「売れたい」と思うタイミング
──矢川さんにも話したんですけど、これまでのインタビューを振り返ると、ブクガはいつも「このタイミングで売れたい」という話をしているなと思ったんです。で、話をしているうちにそれはストイックだからだと感じたんですよね。
うんうん。でも難しいですよね。新曲ができます、CDを作ります、ライブをします……って感じに活動してきてるじゃないですか。それでインタビューで「これで売れたい」と言い続けてきたんですけど、“これ”は「CDリリースのタイミングだったのか」って気付きました。わかります?
──どういうことですか?
今までは「このライブで売れたい」だと思ってた。ライブが主体になってる感じ。でも売れたいって感じるのはいつもCDリリースのタイミングだったんですよね。いろんな人に知ってもらえるのもCDだし。
──もちろんいろんなパターンがあるけれど、新規の人が最初に触れる機会はやっぱりWeb検索とかYouTubeが多いと思うんですよね。そう考えると新曲のリリースが入り口になるんじゃないかなと。
確かに。自分たちが一番力を込める活動はライブだから、勝手にそう思っちゃってたのかな。がんばった分だけお返しがくるわけでもないのに。曲を作るのはサクライさんというのもあるし、私たちがすることはレコーディングとその練習くらいだから、CDが完成した瞬間って「ああ、がんばったね」みたいな感じで……なんて言うんだろう、努力の詰め方が難しいというか。
──ライブに比べると、ということですよね。
そういうことです。もちろんレコーディングもめちゃがんばってるんですけどね。気付いたらそういうスタンスになってました。
──それも納得というか、ベスト盤のBlu-rayにも収録される「Solitude HOTEL ∞F」は本当にすごかったです。
ありがとうございます。マジで今回、めっちゃどうしようか考えたんですよ。これまでワンマンの演出は私とサクライさんで一緒にアイデアを出してきたけど、関わってくれる人が増えていって。途中からは映像制作とか舞台装置を手がけてくださるhuezさん、ダンサーのHIROMI先生、私の3組で演出を考えて、何度も打ち合わせをしたんです。例えばリリースイベントの帰りの新幹線でも、デッキで「あの曲のこの部分どうしよう」みたいにずっと電話してて。
──すごいスケジュールで動いていた。
2019年はライブの演出に付きっきりでした。「∞F」の準備は去年の9月くらいに始まったから、自分たちで納得のいかないものを出すわけにはいかなかった。みんなでがんばったと思います。
──演出も驚きましたが、身体表現も明らかに変化しましたよね。
うれしい。ダンスは今まで振り付けだけミキティーにお願いして、あとは自分たちで練習してたんですけど、細かい部分まで着手できていなかったんですよね。ここ最近は基礎的なこともやってきたから、それが振り付けに応用されるようになっていきました。ベスト盤に入る新曲「Fiction」の振り付けはミキティーとHIROMI先生の共作でやってもらおうと思っていて。面白そうじゃないですか?
──それは面白そう。
私のわがままなんですけど、2人にお願いしたら、「もうやるしかない」と思ってくれるはずなんですよ(笑)。これまでの活動を総括するベストアルバムだし、ちょうどいいかなって。
なんか、自分自身を俯瞰して見てるんですよ
──コショージさんは演者としてだけではなく、ステージ制作にも同じくらい力を注いでいるんですよね。
そうなのかも。
──いつからそうなっていったんですか? 昔はそこまでではなかったですよね。
いや、けっこう早かったかな? セトリも最初はサクライさんが考えてたんですけど、途中から私が決めるようになって、「普段からライブのセトリを考えてるから、ワンマンのセトリ組みも担当する」って流れになったはず。それからセトリが決まらないと演出も決まらなくて、「この曲順はこういう意味が込められているから、こんな演出がしたくて」みたいに言い出して、ステージ制作に関わり始めた感じですかね。でもVJとかはしばらくお任せしてたから、ちょっとずつ深く関わるようになっていきました。
──それこそ、「Fiction」の振り付けを2人に付けてもらうアイデアも出してますし。
「Fiction」はもともとサクライさんがミキティーに振り付けをお願いしようとしてて、私も「いいですね」と言ってたんです。でも曲を聴いたら、間奏から急にぶわっと開ける感じになるじゃないですか。そこのイメージが……ミキティーの考えてくれる振り付けもすごくいいんですけど、もっと体を使うダイナミックなダンスにしたら、すごくカッコいいんじゃないかって想像しちゃって。それにこれまで以上に一生懸命ダンスの練習をしているから、共作にした方が面白そうって思い付いたんですよね。それで2人を巻き込んで(笑)。
──ベスト盤にはこれまでコショージさんが作ってきたポエトリーリーディングの詩も、詩集としてまとまりますね。思い起こすとブクガの活動が始まる前のソロライブでも詩の朗読をしていて、長く続けてきましたよね。
本当ですよね。「ネタ尽きたわ」みたいなことも全然あったんですよ。意外といけました(笑)。今まであえてテキスト化してなくて、「詩集出したいです」みたいなこともなくて。曲に合わせて朗読する形で完成していて、文字とは結び付いてなかったんですよ。
──どちらかというと音で聴く作品だった。
そうそう、メンバー4人の声で表現するものだから。舞台とか映画も、本にしたらまったく違うじゃないですか。それと同じで、文字でどう表現するんだろうって。意外と大変でした。
──だから詩集のレイアウトも凝っていて。
はい。わがまま言って寄り添ってもらいました。
──話を聞けば聞くほど、コショージさんは作る側の人なんだなと思います。
でも、なんか自分自身を俯瞰して見てるんですよね。パフォーマーとしてのめり込まないというか。私、ちょっと冷めてません? 本当は行き切りたいんだけど行き切れない。それがこういうスタイルになったのかな。
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コショージ、縄跳びは3回で飽きる