音楽ナタリー Power Push - 牧野由依
「So Happy!!」な10年と次に続く道
牧野由依がデビュー10周年を迎えた昨年8月に東京・赤坂BLITZで行ったアニバーサリーライブがDVD化。牧野にとって初の映像作品となるライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」としてリリースされた。音楽ナタリーではDVDの発売を記念して牧野にインタビューを行い、ライブ当日の模様を振り返ってもらうとともに、これまでの10年間とこれからについて語ってもらった。
参照ライブレポート:牧野由依、感謝に満ちた10周年ライブで恩師と再会
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 雨宮透貴
この10年をシンプルに表すと「So Happy!!」
──まずデビュー10周年を記念したライブのタイトルが「So Happy!!」っていいですよね。10年活動した結論として「So Happy!!」と言えるなんてすごく素敵だなあと。
掘り下げていくとハッピーじゃないところももちろんありますけど、この10年をシンプルに表すとしたら何が一番いいのか考えたとき、真っ先に浮かんだのがこれだったんです。「So Happy」というタイトルは以前のコンサートでも使ったことがあったんですけど、ストレートでわかりやすく、かつみんなに喜んでもらえる言葉ってなんだろうなあと考えたら、私にとっては「Happy」だったんですね。私はそう感じているし、そのハッピーは皆さまにお返ししなきゃいけないなって。
──全体の構成はやはり10年間の集大成というところを意識しましたか?
ライブの2カ月後には新しいアルバム(2015年10月発売の4thアルバム「タビノオト」)を発表したんですけど、アルバム制作のときから10年間を振り返る機会がたくさんあったんです。2015年のド頭からずーっと10周年について考えていたような感じで(笑)。感慨深いものもあったし、一方で「10年って意外と短いんだな」と思うところもあって。
──アーティストとしての10年だけじゃなく、声優としても並行して10年を過ごしてきたから、密度はすごく濃いですよね。
それでもまだまだやりたいことがたくさんある、と思えるのはすごく幸せなことですね。「あのときこうしておけばよかった」という後悔ももちろんありますけど、それでも10年続けさせてもらえたことは本当にありがたいです。
──MCでもお話していましたが、今回のライブは過去最多の曲数で、まさに10年間の集大成を見せるベストアルバムのような選曲だったと思うのですが、このセットリストはどのように考えていったんですか?
いつも最初の打ち合わせでコンセプトや全体のボリューム感を決めて、そこからざっくりとセットリストを作っていくんです。いつもは大体1時間半ぐらいのボリュームで、アンコールを何曲かという感じなんですけど、「今回は10周年なんだから、もうちょっと多くてもいいんじゃない?」って言われたので、ここぞとばかりに詰め込みました。いつもこのぐらいやりたいと思ってるんですけど、今回はお許しが出たので(笑)。
イントロのストリングスはつかの間のセンチメンタル
──ここからはライブの流れを追っていくつか話を聞かせてください。まず1stアルバム「天球の音楽」(2006年12月発売)からの「夏休みの宿題」を1曲目に持ってきたのはなぜですか?
