音楽ナタリー PowerPush - まじ娘×ホリエアツシ(ストレイテナー)×みきとP
歌い手、バンドマン、ボカロPが交わった理由
異質なよさがあった
──アルバムにはまじ娘さんが作詞作曲を担当した「end」という曲も入っています。これまでソングライティングをしたことはあったんですか?
まじ娘 バンドをやってる頃にセッションで曲を作ったことはあったんですけど、私はドラムだったのでメロディとかを作るわけじゃなくて。イチからギターを弾いて作曲するっていうのは、今回が初めてでした。ずっとやってみたいなって思ってたことだったので、楽しかったです。
みきとP この曲、よかったよ。アルバムの音源をもらったとき、ほかのボカロPの書き下ろし曲とかもあったからあえてトラックリストを見ないで通して聴いたんだけど、「あ、この曲いいな」って思った曲の1つがまじ娘の「end」だった。
ホリエ 僕もまじ娘ちゃんの曲が入るってことは聞いていたんですけど、こういういなたい感じの曲を書くとは思っていなかった。メロディとかコード感、雰囲気が1990年代のオルタナバンドみたいで。ちょっと異質な感じがよかったです。
まじ娘 ありがたいです。光栄です。前々から曲を作ろうとして挑戦はしていたんですけど、初めて曲として形になったのがこの「end」で。やっと人が聴けるものを作れたなって、今はしみじみ実感してますね。
1%の反応で揺らぐことも
──僕の勝手なイメージかもしれませんが、ストレイテナーってもともとオタクカルチャーに近い位置にいるバンドだと思っていたんです。例えばアルバム「TITLE」に収録されている「泳ぐ鳥」という曲はアニメ「カウボーイビバップ」の主人公の……。
ホリエ そうですね。アニメの主人公のスパイクをテーマにした曲です。
──ほかの曲では「BERSERKER」や「WYVERN」といった単語が歌詞に出てきたり。まじ娘さんがストレイテナーのファンだったように、今回の「アマデウス」の布陣はある意味、ニコニコ動画のクリエイターや歌い手さん、ユーザーと親和性の高い組み合わせだったんじゃないかなと思っているんです。
ホリエ そうかもしれないですね。僕はもともとアニメが好きだし、ゲームも「ドラゴンクエスト」をやってたりして。なのでちょっとファンタジックな世界観が僕の詞には入ってくるんですよ。今回の「アマデウス」も異空間と現実が組み合わさっているような詞になってますね。
みきとP 昔はバンドのMAD動画を観たりしていたとおっしゃってましたが、なぜニコ動を覗かなくなったんですか?
ホリエ ストレイテナーのライブをニコ生で配信することもあるんですけど、僕個人で言うとコメントを振り返るのが怖くて。MAD動画とかもそうですけど、やっぱり自分に関係する動画が存在するわけじゃないですか。そういうところで、ユーザーの反応をチェックするのがあんまり得意じゃないんですよ。コメントを見てそれで終わりじゃなくて、「こうすればよかったな」って後悔したり、そうやっていくうちに自分のスタンスが変わっちゃいそうなのがすごく嫌なので。
──みきとさんやまじ娘さんは、ニコ動やTwitterでの反応とどう付き合ってますか?
みきとP 僕はモチベーションになってる部分もありますね。Twitterだと直接クレームを付けてくる人は、さすがにそんなにいないので。
ホリエ 温かいんですか?
みきとP 基本的にTwitterのフォロワーはみんな温かいです。ただTwitterと動画だとけっこう温度感が違って、動画ではいろいろ書かれることもありますけどね。僕はあんまり動画のコメントをたくさんチェックするほうではないんですけど。見て見ぬフリはできないなということで見ることもあるんです。なのでモチベーションになったり、傷付いたり……。
まじ娘 私も、ニコ動を始めた頃はみんなのコメントをけっこう見てたんですよ。でも最近はアップしたらアップしたであんまり振り返らず、言いたいこと言えばいいじゃんって気持ちでやってます。私もホリエさんと一緒で、揺らぎたくないと思うから。Twitterはけっこう温かいんで、「まじ娘」って検索ワードに入れて、眺めてニヤニヤしてます(笑)。
ホリエ でも99%の人がいいことを言ってても、1%の人が嫌なこと書いてたらすっごく嫌にならない?
まじ娘 ときどきありますね。落ち込みたくないから動画のコメントは見ないのかも。
みきとP しかもその1%の発言が当たってるときがツラいんですよね。全然的外れなことを言ってるならなんとも思わないんですけど、ちょっとでも思い当たる節があることをズバっと書かれると「ああ……」ってなる。
まじ娘 なるなる(笑)。
みきとP でもエゴサーチってみんなが僕のことをどう思っているかを知ることができるんだよね。例えばTwitterのフォロワーさんたちが、僕に対して日々どんなことを思っているのか、名前を出してまでつぶやくことって一体なんだろうって。単にニヤニヤしてるだけじゃないって部分もあるんですよ。
下北のバンド好きを引き込みたい
──6月にはまじ娘さんのワンマンライブが決定しています。「ETA」などのイベントにはこれまで多く出演していますが、ワンマンは今回が初めてですよね?
まじ娘 そうなんです。自分でも何ができるか楽しみで、今いろいろ構想を練っているところなんです。
──ライブにはゲストとしてホリエさんとみきとさんの出演も決定しています。
ホリエ 僕は「アマデウス」しかできないから、セッションしろとか言われたらどうしようと思ってます(笑)。僕はまじ娘ちゃんのボーカリストとしての声も好きだし、一緒に何か歌えたらいいなって憧れがあるんです。それと会場のキネマ倶楽部ってすごく雰囲気がいいとこなんだよね? 僕、行ったことないんですよ。
みきとP そうそう。僕もやってみたかった場所だったんですけど、先を越されました。
まじ娘 みきとさんも出るじゃないですか!
