TBS系「水曜日のダウンタウン」内のオーディション企画「MONSTER IDOL」にて、クロちゃん(安田大サーカス)プロデュースのアイドルグループとして誕生した豆柴の大群が、結成から約1年でメジャー1stアルバム「まめジャー!」をリリースした。
音楽ナタリーではアルバムのリリースを記念した特集を展開。「水曜日のダウンタウン」の演出・藤井健太郎とWACK代表・渡辺淳之介へのインタビュー、そして「水ダウ」で秘密裏に進行していたクロちゃんダイエット企画にまつわる現場レポートを掲載する。現場レポートでは番組内でのクロちゃんの体重測定の様子、コラボ相手に決まったファーストサマーウイカのレコーディング現場と、豆柴とウイカが参加したミュージックビデオ撮影現場の模様をテキストと写真で紹介する。完成した楽曲、MVと合わせて楽しんでもらいたい。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 塚原孝顕(P1〜2)・田中和宏(P3)
クロちゃん×恋愛×アイドル×WACK
──豆柴の大群は「水曜日のダウンタウン」内のクロちゃんプロデュースアイドル企画「MONSTER IDOL」から誕生しました。改めてどういった経緯でこの企画をやることになったのかを聞かせてください。
藤井健太郎 以前から渡辺さんと何かアイドルを絡めた企画をやりたいなという話はちょろっとしていたんですが、決め手がなくて、形にならない状態が続いてました。一方で僕は番組内でクロちゃんを扱っていて、「MONSTER HOUSE」という「テラスハウス」のパロディ的な企画がわりと注目されたんですけど、なんかいい感じに終わらなかったんですよね。最後、としまえんに人がいっぱい集まって熱は生まれたんだけど、人が集まっただけで得することがなかった(笑)。
渡辺淳之介 ははは(笑)。
藤井 でも熱を生むことができる感覚はわかったので、だったらそれをいいほうに落とし込む方法はないかなって思ったんです。そこから「アイドルオーディションにしよう」ってことを思い付きまして。で、アイドルオーディションをやるなら、渡辺さんのところが一番融通が利くだろうってことで。
渡辺 間違いない(笑)。
藤井 クロちゃんを絡める時点で、正統派アイドルにはならないことが予想されたので、そういう部分でも相性がいいであろうWACKにお願いして、「MONSTER IDOL」をやることになったんです。
──企画をやるにあたって、渡辺さんから要望は出されたんですか?
渡辺 「テレビ番組発のアイドル」なので基本的にはお任せしてました。WACKなりに用意できるものもあったんですけど、クロちゃんの選考基準に口を出さないほうが絶対面白いものができると思ったので。
──藤井さんから見たWACKや渡辺さんの印象は?
藤井 基本的には世間の印象とそんな変わらないと思うんですけど、普通にやりとりしているぶんには真っ当ですよ(笑)。皆さんから見えている“変なやつ”の印象プラス、社会人としてはちゃんと真っ当っていう。
渡辺 ははは(笑)。
藤井 グループについては、僕はアイドル自体にそんなに詳しくないですけど、アイドルとは言いながらもアーティストの要素が大きい印象かな。チェキ会みたいなことをやってるってことをあとで知って、逆に「あ、やっぱりWACKもそういうのはあるんだ」と思ったくらいで。
──渡辺さんはどのタイミングで藤井さんと知り合ったんですか?
渡辺 最初に藤井さんにお会いしたのはたぶん、「キャノンボール」(1期BiSの解散を題材にした「劇場版 BiSキャノンボール2014」)の頃ですよね?
藤井 キャノンボール絡みの件で一緒にごはん食べたんだ。で、なんか合宿の相談をしましたよね?
渡辺 そうです。WACKで合宿を企画するにあたって、面白いことをしたかったので、「ちょっとアイデアいただけないですかね」みたいな。会う前は藤井さんが出されてた本を読んでいたくらいだったんですけど、僕も言うなら、藤井さんって凶悪な人なのかなと思ってました(笑)。演出における“悪意”の部分を見てたので。実際会うと、やっぱり印象は違いますね。こんなに物静かだとは思わなかったし。
藤井 ははははは(笑)。
渡辺 藤井さんの企画は本当に面白いですよね。「MONSTER HOUSE」は藤井さんの真骨頂だと思いました。僕が一番尊敬している部分は、「ギリギリまで攻めるけど行きすぎない」ってところで。僕の場合けっこう行きすぎるから(笑)。面白いことをやるにしても、大衆的にどこまでやっていいのかっていうギリギリのラインの判断を僕は見誤るんです(笑)。でも藤井さんの場合は基本的にそれを誤らないバランス感覚がすごいなと。
クロちゃんはどんな人?