前に「夏休みの宿題」を冬に歌ったら、「なんで今歌うんだ」って言われたことがあって。でも私の解釈としては、あの曲はかつての夏休みを振り返っている歌だから、夏だとは限らないんですよ。
──確かに。
そんな自説のもと冬に歌ったら非難ごうごうで(笑)。じゃあ夏に歌ってやろうじゃないか、ということで1曲目に持ってきました。案外季節を狙っていくのって難しいんですよ。スケジュールなどの兼ね合いで夏にライブが打てるとも限らないし、新作のリリースにあわせたライブだと昔の曲もやりにくいし。今回はまず「夏休みの宿題」を1曲目にやる、というところから全体の流れを決めていきました。
──なるほど。疾走感あふれるギターポップテイストの「夏休みの宿題」から、同じく疾走感のある楽曲の中でも最近作られた「88秒フライト」につながって、以降も新旧を織り交ぜた構成になっています。生の弦カルテットを導入したアレンジもいいですよね。
弦から始まる「夏休みの宿題」のアレンジは私も大好きで。せーのでドンと始まる潔さもあると思うんですけど、10年を振り返るためのつかの間のセンチメンタルを感じるのが、あのストリングスのアレンジかなあって。あのアレンジにしてくれたバンマスの松ヶ下(宏之)さんには感謝しています。そこからは数曲畳みかけるように。
──クラシックコーナーを挟んで、後半の一発目には初披露の新曲として、その時点ではリリース発表もしていないニューアルバム「タビノオト」から「ワールドツアー」が歌われました。これは単に10年間を振り返るだけではなく、次の一歩も見せておきたいという意図でしょうか。
そうですそうです。クラシックコーナーのあと、後半に向けてグッと惹き付ける要素が欲しいなと思って、アルバムに入れるつもりの曲を、アルバムコーナーと言わずともここに並べてみたんです。そこで「新曲が出てきたということはもしかしたら……」と期待してもらえたらなって。
──「ワールドツアー」は初披露ながら、その場で観客にコール&レスポンスを要求するという場面もありました。
「サビで私が国の名前をいっぱい言うところがあります。気が済んだところで『Say』と言いますから『Hello』と返してください」っていう雑な説明で。酷なことしましたよねえ(笑)。
次のページ » 正解はたくさんあっていいんじゃないかな
- ライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」
- 2016年2月17日発売 / [DVD2枚組] / 5500円 / IMPERIAL RECORDS / TEBI-55376
DISC 1 収録内容
Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~
- 夏休みの宿題
- 88秒フライト
- もどかしい世界の上で
- 碧の香り
- 春待ち風
- たったひとつ
- ウンディーネ
<クラシック・コーナー>
- 剣の舞(バレエ「ガイーヌ」より)
- 序奏と獅子王の行進曲(「動物の謝肉祭」より)
- 水族館(「動物の謝肉祭」より)
- 化石(「動物の謝肉祭」より)
- 終曲(「動物の謝肉祭」より)
- きみの選ぶみち
- ワールドツアー
- 囁きは"Crescendo"
- お願いジュンブライト
- ふわふわ♪
- Cluster
<クラシック・コーナー>
- わたしのオモチャ箱(ストレートプレイ・ミュージカル「うたかふぇ」より)
- 星に願うなら
- 今日も1日大好きでした。
- オムナマグニ
- アムリタ
収録:2015年8月22日赤坂BLITZ
副音声には牧野由依自身によるオーディオコメンタリー収録
DISC 2 収録内容
メイキング・オブ・Live~So Happy!!~
- リハーサル映像やステージ裏の貴重な映像を収録(約23分)
- 最新アルバム「タビノオト」 / 2015年10月7日発売 / IMPERIAL RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3564円 / TECI-1466
- 通常盤 [CD] / 3024円 / TECI-1467
ライブ情報
- Yui Makino 30 Selection
- 2016年3月27日(日)東京都 恵比寿ザ・ガーデンホール
OPEN 16:00 / START 17:00 - 料金:全席指定 6480円(ドリンク代別)
- 一般発売:2016年2月20日(土)
- ライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」リリースイベント
- 2016年3月13日(日)大阪府 アニメイト大阪日本橋
- 2016年3月18日(金)東京都 アニメイト池袋本店
- 2016年3月20日(日)愛知県 第3太閤ビル
牧野由依(マキノユイ)
7歳で岩井俊二(映画監督)に才能を見出され、同監督の大ヒット作品「Love Letter」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」3作品に、8歳から17歳にかけてピアニストとして参加。2005年にシンガーデビューを果たし、同年には声優としての活動もスタートさせた。デビュー10周年を迎えた2005年8月にはアニバーサリーライブ「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」を実施。同年10月には通算4枚目となるオリジナルアルバム「タビノオト」を発表した。2016年2月には10周年ライブの模様を収めたライブDVD「Yui Makino 10th Anniversary Live~So Happy!!~」をリリース。3月には東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで単独公演「Yui Makino 30 Selection」を行う。