みきとP あ、そうか。僕もできんじゃん。同時だ。
ホリエ 以前「ETA」に1度遊びに行ったことがあるんですけど、みんな絶対僕のことを知らないだろうなと思って、安心してフードコートとかをウロウロしていたんです。今回はどういう反応があるのかはちょっと予想がつかないですね。
まじ娘 ライブ会場で「ストレイテナーのホリエアツシです」って言えば、絶対みんな「えっ!?」ってなると思いますけど……。
みきとP 確かにバンド好きというか、いわゆるフェスに行く感じのお客さんは「ETA」とかにはあんまりいない印象がありますね。
ホリエ でもそのうち混ざるんじゃないですか?
みきとP 僕がもともとバンド上がりっていうこともあって、下北とかでライブを観ているバンド好きとかを、どんどん「ETA」とかこっちのライブに引っ張ってきたいなって思ってるんですよ。
ホリエ でも、僕らと同じようなステージでやってる若手のバンドは、ボカロの影響とかをめちゃくちゃ受けてると思うんですよ。それはもう音から感じまくってます。
みきとP 実は1年半くらい前から徐々に混ざってきている部分はあるんですよ。どうなるかはわからないけど、これからが楽しみですね。
まじ娘(マジコ)
動画共有サイトを中心に活躍する女性シンガー。2010年に “歌ってみた動画”を初投稿し、歌い手としての活動をスタートさせる。2011年にニコニコ動画で公開した「カゲロウデイズ」では59万再生を記録するなど、人気の投稿者として注目を集める。2013年12月に「EXIT TUNES ACADEMY WINTER TOUR 2013」に出演してからは、多数のライブイベントでその歌声を披露している。2015年4月に1stアルバム「Contrast」をリリース。同年6月には東京・東京キネマ倶楽部にて初のワンマンライブ「Contrast release party」を開催する。
みきとP(ミキトピー)
VOCALOIDを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP。「小夜子」のような心を揺さぶるシリアスなギターロックから、330万再生を超える人気曲「いーあるふぁんくらぶ」のようなアッパーなディスコポップまで、幅広いタイプの作品を発表している。またボカロPとしての活動のほか自身が歌った動画の投稿も行っている。2014年11月には自身2枚目となるオリジナルアルバム「GOOD SCHOOL GIRL」をリリースした。
ストレイテナー
1998年にホリエアツシ(Vo, G, Key)とナカヤマシンペイ(Dr)の2人で結成。2003年のメジャーデビューのタイミングで日向秀和(B)が加入。さらに2008年には元ART-SCHOOLの大山純(G)が加わり、4人編成に。2009年2月には4人編成となってから初めてのフルアルバム「Nexus」を発表し、同年5月にアルバムを携えてのツアーファイナルとして初の日本武道館公演を開催した。ホリエはソロプロジェクト・entとして、日向はNothing's Carved in Stone、EOR、killing Boyのバンドメンバーとしても活躍。またナカヤマと大山は2011年にanother sunnydayを結成している。2014年には約3年2カ月ぶりのニューアルバム「Behind The Scene」を発表。2015年4月にはテレビ東京系ドラマ「不便な便利屋」のオープニングテーマを収録したニューシングル「The Place Has No Name」をリリースする。
収録曲
- アマデウス
Music & Lyrics:ホリエアツシ Arrangement:みきとP - サリシノハラ
Music & Lyrics:みきとP - アイロニ
Music & Lyrics, Arrangement:すこっぷ - 心做し
Music & Lyrics, Arrangement:papiyon - さよならミッドナイト
Music & Lyrics, Arrangement:大柴広己(もじゃ) - グロウフライ
Music & Lyrics:buzzG - Hypocrite Syndrome
Music & Lyrics, Arrangement:スズム - 独りんぼエンヴィー
Music & Lyrics:koyori - ウミユリ海底譚
Music & Lyrics:n-buna - ペテン師が笑う頃に
Music & Lyrics:梨本うい - ノクターンとクラゲ
Music & Lyrics:164 - ハルニキミト
Music & Lyrics:ねこぼーろ / ササノマリイ - 回らないトゥシューズ
Music:透 Lyrics:椿 - ローレライ
Music & Lyrics:monaca:factory - 君に最後の口づけを
Music & Lyrics:papiyon - end
Music & Lyrics, Arrangement:まじ娘
<ボーナストラック>
- 羊水の記憶
Music:小島恵理 Lyrics:武内千佳 Arrangement:スズム
まじ娘「Contrast release party」
2015年6月13日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
<出演者>
まじ娘
ゲスト:ホリエアツシ(ストレイテナー) / みきとP
- ストレイテナー ニューシングル「The Place Has No Name」2015年4月22日発売 / UNIVERSAL MUSIC
- 「The Place Has No Name」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 2052円 / TYCT-39030 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 1080円 / TYCT-30041 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- The Place Has No Name
- 覚星
- The Place Has No Name -instrumental-
- 覚星 -instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
"Swimming City Flying Circus TOUR -2014.11.28 at SHIBUYA CLUB QUATTRO-"
- The Novemberist
- 泳ぐ鳥
- BLACK DYED
- Super Magical Illusion
- クラムボン・インザエアー
- Wonderfornia
- You and I
- 彩雲
- The World Record
- 瞬きをしない猫