ナタリー PowerPush - 家の裏でマンボウが死んでるP
人気ボカロPがユニットに進化 知られざる姉弟関係を暴く
ニコ動の再生回数が集客に結びつかない
──一方、竜宮さんはなぜ絵師に?
竜宮 ある日突然弟から「ボカロで『家の裏でマンボウが死んでる』って曲を作ってニコ動にアップするから、初音ミク描いて」って言われたので。
タカハシ 雑な発注だなあ(笑)。
竜宮 ホントだよ!「まず、家の裏でマンボウが死んでるってどういうこと!?」っていうところから説明してほしかった。
──女の子のシャンプーに唾を入れてたと思ったら、今度はマンボウが死んでるか、と。
竜宮 そうなんですよ! ポニーだって、演奏してるのが他人だったら「あはは! この人たち、面白ーい!」って観ていられたと思うんですけど、身内だけに普通に心配してて……。
タカハシ 初めて「病気みたいに君が好き」の歌詞を見せたときの感想が、「ここに書いたことをホントにやっちゃったらニュースになるんだからね」でしたから(笑)。
──なのに、なぜ引き受けたんですか?
竜宮 小さい頃から絵を描くのが好きで、個人サイトでイラストを発表したり、映像系の大学に通ってたりしていたんです。あと、頼まれたのがちょうど初音ミクが有名になりだした頃で、私自身「ミクを描いてみたいな」って思ってたから。ただ「トータルで2000回も再生されればラッキー」くらいにしか思ってなくて「簡単な絵でいいや」って1時間もかけずに描いて渡したら……。
タカハシ 思いのほかウケて、確か1カ月で10万再生くらいいったのかな。
竜宮 あんなたくさん観てもらえるならちゃんと描いておけば良かった。
タカハシ でも、再生回数が多くても、ライブの集客には全っ然結びつかないんですよ! これが。
──あっ、そういうものなんですか?
タカハシ 「マンボウ」のあと1カ月くらいで3曲発表して、結構再生されたんですけど、ボカロが好きな人は高円寺Mission's(ライブハウス)になんて来ねえんだなということが明らかになり(笑)。だから、しばらく投稿するのをやめてたんですけど、その年の冬にバンドメンバーの1人が病気になってしまって、ポニーを活動休止せざるを得なくなって。それで、2010年3月に最後のライブをやることになって、その告知用にまた制作を再開して。それ以来ボカロ1本で活動するようになりました。
打ち合わせしなくても意思の疎通が図れてる
──曲と映像は普段どういう手順で制作しているんですか?
タカハシ 僕、歌詞を先に作るんですけど、まずタイトルを決めてそこからイメージされるストーリーを詞にしていくか、「卒業ソング」とか「タイムスリップもの」っていうテーマを決めて作詞するかで。そうやってタイトルと詞が出来上がったら、それを姉に見せてイラストを発注しています。で、描いてもらっている間に、僕はメロディを作って、アレンジを考えて、最後にそれを合体させるって感じだよね。
竜宮 うん。打ち合わせとかも特になく、歌詞だけポンッと渡されます。
──「こんなテイストの絵を描いて」みたいな注文はないんですか?
竜宮 一応、アルバムのタイトル曲「My Colorful Confuse」のときは、歌詞をもらった数日後に「自力半重力」っていうフレーズについて「座禅をしながらジャンプしているイメージでお願い」とは言われました。ただ実は私、それを言われる前から座禅の絵を描いてたんですよ。「ここは座禅だろ」と思って(笑)。
──さすが姉弟!
竜宮 だから、打ち合わせしなくても意思の疎通を図れている気はします。歌詞を初めて読んだときの直感を元に楽しく描いてるだけなんだけど、描き直させられることもないですし。逆に、ガッツリ話し合ったりしたらシラケちゃって描けなくなるかも。
タカハシ 確かに。だから、好き勝手に描いてもらってるんですけど、毎回出来上がった映像を観るとビックリするんですよ。一応、バトルっぽい描写や動きのある絵が好きなのは知ってるけど、ここまで派手にするかっ!って。
竜宮 平成ガメラ3部作(※監督を金子修介、特技監督を樋口真嗣が務めた1995年公開の映画「ガメラ 大怪獣空中決戦」から1999年の「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒」までの3作)とか、子どものころから怪獣映画が大好きなんで(笑)。
タカハシ でも、その映像が音にハマってるから、まあいいか、って。
CD収録曲
- 家の裏でマンボウが死んでる
- 神様はエレキ守銭奴
- 誕生日、ペペロンチーノにやさしくされる
- へし折れろ、君の心
- 消火器がダンディーで気が利く場合
- おでこに生えたビワの性格が悪い
- おニューのかさぶた、ペットに食われろ
- 筋肉痛駆け落ちの滑稽な結末
- My Colorful Confuse
- ウヒヒ!脱穀しそこねた!
- キッチンでカッパがタニシ茹でてる
- 粘着系男子の15年ネチネチ
- クワガタにチョップしたらタイムスリップした
初回限定盤DVD収録内容
- クワガタにチョップしたらタイムスリップした
- 神様はエレキ守銭奴
- 筋肉痛駆け落ちの滑稽な結末
- おでこに生えたビワの性格が悪い
- 消火器がダンディーで気が利く場合
- My Colorful Confuse
- 粘着系男子の15年ネチネチ
初回限定盤封入特典
数量限定の初回限定盤には「ビックリ!マンボウシール」2枚 &「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」イラストノベルが封入。どちらも竜宮ツカサが描き、タカハシヨウが書く、プレミアムな内容。
家の裏でマンボウが死んでるP
(いえのうらでまんぼうがしんでるぴー)
音楽を担当するタカハシヨウと、絵師の竜宮ツカサによる姉弟ユニット。タカハシヨウが2009年にニコニコ動画に発表した「家の裏でマンボウが死んでる」が注目を集め、その後も意味不明なタイトルから想像できない感動的な歌詞世界と、ボーカロイドの特性を生かしたハイテンションかつキャッチーなサウンドでニコニコ動画ユーザーを中心に人気を獲得する。2012年4月にSPEEDSTAR RECORDSよりアルバム「My Colorful Confuse」でメジャーデビュー。