうふうにはしたかったんですよ。そういう意味ではキチンと「カラフルな混乱」(Colorful Confuse)って感じのアルバムになったかな、とは思ってます。
人の声を使った曲に挑戦したい
──制作中に苦労した点は?
タカハシ ギターを録り直したりはしてるけど、元からあった曲中心のアルバムなんで、レコーディング中は特に困ったり、悩んだりはしなかったですね。ただ、これまではニコ動で映像付きで聴いてもらうことを前提に曲を作っていたんで、それがCD単体になったときにどこまで楽しんでもらえるのかな、っていう不安はちょっとありました。
──それをどうやって解消しました?
タカハシ ひとえにミックスの力です。今回、プロのエンジニアの方にミックスをお願いしたんですけど、僕がミックスするのとは全然違いましたから。ホント「俺のミックスはなんだったんだ!?」っていうくらい、クリアで聴きやすくなってるし、僕ですら気付かないところで意外な音が鳴ってたりする新しい発見もあるし。
竜宮 ホント、一瞬違う曲を聴いてる感じになるくらい良くなってるよね。
──最後に、今後はどんな方向に進んでいきたいですか?
タカハシ 人の声を使った曲を作ってみたいですね。早口で広い音域を歌わせることはボカロにしかできないけど、「My Colorful Confuse」のようにセリフを喋ったりするのは人にしかできない。まだまだボカロにしかできないことと、人にしかできないことってあると思うんで、それをもっとうまく混ぜられたらいいなとは思ってます。それに「ボカロの声は気持ち悪い」っていう人も当然たくさんいるし、逆に「もうボカロじゃなきゃイヤだ」っていう中高生もいる。ボカロの声と人の声の両方の良さを1曲の中に、それこそグチャグチャに取り込めたらもっと多くの人に聴いてもらえるはずですから。
──お2人が人間のボーカルものを作ったら、ファンはビックリすると思います。
タカハシ 確かにボカロPって「ボーカロイドのためのキャラクターソングを作る人」って見られがちだし、実際そういうことを要求されることもあるんですよ。オリジナルアルバムなのにジャケットが初音ミクの絵になったり。もちろんそういう作品の中には素晴らしいものがたくさんあるんだけど、音楽活動をこれからもずっと続けていくには、ボカロ人気に頼ってばかりもいられない。だからこそ、もっとオリジナルな曲を作っていくことで「家の裏でマンボウが死んでるPの作る曲だから聴く」って言ってくれるファンを増やしたいんです。
竜宮 おっ、良いこと言った!
タカハシ どうだっ! 今の話でさっきのカネの話の失点は帳消しでしょ。
竜宮 はい、よくできました(笑)。
CD収録曲
- 家の裏でマンボウが死んでる
- 神様はエレキ守銭奴
- 誕生日、ペペロンチーノにやさしくされる
- へし折れろ、君の心
- 消火器がダンディーで気が利く場合
- おでこに生えたビワの性格が悪い
- おニューのかさぶた、ペットに食われろ
- 筋肉痛駆け落ちの滑稽な結末
- My Colorful Confuse
- ウヒヒ!脱穀しそこねた!
- キッチンでカッパがタニシ茹でてる
- 粘着系男子の15年ネチネチ
- クワガタにチョップしたらタイムスリップした
初回限定盤DVD収録内容
- クワガタにチョップしたらタイムスリップした
- 神様はエレキ守銭奴
- 筋肉痛駆け落ちの滑稽な結末
- おでこに生えたビワの性格が悪い
- 消火器がダンディーで気が利く場合
- My Colorful Confuse
- 粘着系男子の15年ネチネチ
初回限定盤封入特典
数量限定の初回限定盤には「ビックリ!マンボウシール」2枚 &「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」イラストノベルが封入。どちらも竜宮ツカサが描き、タカハシヨウが書く、プレミアムな内容。
家の裏でマンボウが死んでるP
(いえのうらでまんぼうがしんでるぴー)
音楽を担当するタカハシヨウと、絵師の竜宮ツカサによる姉弟ユニット。タカハシヨウが2009年にニコニコ動画に発表した「家の裏でマンボウが死んでる」が注目を集め、その後も意味不明なタイトルから想像できない感動的な歌詞世界と、ボーカロイドの特性を生かしたハイテンションかつキャッチーなサウンドでニコニコ動画ユーザーを中心に人気を獲得する。2012年4月にSPEEDSTAR RECORDSよりアルバム「My Colorful Confuse」でメジャーデビュー。