音楽ナタリー PowerPush - まじ娘×ホリエアツシ(ストレイテナー)×みきとP
歌い手、バンドマン、ボカロPが交わった理由
もう「最高かよ」って
──「アマデウス」はどういう曲にしようと思って書いたんでしょうか?
ホリエ 最初に居酒屋で彼女と話をしたときに「あ、これはもう全力で自分らしい曲を作ってもいいな」って思ったから、あんまり提供ということを意識しすぎないように書きました。それとみきとPをはじめとするボカロPの曲をいくつか聴いて、僕の作家魂に火が点いたので「負けねえぞ」っていう気持ちも入っています。
みきとP 僕はデモを最初に聴いたとき、深夜にやってるオシャレな雰囲気のアニメのエンディングテーマみたいなイメージが浮かんできて。「これ聴いてるヤツはカッコいい」って曲にしようと思って、編曲に取り掛かったんですよ。あとは僕も「負けねえぞ」って気持ちで(笑)。
ホリエ イントロでギターのメロディを付けてもらったのがすごくうれしかったんです。僕、ああいうのが全然作れなくて。バンドだとギタリストに「好きに乗せてください」ってお願いしてるんですよ。
──ホリエさんが曲を作り、みきとさんが編曲した「アマデウス」がまじ娘さんのもとに届くわけですが、最初に聴いたときの印象はどうでしたか?
まじ娘 もう「最高かよ」って思いました。ホリエさんのことも、みきとさんのことも大好きなので、その2人が私のために作ってくれたものですからすごくうれしくて。自分の力を最大限に発揮しなきゃって気合いが入りました。
ホリエ 僕、この曲の歌入れに立ち会わせてもらったんですよ。彼女は歌ったテイクを1回聴いただけで直すところを自分で書き留めてて。僕なんか10回くらい聴かないとわからないですから、素直にすごいなって思いました。いつも自分で歌録りして発表するというニコ動での経験が生きてるんだと思います。
まじ娘 レコーディングのときはずっと一緒にいてくださって、心強かったです。曲の生みの親がいるっていう安心感がありました。
ホリエ 今回ご一緒させていただいてすごくいろんなツボを刺激されたというか。最近は自分の手が届いていなかったところに刺激を求めるようになってきて。10代とか20代の頃って好きなものをずっと追及するガムシャラさがあると思うんですけど、それだけだといつかはネタ切れになってしまうんですよね。今回みきとPの曲を聴かせてもらって、どこか懐かしさを感じたんですよ。コード進行とかが子供の頃から聴いていた音楽を連想させて。そういう発見が今すごく気持ちよくて。
みきとP うれしいですね。最終的にミックスされた「アマデウス」を聴いてどうでした?
ホリエ メッチャよかったです。興奮して、カーステでずっと聴いてました。
みきとP 友達募集Pと2人でミックスのチェックをやってたんですけど、ミックス14とかそれぐらいまで詰めて。“歌ってみた”界隈のアルバムって、ボーカルのボリュームが大きかったりするんですけど、この曲はあんまり上げすぎたくなかったんです。そういうせめぎ合いみたいなのがあったんですけど、今回はいい線突けたんじゃないかなって思っています。
最初の“歌ってみた”と比べてほしい
──先ほどまじ娘さんは高校のときにバンドを組んでいたとお話していましたが、ニコニコ動画で“歌ってみた”動画を投稿したきっかけはなんだったんですか?
まじ娘 もともと中学2年からバンドでドラムボーカルをやっていて、それが子供ながらに私のアイデンティティみたいになっていたんです。高校生になってもそのままバンドを続けていたんですけど、あるとき果たして私のやりたいことは本当にドラムボーカルなのだろうかって悩み始めて。そうしたら友達から「歌い手っていうのがあるんだよ」って教わったんです。人前で歌だけ歌う自信がなかったんですけど、動画にして歌を公開するだけならちょっとやってみようかなって思ったのが、最初ですね。
みきとP 最初に動画を投稿してからどれくらい経つ?
まじ娘 5年くらいだと思います。
みきとP あ、じゃあ僕と同じ頃に始めたんだね。
ホリエ ちなみに最初に公開した曲って今でも聴けるんですか?
まじ娘 ありますけど、ヤバイですよ(笑)。あ、実は今回のアルバムに私が初めてニコニコ動画で公開した曲が入ってるんです。「ペテン師が笑う頃に」っていう曲なんですけど、アルバムに新緑した音源が入っているので、動画のものと聴き比べてもらいたいなって気持ちもあります。歌い直して懐かしい気持ちになったし、こういう表現ができるようになったんだっていうのにも気付かされましたね。
奇跡の8小節
──みきとさんは「ETA」のステージでまじ娘さんと共演することも多いわけですが、彼女ならではの魅力ってどういうものだと感じていますか?
