MAISONdesのニューアルバム「Noisy Love Songs - MAISONdes × URUSEIYATSURA Complete Collection -」がリリースされた。
MAISONdesは「架空の六畳半アパート」をコンセプトにした音楽プロジェクト。“管理人”と呼ばれる人物が歌い手と作り手をMAISONdesに“入居”させて、さまざまなコラボ曲を生み出している。「Noisy Love Songs」には、MAISONdesが手がけたテレビアニメ「うる星やつら」の主題歌が全曲収録された。
音楽ナタリーでは、本作で作り手を務めたSAKURAmoti、ツミキ、すりぃ、ニト。にインタビューを実施。楽曲制作の手法や「うる星やつら」に対する思いを聞くほか、4人のクロストークを掲載する。
取材・文 / 安部孝晴
プロフィール
2005年生まれの19歳。2019年にボカロPとして動画投稿を開始。近年はアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ、CoCoLo♡RiPPLeらへの楽曲提供も行っている。
担当楽曲
「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」
「雷櫻 feat. 9Lana, SAKURAmoti」
ファンメイドな気持ちで作りました
──曲作りを始めたきっかけは?
中学生ぐらいのときにボカロを聴くようになって、以前からiPadやゲーム機で曲を作っていたので、すぐボカロPになりました。
──最初に触れた楽器は?
小さい頃からピアノを弾いていました。ギターはVOCAROCKを作るために買ったので、ボカロP歴とギター歴はちょうど同じくらいです。
──歌詞とメロディ、どちらを先に制作しますか?
メロディが先ですね。ピアノやギターで弾き語りをしながら作曲していると、なんとなく歌詞も一緒に思い浮かぶことがあって。それをもとにほかの部分も作っていくという流れが多いです。
──MAISONdesの場合はボーカロイドではなく生身のアーティストが歌唱しますが、それにあたって何か意識することはありますか?
歌う人に精一杯合わせようと思って、曲の構成を考えます。MAISONdesのときは誰が歌うかわからなかったので、なんとなくこういう人が歌ったら映えるだろうなあという想像をしながら作りました。結果的にすごくイメージに合うお二人に歌っていただけてよかったです。「アイウエ」のときは2番以降を美波さんと共作したこともあり、想像を超えた作品になりました。
──担当楽曲の歌い手とはどんな交流がありましたか?
美波さんとはレコーディングのときにお会いして、そのあとにもちょこちょこ会う機会がありました。9Lanaさんとは実は一度もお会いしたことがないんです。
──「うる星やつら」の世界観は楽曲にどう反映させましたか?
「アイウエ」のときは従来の「うる星やつら」の世界観を損なわないようにしながら、今の若い人にも伝わる曲にしようと思って書きました。「雷櫻」のときは「うる星やつら」にもっと寄り添おうと思い、原作マンガを何回も読み直してファンメイドな気持ちで作りましたね。
──MAISONdesというプロジェクトについてどう思いますか?
普段1人で作るときとは全然違う作品ができあがるし、コラボ相手がいるからこそ引き出されるものもあって、今後も楽しい曲があふれる場所であってくれたらと思います。
プロフィール
1997年生まれの26歳。NOMELON NOLEMONでドラム、ギター、キーボードを担当。2021年2月に自身初のフルアルバム「SAKKAC CRAFT」をリリースし、2024年3月には星街すいせいの楽曲「ビビデバ」の作詞、作曲、編曲を手がけた。
担当楽曲
「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜,ツミキ」
シンセサイザーのドキドキ感
──曲作りを始めたきっかけは?
ボーカロイドですね。小学生のときボカロ文化に初めて触れて、中学生の頃にはバンド音楽を聴くようになって一旦離れたんですけど、2017年に初音ミクが10周年を迎えたという話をSNSで見かけて。米津玄師さんとかwowakaさんとか、僕が聴いていた世代の方がボカロをやっていたので、自分も作ってみようかなと思いました。
──最初に触れた楽器は?
エレクトーンです。足でベース、左手でコード、右手でメロディを弾くので、それをきっかけにほかの楽器にも興味が湧いて。ギターを触ってみたり、ドラムを触ってみたり、といろいろ広がっていきました。エレクトーンでアンサンブルを理解した経験は、DTMにも生きていますね。
──歌詞とメロディ、どちらを先に制作しますか?
ほとんどメロディからですが、トラックを先に作る場合もあります。歌詞をあとにする利点は、リズムを担保しながら書けるところで。僕はドラムを叩くので、リズムに重きを置くことが多いです。「ここにはちっちゃい“つ”を入れたい」「ここの子音はサ行にしたい」「ここにあと4文字、いい単語があれば……」みたいな試行錯誤をしています。紙の辞書を適当に開いてみて、そこからインスピレーションをもらうこともありますね。
──MAISONdesの場合はボーカロイドではなく生身のアーティストが歌唱しますが、それにあたって何か意識することはありますか?
ボーカロイドの曲では言葉を詰めてみたり、キーレンジを度外視してみたりするんですけど、“歌う人を通じて伝えること”が制作のベーシックにあるので、人が歌唱する場合はその方のイメージになぞらえて書くようにしています。「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」の場合は、誰が歌うのかわからない状態で作るという初めての経験だったので、わりと自分に寄せたものというか、自分が気持ちよく歌えるかどうかを1つの判断材料にしました。そしたら花譜さんが歌うことになって、すごくぴったりはまっていたので面白い経験になりました。
──担当楽曲の歌い手とはどんな交流がありましたか?
レコーディングの立ち会いなどはなく、オンライン上でのやりとりのみでしたね。
──「うる星やつら」の世界観は楽曲にどう反映させましたか?
キャッチーなものに仕上げたいというのがまず前提としてあって、そこから時代背景にフォーカスしました。「うる星やつら」のアニメはもともと1980年代に放送されていたじゃないですか。僕はその頃のカルチャーが好きなので、シンセサイザーの音が作るドキドキ感みたいな、昔ながらの雰囲気を今風に落とし込んだらどうなるだろう?という実験的な観点で作りました。最近よくあるハイの強いシンセではなく、温かみのあるシンセの音を使ったりして。それもあってノスタルジックな印象になっているんじゃないかな。
──MAISONdesというプロジェクトについてどう思いますか?
化学反応が起きる場所として、すごくいい機会をいただいたなと思います。基本的に歌い手と作り手が1人ずつ“入居”するから、50:50で味が出る印象で。例えば全然違う界隈の人とのコライトとかもやってみたいなと思っているので、今後も関わっていきたいプロジェクトです。
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インタビュー後半戦&クロストーク