撮影継続中

──多額の借金を作ってるのに、実家に妻子を置いて東京でアイドルを追いかけたりしてたら、そりゃあ奥さんは怒りますよね。

松尾　成田家みんなそうですよ。応援してるんですよ。ただ、それに対しての見返りがあまりにもなさすぎるから。

──感謝もないし。

松尾　これ、普通のことなんですよ。

──「ありがとう」の一言が重要だったりするってヤツですよね。

松尾　そうそうそう。親だろうが家族だろうがバンドのメンバーだろうが、しょせん他人なんだから感謝の気持ちでもなんでも口で言わないとわかんない。おまえ田舎者だから口で言わなくてもわかるだろうとか思ってるかもしれないけど。

──「なんか伝わらないんですよねー」って。

松尾　言ってないからだよ！

成田　俺としては200％伝えてるつもりが、全然伝わってないことが多いんですよ。

──……っていうことがちょっと撮影しただけでわかったんですね。

松尾　うん、非常によくわかりましたね。だけど、なんとなく憎めない人間でもある。これはこれでまた面倒くさいんだけど。

──「『世の中には成田大致のことを嫌いな人』と『成田大致にバカ負けした人』の2種類しかいない」 ってボクも彼のメジャーデビュー盤の帯に書いたんですけど、そういうことですよね。

松尾　うん。だから俺は憎めないし、かわいいなと思うんで、このままどうとっちらかるのか、それとも両方全部成立させて、例えばバンドも成功させた、イベントも成功させたって話になるのか楽しみにしようかな、と。だから結局、撮影を継続することにして。

お前、成功しなかったらマズいぞ？

──作品化できるレベルになりそうですか？

松尾　やってみないとわかんないですね。だから「魔物」の当日を撮った上で考えようかな、と。その結果次第なんで、家族との問題もどう結果が出るのかっていう。これでお前、成功しなかったらマズいぞ？

成田　そうですね。絶対成功させます。

松尾　こういうプレッシャーだけかけとこうかなって。

成田　豪さんに初めてナタリーでインタビューしてもらったのが3年前（参照：「AOMORI ROCK FESTIVAL '12～夏の魔物～」成田大致インタビュー）なんですけど、あのときが激動だったんですよね。上京したんで奥さんと距離ができるじゃないですか。そのときからフェスからもリミッターを外して。

──音楽だけじゃなくて、さらにカオスな感じになって。

成田　はい。より自分らしくオリジナルみたいなことに賭けてたんですけど、それが家族との溝も深めたというか。赤字も増えたし、奥さんにしてみたら自分がわからないものをやってるし。「プロレスとかアイドルとかわかんない！」って言われて、それから会話してないし。

──それからってことはつまり……？

成田　もう2年半ぐらい。たまに青森に帰っても自分の部屋の鍵をずっとかけられてて、寝る場所もないんで、死んだおばあちゃんのベッドで寝て。

成田家の現状

成田　メンバーがいなくなったりしてつらい時期、自分的にヤバいな、人生詰んでるっていう状況になって、親も「もう支援しません」って言って、お母さんも電話に出なくなって。お父さんしか出ない。弟も着信拒否して。

──なかなかそこまでされないですよ……。

成田　一時は、LINEは全員ブロックでしたね。

──うわーっ！

成田　自宅に電話するしかないんです。でも、誰も出ない。ただ「魔物」の精算とか、来年に向けての話とかいろいろあるじゃないですか。そのときに自己破産の話も上がってきて。で、DPGのほうはもう経営破綻寸前だったんですよ。

──DPGも！

成田　はい。俺、無頓着なんで金庫とかを人に預けてたら、物販の売上の使い込みとかがあとからわかって。奥さんともダメだったし、メンバーも誰もいない。去年、ナタリーさんでインタビューをやった次の月からはずっとしんどい時期が続いたんですけど。それで、どうにかできないかと思ってバイトを始めたんですけど、すぐにクビになって。