みきとP 彼女は演奏したあとに、絶対に悲しい顔をしないんですよ。いつも楽しそうに歌う。終わってから「楽器の音が大きかった」だとか、そういうことをあんまり現場で言わないで、ポジティブにライブをこなすイメージがありますね。そういうところはすごいと思うし、自分もそうありたいなって思いますね。
まじ娘 まあいろいろ思うところはあったりするんですけどね(笑)。
みきとP でも「どうだった?」って聞くと、必ず「楽しめました!」って返ってくるじゃん。僕なんて「ちょっとモニターが」とか言っちゃいそうになるんですけど、そういうのは後で個別に考えればいいことで。全体の印象として「音楽をやれてよかった」っていう気持ちが常にあるのがいいなっていうのをいつも感じますね。
──まじ娘さんが初めてイベントに登場したときに、一緒にステージに立ったのがみきとさんだったんですよね。
みきとP そうなんだけど。本当にごめんね、あのときは。
まじ娘 あ! そういえばなんかトラブルがあったんですよね。でも忘れちゃいました。
みきとP 僕のギターの音が出なかったんですよ。
まじ娘 そうそう!
みきとP 曲の最初が歌とギターだけのパートで、そのときに僕の音が出てなくて。しかもそれ、機材のミスとかじゃなくてギターのボリュームを下げてただけだったんです。僕にとっては本当にトラウマで、今後この子とやるときは絶対こういうことがないようにしようって思いました。
まじ娘 すごく悔やんでましたよね。
みきとP それは悔やむよ。だって、あなたが初めて出るライブだったんだから。でもすごいのは、彼女はクリックを聴いてなくて歌ってるんですけど、ドラムインのタイミングとかがバッチリだったんですよ。僕はそのとき音は出なかったんだけど耳でクリックを聴いてたからわかったんですけど。
ホリエ すごいですね。普通振り返ってドラムを見ちゃいますよね。
まじ娘 でも私は別にギターが出なかったからどうとかはあんまり思わなかったんです。ギターが出ないこともライブだなって。ファンの人も、いつも同じライブが観たいんじゃなくて、ある意味ハプニングを待ってるようなところがあると思うんですよ。
みきとP そうなんだけど、絶対外しちゃいけないところっていうのがあるんだよ。でも、まじ娘とはこうやって2人でいろんな場に行くことも多いので、今振り返ればあの8小節は奇跡の8小節だったんだと思っています。
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収録曲
- アマデウス
Music & Lyrics:ホリエアツシ Arrangement:みきとP - サリシノハラ
Music & Lyrics:みきとP - アイロニ
Music & Lyrics, Arrangement:すこっぷ - 心做し
Music & Lyrics, Arrangement:papiyon - さよならミッドナイト
Music & Lyrics, Arrangement:大柴広己(もじゃ) - グロウフライ
Music & Lyrics:buzzG - Hypocrite Syndrome
Music & Lyrics, Arrangement:スズム - 独りんぼエンヴィー
Music & Lyrics:koyori - ウミユリ海底譚
Music & Lyrics:n-buna - ペテン師が笑う頃に
Music & Lyrics:梨本うい - ノクターンとクラゲ
Music & Lyrics:164 - ハルニキミト
Music & Lyrics:ねこぼーろ / ササノマリイ - 回らないトゥシューズ
Music:透 Lyrics:椿 - ローレライ
Music & Lyrics:monaca:factory - 君に最後の口づけを
Music & Lyrics:papiyon - end
Music & Lyrics, Arrangement:まじ娘
<ボーナストラック>
- 羊水の記憶
Music:小島恵理 Lyrics:武内千佳 Arrangement:スズム
まじ娘「Contrast release party」
2015年6月13日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
<出演者>
まじ娘
ゲスト:ホリエアツシ(ストレイテナー) / みきとP
- ストレイテナー ニューシングル「The Place Has No Name」2015年4月22日発売 / UNIVERSAL MUSIC
- 「The Place Has No Name」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 2052円 / TYCT-39030 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 1080円 / TYCT-30041 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- The Place Has No Name
- 覚星
- The Place Has No Name -instrumental-
- 覚星 -instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
"Swimming City Flying Circus TOUR -2014.11.28 at SHIBUYA CLUB QUATTRO-"
- The Novemberist
- 泳ぐ鳥
- BLACK DYED
- Super Magical Illusion
- クラムボン・インザエアー
- Wonderfornia
- You and I
- 彩雲
- The World Record
- 瞬きをしない猫