ナタリー PowerPush - 家の裏でマンボウが死んでるP
人気ボカロPがユニットに進化 知られざる姉弟関係を暴く
2009年に「家の裏でマンボウが死んでる」という衝撃的なボーカロイドナンバーを引っさげニコニコ動画に現れた、その名も家の裏でマンボウが死んでるP。以来「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」「My Colorful Confuse」など、独特の世界観をもつ楽曲を30曲以上制作し、ニコ動では500万回以上の再生回数を獲得している。
そんな人気ボカロPが、来る4月25日にメジャーデビューアルバム「My Coloful Confuse」をリリースする。さらにこれに伴い、自身の名前をタカハシヨウと発表。これまで一連のマンボウ作品の映像を手がけてきた、タカハシの実姉・マンボウの姉、改め竜宮ツカサをアートワーク担当の絵師として正式メンバーに迎え入れ「家の裏でマンボウが死んでるP」を、タカハシと竜宮のユニット名にすることを発表した。
楽曲から編成まで、全てにおいて異例ずくめのボカロPはいったいどんなユニットなのか。その実態に迫った。
取材・文 / 成松哲
「家の裏でマンボウが死んでるP」って名乗るのがイヤだった
──メジャーデビューにあたって「家の裏でマンボウが死んでるP」がタカハシさんの個人名義から竜宮さんとの共同名義になったことに驚いたファンも多いのでは?
タカハシヨウ 確かに反響はありました。なんていうか、個人で「家の裏でマンボウが死んでるP」って名乗るのがすごくイヤだったんですよ。変だし。
竜宮ツカサ 自分でつけたくせに(笑)。
タカハシ ただこの知名度はオイシいし、名義を変えて「改名すんなよ」って言われるのもイヤだったので、2人のものにしちゃおうと。姉に家の裏でマンボウが死んでるPの半分を背負ってもらえば、名義は残りつつも僕は別の名前を名乗れるから。
竜宮 「2人でがんばろうね」っていう、清い心で提案してきたんだと思ってたのに、利用されてただけだったのか……。
タカハシ でも「マンボウの姉」って名前もイヤじゃなかった?
竜宮 まあね。ヨウの曲のイラストを描くことになって「実際にマンボウの姉なんだし」っていうノリだけで「マンボウの姉」って名乗り始めたんですけど、最近、ヤマハの「VY1」っていうボーカロイドソフトのパッケージデザインだったりとか、ヨウの曲のイラスト以外のお仕事もいただくようになったんですね。そうするとクライアントさんのところに伺ったとき、受付で「2時からお約束をいただいているマンボウの姉と申します」って言わなきゃいけなくて。
──受付の人には「マンボウさんと約束したら、なぜかお姉さんが来た」っていうふうに聞こえなくもない(笑)。
竜宮 そうなんですよ。そういう複雑な空気を作り出してしまうのがホントに申し訳なかったので、別の名前が欲しかったのは確かですね。
タカハシ でしょっ! 僕はそこに気を遣ったんですよ(笑)。
竜宮 絶対嘘だっ!
劇場版「クレヨンしんちゃん」の影響が大きい
──ニコ動にボカロ曲を投稿してみようと思ったのはなぜですか?
タカハシ 当時やっていたバンド活動の宣伝のためですね。
──「ポニー」ですよね。
タカハシ はい。中2のころ、ゆずが好きでアコースティックギターを始めて、しばらくしてからBUMP OF CHICKENのファンになってエレキギターを買って。高校受験の前後にはthe pillowsも聴くようになって、高校の軽音楽部でポニーを組みました。
竜宮 でも、BUMPやthe pillowsとはカブらないどころか、かすりもしない音楽で(笑)。
──そうなんですよね。RAMONESっぽいシンプルなパンクサウンドをバックに「?好きな女のコの家のシャンプーに自分の唾を混ぜたい」(「病気みたいに君が好き」。のちにボカロ版も制作)って歌っているタカハシさんをYouTubeで観ましたよ。
タカハシ 観ちゃいましたかあ……。いや、軽音では2つバンドを組んでたんですよ。ちゃんとしたJ-ROCKをやるバンドと、もうひとつ悪ふざけをするために結集したバンド。それの悪ふざけするほうがポニーなんですけど、あるとき「ライブの告知にボカロを使えば曲を聴いてもらえるし一石二鳥」って話になって。僕自身、ちょうどアゴアニキさんの「ダブルラリアット」に感動してボカロ曲を聴き始めてたので、2009年7月にバンドの曲だった「家の裏でマンボウが死んでる」をセルフカバーしてニコ動に投稿したんです。
──そのニコ動デビュー曲のタイトルであり、今やユニット名にもなった「家の裏でマンボウが死んでる」の由来って?
タカハシ なんでしょうね? 自分でもうまくは説明できないし、説明してもしょうがないやっていう気持ちもあるし。
──説明してもしょうがない?
タカハシ 自分が面白いと思った単語を組み合わせただけなんですけど、これがなぜ面白いのかを説明することって「このダジャレは、これこれこうだから面白いんだよ」って説明するのと同じことのような気がして。それを言った瞬間、面白くなくなっちゃう。だから「なんでマンボウが死んでんの?」って訊かれても絶対答えないようにしてるんです(笑)。ただ、当時も今も、そういうタイトル付けの部分や、楽曲のストーリー内容は劇場版「クレヨンしんちゃん」の影響を受けてるのかな、っていう気はしてますね。
竜宮 新しいのが公開されると観に行ってるもんね、1人で(笑)。
タカハシ そのくらい好きなんで。劇場版しんちゃんのストーリーって、普通の一家が普通に日常を過ごしていると、突然ヘンなヤツらが現れて、ヘンな方向に展開していくんですよね。最近それを思い返して「あっ! 影響受けてんなあ」って気付いたんです。
CD収録曲
- 家の裏でマンボウが死んでる
- 神様はエレキ守銭奴
- 誕生日、ペペロンチーノにやさしくされる
- へし折れろ、君の心
- 消火器がダンディーで気が利く場合
- おでこに生えたビワの性格が悪い
- おニューのかさぶた、ペットに食われろ
- 筋肉痛駆け落ちの滑稽な結末
- My Colorful Confuse
- ウヒヒ!脱穀しそこねた!
- キッチンでカッパがタニシ茹でてる
- 粘着系男子の15年ネチネチ
- クワガタにチョップしたらタイムスリップした
初回限定盤DVD収録内容
- クワガタにチョップしたらタイムスリップした
- 神様はエレキ守銭奴
- 筋肉痛駆け落ちの滑稽な結末
- おでこに生えたビワの性格が悪い
- 消火器がダンディーで気が利く場合
- My Colorful Confuse
- 粘着系男子の15年ネチネチ
初回限定盤封入特典
数量限定の初回限定盤には「ビックリ!マンボウシール」2枚 &「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」イラストノベルが封入。どちらも竜宮ツカサが描き、タカハシヨウが書く、プレミアムな内容。
家の裏でマンボウが死んでるP
(いえのうらでまんぼうがしんでるぴー)
音楽を担当するタカハシヨウと、絵師の竜宮ツカサによる姉弟ユニット。タカハシヨウが2009年にニコニコ動画に発表した「家の裏でマンボウが死んでる」が注目を集め、その後も意味不明なタイトルから想像できない感動的な歌詞世界と、ボーカロイドの特性を生かしたハイテンションかつキャッチーなサウンドでニコニコ動画ユーザーを中心に人気を獲得する。2012年4月にSPEEDSTAR RECORDSよりアルバム「My Colorful Confuse」でメジャーデビュー。