──「MONSTER IDOL」企画で、視聴者の熱を生み出すための肝になった部分はどういったところにあるんでしょうか?
藤井 「MONSTER IDOL」の前にやった「MONSTER HOUSE」の話になっちゃうんですけど、クロちゃんは気持ち悪いっちゃ気持ち悪いんですけど、視聴者にとっての自己投影みたいなところもあるんですよ。家にいるときの様子を何もかも見られたら、「あんな感じかな」って部分が誰にだってありそうなもんで(笑)。だからクロちゃんって本当の異常行動をしているわけではないというか。「よくそんなことを人前でできるな」って感じではあるんですけど、あっちにもこっちにもいい顔してちょっと嘘付いちゃうとか、誰もが持っている部分が表に思いっきり出てる。だから、どこか自分を見ているような気がする感じ? ある意味でものすごく人間臭いところがあの人の面白いところだなと思っていて。そういう部分を強調して表現するっていうのは、少し意識してますね。
──気になってたんですが、テレビに映るクロちゃんってどこまで素なんですか?
藤井 基本は素だと思いますよ。会ってみるとわかると思うんですけど、感じのいい人でもあるんですよ。僕らもクロちゃんを扱いはじめてもう長いんで、どうすれば素の面白い部分が撮れるかはある程度わかるんです。逆に本人が狙ってやろうとすることは、あんまり面白くないんで。
渡辺 クロちゃんは、藤井さんがおっしゃるように会ってみても「テレビのまんま」でしたね(笑)。でも世間が思うような気持ち悪さはぶっちゃけないっていう。
藤井 そうそう。よく女の子とかが言うんですよね。「会ったらすごくいい人。清潔感もあって嫌な感じはしない」って。「でも付き合いたくはない」みたいな(笑)。
渡辺 ははは(笑)。
──そんなクロちゃんの豆柴の大群プロデューサー、アドバイザーとしての動きを渡辺さんはどう見ていますか?
渡辺 とても真面目だと思います。実際すごくよくメンバーのことを見ているのと、僕ですら追えないような細かい情報を全部拾ってるんで、マメな人なんでしょうね。マネージャー気質もあるというか。芸能人というか、表に出てる人の中でもあんなに細かく追える人はいないと思います。あとクロちゃんはメモ帳を持ち歩いてるんですけど、すごいですよ。思い付いたポエムを書き留めていて、もう何冊目だ?って勢いでページが埋まっていくんです。
藤井 でも当然怖いところもいっぱいあるんですよ。クロちゃんのSNSの書き込みにしても僕らがたまたま取り上げたから嘘が判明しましたけど、「こんなごはんを食べました!」とか誰も興味がないところで嘘付いてるんですから。正直「水曜日のダウンタウン」に出る前のクロちゃんに興味なんてなかったじゃないですか(笑)。で、番組に暴かれてもいまだに淡々と嘘を付き続けてるあたりはやっぱ変ですね。
渡辺 (笑)。アイドルの見方に関しては僕とは住む世界が違ったんだなって。WACKは邪道をやっているつもりではあるんですけど、クロちゃんが思い描いているものとそこまで変わらないと思っていた節があるんです。でも予想以上にクロちゃんはアイドルに対してすごく潔癖というか、正統派なイメージを持ってましたね。僕なんかはアイナ・ジ・エンド(BiSH)が鼻くそほじっててもいいというか、むしろそっちのほうがうれしいんです。でもクロちゃん的にそれはダメなんでしょうね。そういう意味では真逆。
藤井 もともとWACKのアイドルがあんまり趣味じゃなかったと言ってましたもんね。
渡辺 むしろ「WACKは汚いから嫌い」って(笑)。それは「MONSTER IDOL」の初日に言われましたね。クロちゃん的にはいきなり企画が始まったんですけど、クロちゃんに企画内容を説明するタイミングで初めてお会いして、開口一番に「なんで渡辺さんなの!」「一番嫌いなのに!」って。
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“一発屋”で終わらせない