ナタリー PowerPush - まきちゃんぐ
とにかく好きな曲を詰め込んだ2ndアルバム「ワタシノウタ」
強く突き刺さる歌声と、独自の視点で描かれる叙情的なリリック。まきちゃんぐの楽曲には、ひとたび聴けば何度も頭の中をループしてしまう圧倒的なパワーが備わっている。
そんな彼女が今回、シングル「愛と星」とアルバム「ワタシノウタ」を連続リリース。深く極上のラブソングが収録された両作を聴いて、“究極の愛”に胸が震えるような体験をしてほしい。
取材・文/川倉由起子
「愛と星」はドラマ主題歌として書き下ろした曲
──まずはニューシングル「愛と星」について。これはドラマ「デカワンコ」の主題歌として、すでにテレビでもオンエア中ですよね。
そうですね。この曲はオファーをいただいてから書き下ろしたもので、そのために原作のコミックも全部読んだんですよ。以前から作者の森本梢子さんが大好きだったので、一気に買い揃えちゃいました。
──私も読んだことがあるんですが、すごく面白いギャグマンガですよね。
ね! あっという間に読んじゃいました。
──ところで、ドラマの制作サイドから楽曲について具体的なオーダーはあったんですか?
最初は「シリアスなドラマではないので、わりと明るめで」と言われましたね。でも最終的に「マンガと共通するような“スジ”が一本あれば、好きに書いていい」って言っていただいて。
──なるほど。で、まきちゃんぐはその“スジ”をどういうふうに捉えたんでしょう?
ええと、まず原作を読んで、「デカワンコ」はギャグマンガなのに人間の本質的なところも描いてるなって思って。主人公の花森一子(ワンコ)は、出来損ないだけど鼻が利く(事件解決の糸口を見つける)っていう刑事なんですが、彼女は悪気があって罪を犯したわけではない犯人に同情したり、大事なことを忘れかけていた他の刑事の心を溶かしたりしていく人なんです。だからまずは、ワンコに対して“出来損ないの面”と“人間としてしっかりしている面”という2面性を感じて……。
──はい、わかります。
で、そんな2面性を、次は愛とリンクさせてみたんです。愛って、目には見えないけど、すぐそばにあるものじゃないですか? それなのに、人はいつも手の届かない星ばかり追いかけてしまう。そんなことが歌えたらな、と思って。
意外なところからモチーフが
──なるほど。この曲には“愛”と“星”という2つのモチーフが効果的に登場しますよね。タイトルや歌詞の中にも出てくるし。この両者をくっつけたのはどうしてなんでしょう?
これはですね……仲のいい知り合いがいるんですけど、彼があるときメールで「愛とは何ですか?」って質問してきたんです。ネタで(笑)。そこで私は「愛は目に見えないけど、すぐそばにあるもの。つまり、星とは正反対にあるものです」って返したんです。でも、それには理由があって。彼の名前が星(せい)さんだったからなんですね(笑)。だから、ちょっと皮肉を込めて、という感じで返事したんですよ。
──なるほど! でも、すごくうまいこと言ってますよね。
そうなんですよ。自分でも送ったあとに「なんか、いいこと言ってない?」って感じて(笑)。で、このお話をいただいたときに「じゃあ、あの題材で書こう」と思ったんです。
──意外なところからモチーフが生まれましたね。
はい。星さんには、「ギャラくれよー」って言われました。題材に使ったお礼にって(笑)。
──あははは(笑)。今後は、ドラマをきっかけに新しいリスナーも増えそうですよね?
そうですね。「デカワンコ」のために書き下ろした曲なので、ドラマを観て「合ってるな」って思ってもらえれば私はうれしいですね。
CD収録曲
- 愛と星
- 愛と星(オリジナル・カラオケ)
CD収録曲
- 世界の終わり
- 愛しさが止まらない
- 愛と愛の間に
- 満海
- 愛と星
- 貴方のいない部屋に慣れる日が来るまで
- 灰色のピアノ
- 鼓動
- 名前
- 大都会のモンスター
- 愛の雫
- 夢だもの
まきちゃんぐ
岡山県出身の女性シンガーソングライター。2006年に音楽コンテスト「TEENS' MUSIC FESTIVAL」全国大会に出場し、頭角を現す。2008年にシングル「ハニー / ちぐさ」でデビュー。繊細なメロディと、赤裸々な心情を綴った歌詞が、同世代の女性を中心に人気を集める。2010年には「満海」「愛と愛の間に」「夢だもの / あなたのいない部屋に慣れる日が来るまで」とシングルを3作連続で配信リリース。2011年リリースの2ndアルバム「ワタシノウタ」のリード曲「愛と星」が、日本テレビ系ドラマ「デカワンコ」主題歌に起用され、話題となっている。